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アスカニア大陸戦記 皇子二人【R-15】  作者: StarFox
第三章 辺境派遣軍
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第五十一話 彼女の父親

 ナナイがアレクとルイーゼの部屋を訪れたのと時を同じくして、ハリッシュも娘のナタリーの部屋を訪れる。


 ハリッシュは、ナタリーの部屋のドアをノックする。


 部屋の中から声がする。


「どうぞ」


 ハリッシュは、ドアのを開けて部屋の中に入る。


 部屋では、ナタリーは机の前の椅子に座って趣味の手芸品を作っており、アルはベッドに寝転がって読書をしていた。


 ハリッシュが口を開く。


「ナタリー。久しぶりですね。元気にしていますか?」


 ハリッシュの声にナタリーが驚く。


「お父様!?」


「ええっ!?」


 ナタリーの声にアルも飛び起きる。


 ハリッシュは、中指で眼鏡を押し上げる仕草をした後で、ナタリーとアルを伺う。


「・・・ほう? こちらがナタリーの()()のアルフォンス君ですか。初めまして。ナタリーの父です」


 ナタリーは、両親への手紙にアルのことを『彼氏』と書いていた。

 

 突然、彼女の父親が現れたことにより、アルはベッドに座ったまま固まり、緊張してぎこちなく挨拶する。 


「お、お初にお目に掛かります。アルフォンス・オブストラクトです」


 ハリッシュは、アルを観察する。


(何というか、ジカイラの若い頃にそっくりですね! ところどころ、ヒナの面影もありますね。・・・親子とは、こんなに似ているものですかね)


 ハリッシュが口を開く。


「ちょっと、所用がありまして、近くまで来ましたので顔を見に来ました。変わりありませんか?」


 ナタリーは、ニッコリ微笑んで答える。


「はい。お父様」


「しかし、年頃の男女が同じ部屋で寝泊まりとは。あまり関心しませんね」


「大丈夫よ」


 アルは、何となく気不味くなって思わず謝罪してしまう。


「・・・スミマセン」


「いや、別に君を責めている訳では、ありませんよ。帝国軍の福利厚生の問題です」


 アルは、思わず苦笑いする。


「そうですか」


「・・・まったく。年頃の娘に『間違い』でも起きたら、軍はどうするつもりなのかと・・・」


 呟くハリッシュの眼鏡のレンズが、アルを見ながら室内灯の光を反射して鋭く光る。 


 苦笑いを浮かべたまま、アルの顔が緊張と恐怖で引きつる。


 ナタリーの父ハリッシュは、革命戦役の英雄として禁呪をも使いこなす『爆炎の大魔導師』の通り名で広く知られていた。


 ナタリーが口を開く。


「お父様。ナタリーは、もう結婚できる年齢です。子供扱いしないで下さい」


「それは、そうですが・・・」


「それに、アルは鼠人(スケーブン)との戦場で、何度も私を守ってくれました」


「そうでしたか。それは御礼を言わないといけませんね。・・・アルフォンス君。娘がお世話になりました」


 そう言うとハリッシュは、アルに頭を下げる。


「いえいえ! 大したことはしていません!」


 アルは、ガチガチに緊張しながら答える。


 ハリッシュは微笑みながら口を開く。


「・・・私は、二人がお互いに愛しあっているなら、とやかく言うつもりはありませんよ。アルフォンス君の両親の事も、良く知っておりますので」


 ナタリーの両親とアルの両親は、同じ小隊で革命戦役を戦い抜いた戦友であり、友人であった。


 ナタリーの父ハリッシュは、アルとナタリーの交際を認めてくれた。


 ハリッシュのその言葉を聞いたアルは、胸を撫で下ろす。


 安堵するアルにハリッシュが口を開く。


「・・・アルフォンス君。ナタリーの事をよろしくお願いしますね」


 そう言うとハリッシュは、再びアルに頭を下げる。 


 アルは、慌ててハリッシュに答える。


「そんな! こちらこそ、よろしくお願いします!」


 一呼吸置いて、ハリッシュが口を開く。


「さて、それでは私は戻りますね。二人とも元気で」


「お母様によろしく伝えて下さい」


「判りました。クリシュナに伝えておきます。それでは」


 ハリッシュは、ナタリーの部屋を後にし貴賓室へ戻っていった。


 

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