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悪魔勇者 学園都市編  作者: 響 翔哉
入学狂騒編
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入学式 その2

 春――それは出会いと別れの季節。

 今年もまた出会いの季節がやってきた。


 今日は入学式だ。

 ある者はより強い者を求め、またある者は富と名声を求め、今日も学園都市の門を叩く。

 そんな彼もその一人だ。

 より強くなるため、より強い者と相見えるために彼はここ、学園都市へとやってきた。




 あれから1年が経った。

 その間に色々なことがあった。

 俺の体は鬼化が進行し過ぎてボロボロになっていた。

 そのせいもあってか、俺は普通の生活に戻るのに3ヶ月もかかってしまった。

 そして俺は鬼の力を制御するため、フィリア姉さんやビジョンヌ姉さんの地獄の特訓を受けた。

 あれは死ぬかと思った。

 もう一生あんなのやりたくない。


 それから俺は学園都市に行くために、勉強と鍛錬に勤しんだ。

 そして、俺は今、学園都市にいる。

 俺は必ず強くなる。

 もう誰も失わないように。誰も俺のような目に合わせないように。

 そして、色欲に復讐するために。




 ラバルは巨大な建物とその前に立ちはだかる荘厳美麗な校門の前に立っている。

 その脇を同じく新入生と思しき生徒が次々と門を潜り入っていく。

 これからの学園生活に胸を踊らせる者。憧れの学園に入学出来ることに感激している者。初日の緊張感にガチガチになっている者。

 何百人という新入生が今日、このアーレフ学園に入学する。

 希望と挫折に満ちたこの学園へと足を踏み入れるのだ。


 ここが俺の通う学校か。

 豪華絢爛な中世風な校門に、何十メートル――いや、百メートルはあるかもしれない。それくらい長い桜並木が校舎まで続いていた。

 さすがこの世界の日本こと信和国と近いだけあるな。


 俺が通う学校は、学園都市ネアポリスにある、アーレフ学園だ。

 この学校は、旧アードミヤ帝国の勢力が運営している学校だ。

 そのためか、旧アードミヤ帝国出身者が多い。

 校舎のデザインや先述のような桜並木など、アードミヤ帝国に多く影響を受けている。

 さらに、この学園は学園都市の中で最も強い学園として有名だ。

 ここ数年の戦績は他の学園を全く引き寄せない、抜きん出た存在だ。

 昨年、一昨年と生徒同士の大会全てのタイトルを獲得した超強豪校だ。

 そして、現生徒会長は一昨年の四冠王でもある。


「《お主どうしたのじゃ、早く入らんか》」

「そう急かすなって」


 俺は今にも出てきそうな勢いで俺に話しかけるフェイを抑え込みながら校門をくぐった。


「ほーう!かなり近未来なデザインじゃのう!」

「いや、結局出てくんのかよ」


 だが、俺が校門をくぐるとフェイは勝手に出てきた。


「仕方ないじゃろ。剣の姿では体が痛とおーて仕方ないからのぉ」

「さいですか」


 俺は身勝手極まりない相棒に呆れながらも、歩き出した。

 すると――


「ラバル!?」


 俺は、背後から声をかけられた。

 振り返ると、そこには、俺のよく知った顔が並んでいた。


「アリア。久しぶりだな。それにみんなも」


 それは、俺の幼馴染たちだった。

 彼らとは3年ぶりに会う。

 フィリア姉さんから聞いた話では、師匠の葬式に全員いたらしいが、俺は絶賛病室で意識不明だったため会うことはなかった。

 だが、それにしてもみんな変わんねぇな。


「やっぱり!」


 ラバルに真っ先に声をかけたのは金髪蒼眼の気の強そうな少女だった。

 彼女は目の前にいるラバルの存在を認めると、今にも泣きそうになった。


「あの噂は本当だったんだ」

「どうしたんだよ?お姫様が泣いてていいのかよ」


 彼女はアリア・ドラグローゼ。名門ドラグローゼ家の長女だが、貴族の娘とは思えないほどお転婆でめちゃくちゃなお姫様だ。

 俺たちが仲良くなる原因を作った張本人でもある。


「ばッ!泣いてないわよ!」


 泣きそうになっているのをラバルに茶化された彼女は恥ずかしそうに否定した。


「久しぶりじゃんラバル!元気してた?」


 そんな彼女のことなど無視するようにまた新たな人物が現れた。


「レン!やめろって!」


 ラバルにレンと呼ばれた、濃いピンク色の髪をした、いかにもチャラそうな少年が、生き別れた兄弟と再開したがごとく熱烈なハグをした。


「いいじゃねぇかマイブラザー!」

「仕方ねぇな!」


 それに応えるようにラバルもハグし返す。

 だが、ラバルはどこか恥ずかしそうにはにかんでいたが。


「会えて嬉しいぜ!マイブラザー!」


 少々オーバーリアクションな気がしないでもないが、これがコイツのいつもの感じだ。

 ショッキングピンクの髪に右耳にピアスを開けたチャラ男だが、これでもこの学園都市を牛耳るユン家の次男坊だ。

 頭は良いし、運動神経も戦闘スキルも一流だ。

 しかし、その能天気な性格とバカ丸出しの話し方のせいで全部台無しにしている残念イケメンだ。

