さようならプープー
柱時計のハトが九回鳴きました。
寝る時間です。
リョウはプープーをだいてベッドに入りました。
プープーはクマのぬいぐるみ。
プープーがいっしょなら、電気を消してもひとりで寝られます。
ま夜中。
トントン、トントン。
ノックの音で目をさましました。
ガチャリ。
ドアのあく音がして、部屋にうす明かりがさしこむと、入り口に大きなクマが立っていました。
「こんばんわ」
クマがペコリと頭を下げて言います。
「プープー、ここにいませんか?」
「いるけど、プープーはボクのぬいぐるみだよ」
リョウはあわててプープーをだきしめました。
すると、プープーが腕の中で動きました。いつのまにか本物の子グマになっていたのです。
「おかあさん!」
プープーはリョウの腕からはい出ると、大きなクマにいきおいよくとびつきました。
と、そのとき。
遠くで犬の鳴き声がしました。
「猟師だわ!」
おかあさんグマがビクッと体をふるわせて窓を見ました。
――えっ?
リョウが窓からのぞいてみると、そこはいつのまにか森になっていました。
それだけではありません。
部屋はほら穴に、電灯の明かりは月の光りに、ベッドは落ち葉になっていました。なにもかもが変わっていたのでした。
犬の鳴き声が近づいてきます。
「プープー、いっしょに逃げるのよ」
おかあさんグマはプープーを連れ、森のおくへといちもくさんにかけ出していきました。
犬たちがやってきました。
プープーたちを見つけたのか、けたたましくほえながらあとを追っていきます。
猟師もやってきました。
プープーたちに向かって鉄砲をかまえます。
――プープーがうたれてしまう。
リョウはほら穴をとび出すと、猟師の足におもいきり体当たりをしました。
バーン。
鉄砲のねらいははずれ、夜空の月に向かってうたれました。
まっ暗になりました。
月が消え、森が消えました。
猟師が消え、犬たちが消えました。
プープーが消え、おかあさんグマが消えました。
そして……。
リョウはひとりベッドにいました。
プープーはもうだいじょうぶ。
今はきっと、森の中でおかあさんグマといっしょ。
そしてリョウもだいじょうぶ。
明日からは、電気を消してもひとりで寝られます。
ラスト。
さびしい終わり方だったので、元気の出るハッピーエンドに変更しました。