第七十八話 夜営と物音
アレクとルイーゼは、自分達の簡易テントに入る。
簡易テントは二人用で、中はさほど広くなく、二人の寝床と二人分の手荷物を置くと中は一杯であった。
アレクは、虫除けの蚊帳の内側に照明のランタンを吊るすと、パンツだけの下着姿で寝床に横になる。
アレクが横になると、服を脱いだルイーゼがアレクの腰の上に跨る。
全裸のルイーゼは、アレクの上から覆い被さるように抱き付いてキスする。
「んっ・・・」
いつもはアレクの傍らに寝るルイーゼが、いつになく積極的な事にアレクは違和感を覚える。
「どうしたんだ? ルイーゼ?」
「最近、ちょっと寂しかったから。・・・アレクが他の女の子の方を見てて」
ルイーゼは、遠回しにアレクがフェリシアを気に掛けていた事を言っていた。
「・・・ごめん。ルイーゼ。寂しい思いさせたね」
謝るアレクにルイーゼは微笑む。
「いいの。今はこうして『私のアレク』に戻ってくれたから」
そう告げるとルイーゼの顔が上気したように、ほんのりと紅潮する。
「・・・ルイーゼ?」
ルイーゼは、うっとりとした表情でアレクに告げる。
「・・・アレク。私、もう我慢できない」
アレクはルイーゼを抱く。
「・・・ああっ」
アレクは胸の上のルイーゼを抱きしめると、耳元で囁く。
「ルイーゼ。皆に声が聞こえるよ」
ルイーゼは、アレクの胸の上で声が漏れるのを必死に堪える。
アルとナタリーは、焚火の前で二人で寄り添って見張りをしていた。
ナタリーは、立ち上がると屈んで恥ずかしそうにアルの耳元で囁く。
「・・・ちょっと、おトイレしてくる」
「気を付けてね」
「アル。・・・覗かないでね」
「覗かないよ!」
ナタリーは、アルと囲んでいた焚火から離れると、藪の中に分け入り、少し入ったところへ歩いて行く。
屈んでローブの裾を捲ると下着を下ろして用を足す。
「ふぅ・・・」
用を足し終えたナタリーの耳に、押し殺したような声が聞こえてくる。
聞き慣れない、押し殺したような声。
(・・・えっ? 何の声??)
ナタリーは聞き耳を立てて音のする方へ歩いて行くと、アレクとルイーゼのテントからであった。
(アレク? ルイーゼ?)
いけない事とは知りつつも、ナタリーはしゃがんでアレクとルイーゼのテントの入り口をちょっとだけ開き、中を覗いて見る。
(えええええっ!?)
ナタリーの目にアレクがルイーゼを抱いている様子が映る。
押し殺したような声は、抱かれているルイーゼの声であった。
お嬢様育ちで興味や関心はあったものの、男女の睦事の知識が全く無いナタリーは、思わず二人の睦事に魅入ってしまう。




