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悪魔勇者 学園都市編  作者: 響 翔哉
入学狂騒編
33/44

買い物の前に腹ごしらえを

「それじゃあみんなどうする?」


 アリア大将軍の命令の下、俺たちはレストラン街にある喫茶店へと侵攻を開始した。

 開店から時間が経っているため、俺たちと同じように朝ご飯を食べに来た客でごった返していた。

 だが、待つこと10分、なんとか俺たちは席に着くことが出来た。


「そうですわね、このパンケーキとかいいんじゃないですの?」

「そうね。なら、一緒に分けましょうか」

「お姉様と、シェアしてもよろしいんですの!?」

「別にいいわよ」

「おへぇー!!」


 ミシェルは奇声を上げながらぶっ倒れた。


「ちょ、ちょっと何やってるのよアンタ!?」


 相変わらず仲のいい姉妹だことで。


「ボクたちはどうしましょうか」

「そうだなぁー。このサンドイッチのセットとか良くね?」


 コントを繰り広げる姉妹とそれを見て唖然とするサラをよそ目に、俺たち男子組はメニュー表を広げて何を食べようか議論を始めていた。


「俺はこのプリンアラモードなるものを頂こうかな」

「エースはどうする?」

「……俺は、コーヒーだけでいい」

「オッケー!」


 レンとユリアク、エースは迷うことなく決めてしまった。

 これはコイツらのすげぇとこだよなぁー。

 俺とか悩んであれもこれもってなっちまうんだよな。


「ボクはこのモーニングAセットにしましょうかね」


 比較的優柔不断なタイプであるダニエルも決めてしまった。


「ラバルっちはどうする?」

「そうだな……」


 俺はメニュー表をあちらこちらめくりながら、にらめっこを始めた。


 このタマゴサンドとコーヒーのセットもいいな。

 いやでも、このモーニングBセットも捨てがたいし、このケーキと紅茶のセットも魅力的だ!


「まったく、相変わらず優柔不断な野郎だな」


 レンは悩みに悩むラバルに呆れてツッコミを入れる。


「そうですよ。早く決めないと他の人に迷惑がかかりますよ」

「そうだな、早くしてくれよ」


 三人とも俺を急かさんでくれ!

 迷うじゃねぇか!


 あぁあああ!もう、なんでもいいや!


「じゃ、じゃあ、このタマゴサンドとコーヒーのセットで……」

「オッケー!」


 これで俺たち男子組の注文は決まった。


「おーいアリア、そっちは決まったか?」


 レンは隣の席に座る女子組の元へ、注文が決まったか聞きに行った。


「それにしても混んでいますね」

「そりゃあ休日だしな」

「それもそうだが、いつにも増して今日は人が多い。前にも同じ時間帯にこの店に来たことがあるが、ここまで混んではいなかったな」

「そうなのか」


 今日は特別なイベントでもあるのか?

 有名なアーティストがインストアライブするとか?

 屋上で特撮ヒーローのライブショーがあるとか?


「向こうも決まったみたいだぜ」

「そうですか。ならコチラから注文しますか?」

「そうだな。ラバルっち、そこのボタン押してくんね?」

「お、おう……」


 俺が呼び出しベルを押すと、モーター音を響かせながらロボットがやって来た。


「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」


 機械の抑揚のない声をした旧型のロボットがここでは働いているらしい。

 学園都市だからといって全てがハイテクという訳ではないのか。


「俺はプリンアラモードとコーヒーをブラックで」

「ボクはモーニングAセットを一つ」

「ブラックコーヒー」

「俺っちはこのサンドイッチセットで!」

「えーっと……俺は、タマゴサンドとコーヒーのセットでお願いします」

「ついでに隣も聞いてくれないか、連れなんだ」

「承知しました」


 ロボットだから無理なのかと思ったが、人間のような柔軟さもあるんだな。


「私たちは、パンケーキをお願いします」

「私は、ケーキセットでお願いします」


「ご注文承りました」


 再度確認することなく去って行ってしまった。

 ロボットだから一発で覚えてしまうのか。


「つーか、ラバルっち狭いから女子組の机に行ってくれねぇか?」

「ううぇ!?なんで俺が?レンの方がいいだろ」

「サラちゃんをあんな完全アウェーな場所に独りにする気かおめぇは」

「だからって、俺じゃなくてもいいだろう」

「心配するな、俺たちは全員彼女持ちだ」

「マジで!!??」

「嘘だよ」

「心臓に悪い冗談はやめてくれ」

「はははっ!俺たちを驚かせた罰だよ」

「だからって、そんな広範囲に被害の及ぶ冗談言わなくても……」


 恐る恐るみんなの方を見る。

 だが、誰も被害は受けていないらしい。

 それとも嘘って言うのが嘘か?


「それじゃ」

「ちょ、ちょ!」


 レンが強引に隣の席へと俺を押す。


「おーいアリア、さすがにあっちに5人も座るのキツいわ。ンで、ラバルっちをこっちのテーブルに追いやってもいいか?」

「もちろんいいわよ」

「お姉様!なんでこんな奴と同じ机に座らねばなりませんのよ!」

「うるさいわね!いいでしょ別に死ぬ訳でもないし!」

「な、なんかすんません」


 俺は空いている席に座った。


「ラバルくんは何を頼んだんですか?」


 俺が久しぶりにこの姉妹喧嘩に呆れていると、そんなの関係ないとサラが話しかけてきた。


 凄いなこんな短時間でもうコイツらの扱いをマスターしたのか。


「俺は、このタマゴサンドとコーヒーのセットだよ。サラは?」

「私は、ケーキセットです……」

「なぜ顔を赤らめる」

「だってこんなに食べてるのを知られたら恥ずかしくて」

「だったら言わなければいいじゃん」

「あっ、そうでした。よくも嵌めましたね」

「俺はなんもしてねぇよ」

「そうでしたっけえ?」


 どうやらサラは、ドラグローゼ姉妹だけでなく、俺の扱いもマスターしてしまったらしい。


「そう言えば、先程の話、本当にいいんですか?」

「当たり前だろ。せっかく買い物に来たんだし、それに俺も……サラが、いろんな服、着てるの見たいし……」

「えっ?なんて言ったんですか?」

「な、なんでもねぇよ!」


 俺は何を考えてんだよ。

 そんなこともう考えないって決めただろ。


「なら、心置き無く高いものオネダリできますね」

「おいおいだからって、たかっていいわけじゃないからな」

「えーそうなんですか?」


 まったく、心を許したらいつか死ぬまで貪り尽くされそうだ。


「お待たせしました」


 俺たちの楽しい会話を終わらせたのは、腕いっぱいに料理を載せたロボットの声だった。

 それぞれの席に頼んだ料理と飲み物を置き、終いに伝票を置いて元いた厨房へと帰って行った。


「いっただきまーす!」


 少し遅めだが、みんなでワイワイしながら食べるのはやっぱり楽しい。

 またみんなとこうすることが出来るなんてな。

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