自己紹介 その4
「うーんまずは学級委員長を決めましょうか。誰かやりたい人いますか?」
メリアの問いかけに、誰も手を挙げなかった。
今までの盛り上がりが嘘のように静まり返った。
おいおい嘘だろ?
この意識高い系のクラスで誰も立候補しないとかありえるんけ?
レンとか脳死で手挙げると思ったのに。
そっとレンの方を向いて見ると、レンはクソ真面目そうに前を見ていた。ただ一点だけを。
おいおい!それどういう感情なん?
そんな凛とした顔をしてキャラ崩壊しないでください。
「センセー。立候補じゃなくて推薦ってアリですか?」
この空気をものともせずギャルが口を開いた。
勇者だなぁ。このお通夜みたいな空気でも関係ないもんなぁ。
「いいですけど、リアちゃんは推薦したいと思っている人がいるんですか?」
「あったりまえじゃん。そんなのラバルっちに決まってんじゃん」
「えっ、俺!?」
「確かに首席なので学級委員長なのは分かりますけど」
「でしょー。ならそれでいいじゃん」
「でも、ラバルくんの意見も聞かないといけないので」
「それじゃあラバルっちはどうなん?やりたくない?」
「外様の俺よりも適任者がいると思うんだが」
「別によくね?あーしもみんなも誰もそんなこと気にしてないって」
「ホントか?」
「マジマジ。あーしラバルっちなら言うこと聞くよ?」
なんだよその脅し文句。
「と、言うことで、学級委員長はラバルくんに決まりましたー」
「ちょ!センセー!?」
リアのこと面倒くさくなってない?
「それじゃあ続きは学級委員長に任せましょうかね」
「えっ先生!?」
「それじゃあコレが今日決めなくちゃならないことのリストね」
いきなり渡されても困るんだけど。
「えーっと、どれどれ」
今日決めなくちゃならないのは、副委員長と各委員会2名ずつ。
「えーっと、まずは副委員長を決めたいと思います。誰かやりたい人はいますか?」
「…………」
なぜだ。
なぜ誰も手を挙げない?
おかしいだろ!?
普通こういうのってたくさん立候補するもんじゃないのか!?
ジェネレーションギャップというか異世界ギャップというか……。
「えーっと、進まないから誰か立候補してくれないかな?」
副委員長ということはそれなりに実力者の方がいいか。
「ヘンルーダ、副委員長頼めるかな?」
彼以外考えられないだろ。
この学年のNo.2であるヘンルーダなら誰も不満はないだろ。
「僕はいいけど、君は僕でいいのかい?」
「むしろ、ダメな理由があるのか?」
「いや、ないよ」
「じゃあ、ヘンルーダ・ラーナ、お前を副委員長に任命する。みんなもこれでいいよな?」
「…………」
沈黙は肯定ということでいいだろう。
「それじゃあ次は各種委員会を決めたいと思います」
えーっとどれどれ、この学園は一体どんな委員会があるんだ?
決闘委員会、風紀委員会、保健委員会、救護委員会、環境衛生委員会、図書委員会、運営委員会、施設保全委員会、生活安全委員会、懲罰委員会、学級委員会か。
それぞれ二人づつ、男女問わず、兼職は学級委員会のみ。
つまり、俺とヘンルーダは他の委員会もできるわけだ。
「ではまずは決闘委員会から決めていきます。立候補お願いし――」
「はいはい!うちがやります!」
その元気を学級委員の時に欲しかったなぁ。
「オッケー。それじゃあもう一人お願いしたいんだけど、誰かいませんか?」
「それじゃあ、僕がやってもいいかな」
誰も手を挙げない中、ケイトがスッと手を挙げて立候補した。
「では、決闘委員はエミリーとケイトで決まりです。次は風紀委員会を決めたいと思います」
学園物あるある権力の強い風紀委員会。
まぁこの学園都市みたいなところじゃあ風紀委員会がなくちゃ生徒の生活がままならんだろうしなぁ。
「やりたい人いますか?」
「そんなの俺様に決まってんだろ!」
「僕がやろう」
おうおう。正義感の強い奴らが立候補したなぁ。
「一応聞きます、他にやりたい人はいませんか?」
しばらく待ったが誰も手を挙げなかった。
「では、風紀委員はヘンルーダとレオに決まりました」
えーっと次は保健委員会か。
「保健委員会やりたい人」
「わたしがしても良いでしょうか」
「わたくしが立候補致しますわ!」
意外だな。
まぁアリアとレンが立候補するよりはマシか。
「では、保健委員はダニエルとアンジュに決まりました」
てか、こんなスッキリ決まるもんなんだな。
もっと何人かで取り合うものかと思っていたんだけどなぁ。
「次は、救護委員を決めたいと思います。やりたい人は挙手をお願いします」
「えーっと、ボクやりたいです」
「ぼくもお願いします」
これはこれは、性癖クラッシャーの御二方ではないですか。
この二人に救護されるとか死ねるな。
「では、救護委員はクロエとルシウスに決まりました」
これは救護の天使が爆誕か?
「では次に、環境衛生委員を決めたいと思います。やりたい人は挙手をお願いします」
おっとこれは一番の不人気枠か?
誰も手を挙げてくれないんだが。
「仕方ない。わたしがやろう」
あんなは侍だよアリスさん。
他の奴らにも見習って欲しい。
「なら、俺が引き受けよう」
さすがだぜユリアクの兄貴!
「では、環境衛生委員はアリスとユリアクに決まりました」
こういう奴らがいると助かるなぁ。
これからはアリスさんと呼ばさせて頂こう。
「次は図書委員を決めたいと思い――」
「わたし、やりたい」
いや、その異常なまでの反射神経なんなん?
今の今まで寝とったやん!
「えーっと」
「ダメ?」
そんな子猫みたいな顔しないで!
「マリア以外にやりたい人は?」
「すみません、僕もやりたいです」
図書委員会は癖強めだな。
「図書委員はマリアとガリムに決まりました」
「よし、今日の任務終了。おやすみなさい」
自由だなぁー。
そのメンタルが欲しい。