初めての決闘 その3
決闘開始まであと3時間。
決闘委員会、風紀委員会、懲罰委員会から集められた生徒たちに護衛されながら、俺たちは第二修練場へとやってきた。
見た目は少し小さめの総合体育館といった感じだった。
「もう既に中には誰もいないのを確認済みです。ご自由にお使いください」
そういうと彼らは警備員のように入り口を塞いだ。
あとは勝手に入れということなのだろうか。
まぁいいか。
自由に使っていいと言われたしな。
「すげえな」
中に入ると、3、4階建ての家がすっぽりと収まるほど高かった。
しかも部屋がひとつしかなく、床には武道場の畳のようなものが敷かれていた。
「ラバルさん。どうして受けちゃったんですか?」
俺がこの修練場に見蕩れていると、サラが少し怒ったような口調で俺に話しかけてきた。
「どうしてか……。俺は最初からアイツらと戦う気だった。でも、君がいたからこの決闘を受けるか悩んでた。でも、君がやる気満々だったから、俺と君でやろうと思ったんだよ」
「そうだったんですね」
「悪かったか?」
「いえ、そんなことはありません。むしろ、とても心強いです」
「そう言って貰えて嬉しいよ」
「…………」
サラが何かボソッと言ったような気がした。
「何か言ったか?」
「いえ、なんでもありません」
気のせいか。
「そうか。それじゃあ作戦でも考えようか。来いフェニックス」
「はいはいなのじゃ」
尊大な態度で俺の相棒が影から現れた。
「アテナ」
サラの方も自分の契約神を召喚した。
俺たちは人数差やお互いの長所と短所を考慮した作戦を立てた。
そして、軽く連携と技の合図の練習をした。
そんなこんなで3時間経った。
俺たちは懲罰委員と風紀委員に囲まれて、会場へと護送されたのだった。
「おいおい何だこの人の数は!?」
俺は決闘の場である第一闘技場に集まった人の数に圧倒された。
「普通こういうのにこんなに人が入るのか?」
「さぁ分かりません。1度も来たことがないので」
「そうなんだ」
闘技場は現代日本で言うところのアリーナのような所だった。
中央に戦う場所があって、それを上から見下ろすように取り囲む観客席がある。
「すまないな二人とも。まさかこんな騒ぎになるとは思わなかった。護衛を付けて正解だったな」
クローバー先輩の言う通り、この会場を埋め尽くす程の観衆が詰めかけ、外にも一目見ようと長蛇の列が作られていた。
「新聞部が噂を聞き付けて号外を出しちまったんだよ。なんせ今年の首席が決闘をするんだからな」
呆れたようにそう言うとクローバーは壁にもたれかかった。
「さぁ行ってこい二人とも。相手は所詮雑魚だ。簡単に蹴散らしてこい」
励ましているのか、相手を貶しているのか分からない応援メッセージを頂いたが、まぁ先輩からのエールを無下には出来ないだろう。
「行ってきます!」
「行ってきます」
俺とサラは闘技場の内部、つまり決戦のリングへと続く入り口へと駆けて行った。
「この街の奴らには困ったものだ。血気盛ん過ぎて手に負えん」
勢いよく飛び出した二人の背中を見ながらそうクローバーは呟く。
「そういうお前も他人の事を言えないだろ」
リューが空かさず突っ込む。
「そうかもな」
クローバーは自嘲するように笑うと入り口とは逆方向へと歩き出した。
「見ていかないのか?」
立ち去るクローバーの背にリューがそう問いかける。
「見なくても結果は歴然さ。勝ちの分かっている戦いほど詰まらないものは無い」
そう言うとクローバーは会場を後にした。
「まったく、連れない奴だな」
クローバーの痩せ我慢とも言えるその言い分にリューは苦笑いしながら観客席へと登っていった。