 彼の名誉のためにもう一度言っておくが、彼は貴族で運動神経も頭も良い。

 ただ、少し天然が入っているだけだ。

 それだけだ。そう信じたいが……。


「やめてやれよ。ラバルが苦しそうだ」


 ラバルとレンの熱い抱擁をゲテモノでも見るような目で見ていたメガネをかけた真面目そうな少年がそう言い寄る。


「ダニエル!」

「そうですダニエルですよ。本当にお久しぶりですラバル」


 このメガネをかけた低身長(本人は気にしているので絶対にダニエルの前では言わないこと)で灰色の目をした彼は、ダニエル・バードナー。

 俺たちの中で一番の秀才で、いっつも悪さをする時はダニエルを頼っていた。

 だが、大人に怒られるってなった時にダニはいつもいなかったが。


「それにしても、あの噂は本当だったようですね」


 感慨深そうにダニエルはラバルを眺めながら頷く。


「ンなことよりテメェ。生きてたんだな」

「悪ぃかよ」


 コイツは、エース・ホーナー。

 爽やかなネモフィラカラーの髪の毛とサファイアのような蒼い瞳に美形な顔立ちという美男子だが、口が悪い。すこぶる口が悪い。

 だが、秀才で戦いの才能もある。

 俺の知る一番の天才だ。


「今更、何ノコノコ俺たちの前に帰ってきてんだよテメェはよ!」

「別にテメェの前に帰ってきた気はねぇよ」


 ラバルとエースの間にバチバチと電撃が走った。


「まぁまぁ二人とも仲良くしようぜ!せっかくブラザーと再会出来たんだしさ!」


 レンがこれではまずいと思ったのか、二人の間に割り込んだ。

「そうですよ。せっかくの再会を楽しみましょうよ」


 ダニエルもレンに加勢する。


「へっ!勝手にしろ!」


 エースはムカついたのか、校門をくぐっていった。


「あー。これはまずいヤツっすかね」

「はぁー。全くエースは」


 去りゆくエースの背中を眺めながら二人は溜息をつく。


「すまないなマイブラザー」

「別にいいよ。アイツとはいずれケリをつけなきゃだし」


 あの日の続きをしなくちゃな。

 そうじゃなきゃ、おめェは俺を許してくれねぇだろ?


「私からも後でラバルに謝るよう言っておくよ」

「あ、おう」


 なんかアリア、雰囲気変わった?

 あのお転婆なお嬢様は、成長して美しい淑女になられたのね。

 感慨深いものがあるわね。


「ちょっとアンタ、今変なこと考えたでしょ!」


 おっとまずい。バレてしまった。


「そんなことないですわよ、お嬢様」


「ら、ラバルぅうう!!!!」


 アリアはラバルにおちょくられているのを感じて、顔を赤く染めながら怒る。


「冗談だって!」


 ラバルは怒るアリアをなだめる。


「ホントにアンタって奴はすぐに調子に乗るんだから」

「いいじゃん別に」


 そうだ。この感じだ。

 このなんとも言えない夫婦漫才のような掛け合い。

 これがアリアとの会話だよ!


「良くないわよ!アンタが調子に乗って良かったことなんて一度もないんだからね!」

「そうだったか?俺より、レンの方が酷いんじゃなかったか?」

「おいおいやめてくれよマイブラザー!そんなつまらない冗談は、よしこちゃんだぜ!」

「こういうところがダメなんですよ。ねぇ、ユリアク」


 レンの軽薄そうな態度を戒めようと、ダニエルは、背後に佇む緑色のバンダナを巻いた鋼の肉体を持つ男子生徒に話を振る。


「レンの軽薄さなど今に始まったことじゃないだろ。まぁその結果、女の敵だの残念王子だのと言われているんだろう」

「悪かったな残念で」


 ユリアクの容赦のない寸評にレンは少し寂しそうだった。


「あっ!そんなことよりアンタ達、早くしないと入学式始まっちゃうわよ!」


 大きな時計が映し出されているディスプレイを見たアリアがそう叫ぶ。


「マジじゃん!早く行こうぜ!」

「そうですね。せっかく入学出来たのに入学式に出ないんじゃ意味ないですからね」


 そう言うと4人は走って行ってしまった


「それじゃあ俺も行きますか」


 どうせ俺は首席で入学者代表挨拶やらなんやらで学園長に呼ばれているんだ、多少遅れても何も言われないだろう。

 それに、俺がここに始めて来るのを知っていて迎えを寄越さない時点でどうせ遅れて何も言われないだろ。

 まぁ学園長室になど辿り着ける気がしないが。


「にしても、この学校デカすぎだろ」


 こんなデカい高校とか日本どころか地球にだって存在しねぇよ。

 東京ドーム一体幾つ分だよこれ。


「おいコラ!テメェふざけてんのか!」


 突然俺の耳に、このだだっ広い優雅な学校に似つかわしくない声が聞こえてきた。

 俺はその声のした方向を向いたが、どこにも人影は見当たらない。


「鬼の聴覚ね、めんど」


 俺はその声のした場所を鬼の聴覚を使って割り出した。

 なるほど、この建物の裏か。

 俺は平屋の体育倉庫のような建物の裏へと回った。

 するとそこには、4人の生徒に囲まれた、シルクのような美しい銀髪をした少女がいた。


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