観光
「おせぇぞ」
なぜか最後に教室を出ていった俺たちが最初に集合場所に着いていた。
「相変わらず早ぇーなーおい!てっきり俺が一番最初だと思ったのになぁ」
集合場所に一番初めに現れたのは、レンだった。
さすがは真面目くん。集合時間の10分前に到着だ。
「他の奴らは?」
「さぁな。どうせすぐ来るだろ」
まぁ俺とレンが早いだけの話か。
「それより、言うことがあんだろ?」
レンは俺の後ろを覗き込みながらそう言う。
「サラは俺が誘った。悪いか?」
「悪くねぇけどよぉ……」
「レンさん、いきなりお邪魔してしまって申し訳ありません。不束者ですがよろしくお願いしますっ!」
「まぁ俺は別に構わないぜ。これからよろしくなサラちゃん」
レンはこうして数多くの女の子を誑し込んでいく。
「そんなことしてると、ミシェルに殺されるぞ」
「物騒なこと言うんじゃねぇよ!」
「事実だろ」
ミシェルとは、レンに女の敵という二つ名を名付けた本人にして、アリアの妹である。
姉と同じく気が強くキッパリとした性格をした厄介な妹だ。
だが、姉と違って運動神経がすこぶる悪い。
そしてレンを親の仇かと思うほど嫌っている。
二つ名だけでなく、女の子を誑し込んだと勝手に認定して、鉄拳制裁を加えるのだ。
その分、パソコン関係については、ずば抜けてスゴイが。
「やめてくれ。また、俺の評価が下がるじゃねぇか……」
そして、レンはミシェルのことが好きだ。
ここまで貶され、蹴られ殴られているのにも関わらず、好きという感情に変わりのないレンに、俺は軽く引いている。
ここまでくればレンはドMだと思うしかないと思っている。
「早ぇな」
俺とレンが話していると、エースがやってきた。
相変わらずパンクなファッションだな。
「お前こそ5分前に来てるじゃねぇか」
「テメェより早く来ようとしただけだ」
どんだけ俺のこと嫌いなんだよ。
「二人ともそんな険悪にならずに……」
レンは険悪ムードの二人をなだめようと必死に空気を変えようとする。
「やれやれ。せっかく楽しみにしていたというのに、君たちは相変わらず喧嘩ばかりなんですね」
二人の険悪な雰囲気を見たダニエルは呆れた顔をしながら現れた。
「まったくだ。久方ぶりの再会を楽しもうという気は無いのか?」
ダニエルと一緒にやってきたユリアクも二人の様子を見て呆れる。
「そうだよな!二人からも何か言ってやってくれよ!」
強力な助っ人二人にレンは助けを求める。
「仕方ありませんね」
「そうだな」
二人はレンの要請を受けて場を和ませようと二人に話しかける。
「ンだよ」
しかし、エースの不機嫌は直らなかった。
「アンタたち!何やってんのよ!」
校門前で負のオーラを振りまいている幼なじみたちを見つけたアリアは慌てて駆けつける。
「アリアいい所に来たな!助けてくれよ!」
「一体何があったのよ。物凄く暗いオーラを感じるんだけど」
アリアは特異体質で、その場の気やオーラを見る能力を持っている。
「いつも通りのことさ」
ダニエルがアリアの疑問に答える。
「本当にそれだけ?」
「そうだが、どうかしたのか」
しかしアリアにはたったそれだけの理由だけでここまで禍々しい物が視えるとは思えなかった。
「そう……」
「そんなことよりもさ!行こうぜ!」
レンの掛け声で一行は出発した。
しかしラバルとエースの雰囲気は悪いばかりだった。




