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第八十話 鼠人の巣穴

ーー翌朝


 朝食を済ませたアレク達ユニコーン小隊は、夜営を片付けて再び捜索を始める。


 帝国軍の装備は、ほぼミスリル製であり、ほとんど重さを意識することは無かったが、背嚢の水や食糧、夜具などは結構な重量であり、平地ならまだしも、それらを背負って山岳地帯の森林を進むことは、それなりに大変であった。


 森の中を歩きながらアルがアレクに尋ねる。


「なぁ、アレク。どこまで捜索するんだ?」


「・・・携行食糧は七日分。片道三日半までが行動限界だよ。行けるところまで、行こう」


 ルイーゼも口を開く。


「食糧を現地調達できれば良いのだけど・・・。兎や栗鼠(リス)といった小動物はおろか、木の実も無いわね」


 トゥルムも口を開く。


「おそらく、鼠人(スケーブン)が食べ尽くしたのだろう」


 ドミトリーも口を開く。


「水の補給も重要だ。既に一日が過ぎている。行動できるのは、残り二日半か」





 アレク達が森の中を進んでいると、ルイーゼが森の異変に気付く。 


 森の下草や藪に、何者かが通った後のように分かれ目が出来ている。


 ルイーゼが呟く。


「これは・・・? 獣道?」


 ルイーゼは、アレクを呼び止めると、下草を掻き分けて地面を確認する。


「待って、アレク! ・・・見て、足跡がたくさん。・・・どれも人のものじゃない」


 ルイーゼは、中堅職の暗殺者(アサシン)であり盗賊や斥候の技能に長けていた。


 アレクも地面の足跡を確かめるルイーゼの傍に来て見分する。


 アレクが口を開く。

 

「・・・これは、鼠人(スケーブン)の足跡?」


 ユニコーン小隊は、ルイーゼを先頭に獣道の足跡を辿って行く。


 しばらく歩くと、樹齢千年は越えているであろう巨木の根元まで足跡が続いていた。


 アレク達が巨木の根元の下草を掻き分けると、人が入れるほどの大きな穴があり、その中に足跡は続いていた。


 アレクは口を開く。


「木の根元に穴? ・・・洞窟?」


 ルイーゼは穴の壁を指先で触れて調べる。


 壁には、爪のようなもので掘り進んだ跡があった。


「・・・自然に出来たものではないわ。・・・ホラ、ココ。掘った爪痕がある。」


 ルイーゼが指し示す爪痕を見たアルは軽口を叩く。


「随分とデカい爪痕だな。・・・どんな化物だ? それとも怪物か何かか?」


 トゥルムはアルに答える。


「化物と怪物のどちらにしろ、どちらとも会いたくないな」


 穴の入り口を見たエルザは口を開く。


「・・・これ、鼠人(スケーブン)の巣穴じゃない? 奴ら、地面に穴掘って住んでるみたいよ。村の長老が言ってた」


 ナディアも口を開く。


「・・・鼠の巣って、お世辞にもきれいな所じゃないわよね。・・・中に入るのは、あまり気乗りしないわ」


 ナタリーも呟く。


「・・・怖い」


 アレクは結論を出す。


「・・・とにかく、中に入って調べてみよう。鼠人(スケーブン)の巣穴なら、ここが『霊樹の森』だという事だし、今の時点じゃ、ここが『霊樹の森』かどうか、確証が無い」


 アレクの言葉を聞いたルイーゼは中に入って行く。


「行きましょう」


 アレク達ユニコーン小隊は、松明を片手に穴の中に入って行く。






 穴は、傾斜の付いた坂が五メートルほど続くと、広い地下道に出る。


 地下道は、二メートル半ほどの広いものであった。


 アレクの顔を生暖かい空気が撫で、松明の炎も風になびく。


 アレクは口を開く。


「・・・風が吹いてる。 どこかに続いているみたいだ」


 アルは軽口を叩く。


「通路って事か。・・・敵さんがウヨウヨ居るかもしれないぞ?」


 アレクは答える。


「万が一に備えて、陣形を組んで進もう」


 小隊は二列縦隊を組み、地下道を進む。


 先頭は、盾を持ち、装甲の厚いアルとアレク。


 二列目が三又槍(トライデント)を持つトゥルムと暗殺者(アサシン)で飛び道具と盗賊系スキルを持つルイーゼ。


 三列目が魔導師のナタリーと修道僧のドミトリー。


 最後尾は、後ろからの攻撃に備えて、剣士のエルザと近接戦もできるナディアが並ぶ。


 アレク達は陣形を組んで、傾斜の付いた地下道を歩き、地下深くへ降りて行く。


 小一時間ほど地下道を進むと、暗い地下道から急に明るい広大な空間に出る。


 空間を照らしている青白い光がアレク達の目を眩ませる。


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