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悪魔勇者 学園都市編  作者: 響 翔哉
入学狂騒編
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自己紹介

 あんなのでよかったのか!?


 今更ながら恥ずかしがってもしょうがねぇけどよォ。


 ラバルは教室に向かいながら恥ずかしさに悶絶していた。


 はぁー。でもよォ、あれ以外にどうしろって言うんだよ。

 無茶振りもいいところだぜあのバカヤローはよォ。

 はぁー。入りたくねぇ。

 ぜってぇアイツらに笑われる。

 それに他の奴らにどんな目で見られるか!

 想像しただけでも吐き気が――


「あれぇ?どうしちゃったんですか?」


「ほわぁっ!!」


 いきなり背後から声をかけられたラバルは驚いて変な声を出した。


 ビックリしたぁ!


「ラバルくんですね。素晴らしい演説ありがとうございました!」


「いや、もうそれ……はい……」


 ラバルは灰のように白くなっていく。


「ちょ、ちょっと大丈夫ですか!?」


 メリアは慌ててラバルの肩をブンブン揺らす。


「SAN値がピンチです……。このまま死んじゃうかも」


「た、た、大変!」


 メリアはあっち行ったりこっち行ったり慌てふためいた。


「じょ、冗談です!!」


 予想外の反応にラバルも慌てる。


「じょ、じょうだん?」

「そ、そうですよ。冗談に決まってるじゃないですか」


 ラバルは苦笑いとともにメリアをなだめる。


「よかった。でもどうして教室の前で立ち止まってたの?」

「えーっと。それは……、ちょっと入りづらいからですね」

「そうだよね。初めてのところに飛び込むのは緊張するもんね」


「そういうことじゃ……」


「でも安心して!私がいるから」


 この人、俺の話聞いてねぇ!


「それじゃあ、行こう!」


 そう言うとメリアはラバルの腕を掴み教室に入っていった。


 ちょ、ちょ、ちょ待て!

 それじゃ余計まずいって!


 ラバルは抵抗するが、メリアの腕を振り解けずそのまま教室まで引きずられていった。


 あぁ終わった。

 俺の学園生活終わっちまったよ。




「それじゃあ皆さん自己紹介しましょう!」


 いきなり首席の腕を掴んで引っ張って入ってきた担任にドン引きが止まらないクラスを盛り上げようと、急遽メリアは自己紹介大会を開催した。


「それじゃあ、成績順に行こうかな。トップバッターはラバルくんお願いね!」


 この状況で俺に振るとか鬼より鬼かよ。


「えーっと、ご紹介にあずかりましたラバル・エラートです」


 嫌々でも仕方ない。これ以上自分の印象を悪くするわけにはいかないしな。


「知っての通り俺は学園生じゃない。俺のことを知っている奴は少ないと思う。だから俺のことを少し話したいと思う」


 まぁ自己紹介なんてどうせ俺以外必要ねぇだろうし。それに、俺のことを知らない学友たちに俺のことを知ってもらった方が効率的だろ。他の奴らのことは後から個人的に聞けばいいしな。


「まず、みんなには俺の本当の姿を見て欲しい。……『鬼化5パーセント』」


 ラバルは眩い光に包まれると、筋肉が隆起し、額からは1本の角が生え出て、体中に赤いアザのような紋様が浮かび上がり、鬼へと変化した。


「俺は鬼だ」


 その瞳は紅く光り輝いていた。

 まるで獰猛な野獣のようなその目にクラスメイトたちは後ずさった。


「『解除』」


 今度は白煙に包まれると元の姿に戻っていた。

 服も体も元に戻り、額の角は引っ込んだ。


「そして、俺はSランク冒険者だった。冒険者四天王パーティ『黄泉の爪』の一員だったんだ」


 俺が元Sランク冒険者だったことを話すと皆、戸惑いを隠せないのか、教室にざわめきが起こった。

 こうなることは想定済みだ。いきなり現れた謎の生徒の正体がSランク冒険者だったなんてそう簡単には信じられないだろう。


 だが、それ以上に俺は幼馴染たちの幽霊を見たような顔に心が痛たんだ。


「でも俺は、1年前、パーティメンバー全員を大罪魔王によって殺された。俺は必ずソイツに復讐をする!そのためにこの学園に俺は来た」


 俺のことを知っている奴も知らない奴も、俺の話を聞いて黙り込んでしまった。

 より一層暗い空気にしてしまった。


「でも、こんな俺と友達になりたいって奴は歓迎するんで。気軽に声掛けてください」


 こんな焼け石に水みたいなこと言ったってしょうがねぇよな。


「そ、それじゃあ次はヘンルーダ・ラーナくん行こっか」


 精一杯盛り上げようとする先生に俺は少し負い目を感じながらも席に座った。


「僕はヘンルーダ・ラーナだ」


 次に指名されたのは次席、つまり、本来なら首席であった生徒だ。


 きっと俺のことを恨んでるんだろうな。


「僕は中等部で首席だった。高等部でも首席になると思っていた」


 やっぱりそうだよな。怒ってるよな。


「でも、ラバルくんに会えてよかった。今までは追われる側だったのが、追う側になれた。それが僕をより強くしてくれるよ」


 あれ?意外と怒ってない?


「僕のライバルとしてこれからよろしく」


 あっ、これダメな奴ですわ。


 完全に敵対視されてますわ。


「それじゃあ次はマリア・エル・グラエルスカちゃんよろしくねぇー!」


 メリアはもう何も気にしなくなったのか、上機嫌で次の子を指名した。


「……うん?」


 マリアはなぜ名前が呼ばれたのか分からず、キョトンとしていた。


「あっ、そう言うことですか」


 いやいや、なに名探偵みたいなこと言ってるんです?


「遂にわたしの番が来てしまったと」


 どうやら彼女はマイペースを極めているらしい。


「わたしはマリア・エル・グラエルスカです。いつも図書館にいる……?います……?えーっと、なんて言おうとしたんだっけ?ふあぁ……おやすみなさい」


 おいおい!マイペースにも程があんだろ!

 自己紹介中に寝ちまったぞ!

 なんだったんだあの子は。心ここに在らずって感じって言うか、天才肌って言うか。


 とりあえず、変わった子だな。


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