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悪魔勇者 学園都市編  作者: 響 翔哉
入学狂騒編
35/44

Let's shopping!! (2)

 はぁー。足りるかなこれ……。


 ラバルは画面に映し出された預金残高を見ながら、あの値札を思い出し、深い溜息をついた。


 貯金があるって言っても億万長者でもないし、貴族でもないしな。

 あんな法外な値段の服、何着も買えないよ……。



「先輩、なーにしてるんですか?」

「ふぉわッ!?」


 思い詰めた顔をして立ち尽くすラバルの背後から突如、少女が飛び付いた。


「ラバル先輩、どうしたんですかそんなに落ち込んで?」

「エレナ!?別に俺は落ち込んでなんかないよ……」

「そうですかー」


 抱きついてきたのはシュルエで出会ったスパイの少女エレナだった。


「今日も俺を“付けてきた”のか?」

「残念ながら違うんですよ。私は、今日アレのせいで駆り出されたんですよ」


 エレナは柱に貼られているポスターを指さす。

 そこには、大人気歌姫ルビー・アドラステラの単独ライブ開催と書いてあった。


 なるほど。これで今日、こんなに人が多いわけだ。

 それにしてもスパイなのにこんなことに駆り出されるなんて、そんなにこの街は人材不足なのか?


「それでエレナは任務を遂行中ということかい?」

「そうなんです。それよりも先輩はどうしてここへ?」

「買い物だよ。ついでに久しぶりに会った幼馴染たちと遊びに来たんだよ」

「ふーん。そうなんですねー。で、どうして預金残高を見てたんです?」


 獲物を睨みつけるような鋭い目でエレナはラバルに迫る。


 これは確実に怒っている。もしくは疑っているな。

 話を逸らそうとしても強引に元に戻してきたし、それに俺が何かを隠していると見破った。

 さすがはスパイ。観察力と洞察力に優れているな。

 俺を逃がす気は無いということか。


「アリアを知っているか?」


 ラバルはエレナの前で嘘をつくのは無理だと判断し、エレナの怒りを収めるように話し始めた。


「もちろんです。ドラグローゼ家の御令嬢様ですよね」

「ああ。そのアリアが貴族が行くような店に入っちまってな。服を買うって約束しちまったから念のために確認してただけだよ」

「そうだったんですね!」


 エレナの顔に笑顔が戻った。

 よかった。これで一難去った。


「それよりさ、他のメンバーも任務中なのか?」

「はい。みんなここで任務に当たってますよ」

「そうか。まぁ大丈夫だとは思うけど、気を付けてな。何かあったら俺を頼れよ」

「ありがとうございます!でも、頼れませんよ先輩はもう一般人なんですから。それじゃあ私は、任務に戻ります」


 エレナは名残惜しそうにその場から離れていった。


「一般人、か……」


 ラバルはエレナのその一言に少し寂しさを感じながらも、エレナの背中を見送った。


「俺が心配する必要もないか」


 ちゃんと仕事モードだったし、こんなところで問題を起こすバカがいるわけないし、いたとしてもエレナたちの敵じゃない。

 俺が心配しなくて大丈夫だろう。




「遅かったですわね」


 俺がアリアたちの入った店に戻ると、まだアリアはサラに服を着せていた。

 そしてそれを呆れた様子でミシェルが見ていた。


「すまんな。意外に預金が少なくて落ち込んでただけだよ」

「それはまずいんじゃないんですの!?」

「まぁな。でも、男に二言はないんだろ?」

「そうは言いましたけれども、これはお姉様のせいですから、そこまでして身を削る必要はないんじゃないですの?」

「そうかもな」


 アリアの着せ替え人形に成り果てたサラを見ながら俺は、すっかりサラのその美しさに見蕩れていた。

 危うくその服を即決しそうになるほどに。

 だが、あの服の値段が頭をよぎった瞬間、俺の足下が瓦解するように、サラのその美しさも忘れるほどに、さぁーっと血の気が引いていった。


「あ、あのアリアさん。私は、こんな高い服はいいです。もっと気軽に着れる服がいいです……」


 サラはひとり楽しむアリアに恐る恐るそう進言した。


「そうかしら?これでも全然いいと思うけど」


 悪逆令嬢は下民の言い分などに耳を貸さない。


「お姉様、サラ様の言うとおり、この服は気軽に着れませんわ。もっと普段から着れるような服でないといけませんわ」

「そういうものなのかしら?」


 この横暴にして、かの邪智暴虐の王の意志を継ぐ彼女は、妹の助言さえも無視する。


「そうですわよねラバル様」

「うお!?お、おう、そうだな。こんな高いと着る時に勇気がいるかもな」

「そういうものなのかしら」


 そうだよ。一般人とは、そういうものだよ。


「そうなのね。知らなかったわ」


 納得はしていないものの、妹やラバルがしきりにそうだと言うのでアリアは、仕方なく折れた。


「それじゃあ、今度はミシェルが私たちをエスコートしてくれない?」

「お任せ下さいお姉様、このミシェルが必ずサラ様のお望みに叶う服を見つけて見せますわ!」


 不機嫌なお嬢様は妹への仕返しと言わんばかりに、次はお前がやってみなさいと、仕事を放り投げた。



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