第七十一話 報告と助命嘆願
--翌日。
アレクとルイーゼはジークの私室を訪れ、ソファーに座るジークとテーブルを挟んで対面に並んで座ると、フェリシアから聴取した事を報告する。
ジークは二人からの報告をじっと聞いていたが、アレクが報告を終えると尋ねる。
「合成獣を錬成する魔法技術について、あの女は、何か言っていたか?」
「いいえ。何も」
「そうか。……トラキアにそんな魔法技術があるとは思えん。おそらく出処はダークエルフだろうな」
アレクはジークに尋ねる。
「兄上。この後、彼女はどうなりますか?」
ジークは重苦しく答える。
「お前たちの話が本当なら、彼女たち、トラキア連邦政府首脳は、帝国の法に則って『戦争犯罪人』として処刑されるだろう」
アレクは、感情的にジークに訴える。
「そんな! 彼女は……フェリシアは、自分達の犯した罪を後悔していました! 処刑なんて……」
「……お前は、あの女を救いたいのか?」
ジークからの問い掛けにアレクが答える。
「はい! 兄上の力で、何とか、なりませんか?」
ジークは、少しの間考える。
「……父上なら。『帝国の法の上の存在』である皇帝の父上なら、あの女を救えるだろう」
フェリシアを救う方法があると聞いて、アレクは色めき立つ。
「本当ですか!?」
ジークは、淡々とフェリシアを救う方法についてアレクに話し始める。
「ああ。あの女をトラキア戦争の『戦利品』として父上に献上し、父上に愛妾として囲って貰えば、あの女は戦犯としての訴追を免れる。絶対帝政を敷く我が帝国で、皇帝の愛妾を訴追することなど、できないからな」
アレクは、ジークが語ったフェリシアを救う方法について聞き、愕然とする。
「そんな……そんな事って……」
再びジークは、淡々とアレクに話し始める。
「前時代ではよくあったことだ。征服者が被征服民の女を愛妾にすることなど、歴史上、珍しいことではない」
「ですが!」
救済案に不満げなアレクに対して、ジークは冷めた口調で話す。
「……他に方法があると思うか?」
アレクは、ジークの言葉に一言も言い返せず、俯いて答える。
「……いいえ」
落ち込むアレクにジークは微笑む。
「……お前の我儘を聞いてやるのは、これで二度目だ。あの女のことは、私から父上に話してみる。命だけは助かるだろうし、父上もあの女を悪いようにはしないだろう」
アレクは俯いたまま、ジークに答える。
「……判りました」
ジークが続ける。
「アレク」
「はい?」
ジークのエメラルドの瞳が、アレクの傍らに居るルイーゼに向けられる。
「私からの忠告だ。『お前のために何もしていない女』よりも、お前の傍にいて『お前のために命を捨てることを厭わない女』、『お前のために全てを捧げて尽くす女』を大切にしろ。判ったな?」
ジークの言葉は『何もしていないフェリシアよりも、傍にいて尽くしてくれるルイーゼを大切にしろ』と言っているのは明らかであった。
ルイーゼはジークの言葉に驚く。
「……殿下」
アレクが答える。
「……判りました」
アレクとルイーゼは、起立してジークに一礼すると、ジークの私室を後にした。
ジークは、アレクから頼まれたフェリシアの助命嘆願について、羊皮紙に一筆したためると、フクロウ便で皇宮にいる父ラインハルトへ送った。




