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第五百十五話  甲板での戦い(二)ロンギヌスの槍

-少し時間を戻した 総旗艦ニーベルンゲン 甲板。 


飛行(フライ)!」


 エリシスは『飛行(フライ)』の魔法を唱えて空中へ浮かび上がり、ドロテアとアキックスが剣戟を繰り広げる様子を観察していた。


 アキックスの速く流れるような美しい剣技は、連続して途切れることなくドロテアを斬り付けるが、ドロテアは余裕のある笑みを浮かべつつ、アキックスの剣を驚異的な身体能力を見せ付けるかのように身体を反らして躱し、レイピアで払う。


(まるで竜巻ね。『大陸最強の竜騎士』アキックスの剣を(かわ)すなんて)


(あの速さ。止まってはくれなさそう)


(機会はあるはず!)





 エリシスは両手を広げ、魔法の詠唱を始める。


Сотворение(ソトヴァリーニ) всего(・シェヴォ・) сущего(ソーシュ) от(・ワ・) сотворения(ソトヴォリーニャ) неба(・ニャ・) и(イ・) земли(ヅィーリ)

(天地創造より万物を形造る)


 エリシスの足元に一つ、そして頭上に一定間隔で巨大な魔法陣が十一個現れる。


Рожденный(アラルオジェニィ) с(・ス・) самого (スマボ・)начала(ナチャーラ), дрейфую(デリフーユ)щий(シー) в(・フ・) космосе(コースマイセ)

(始原より生まれ宙を漂い続ける)


 エリシスの周囲に『積層型立体魔法陣』が現れる。


Пыль(プイル), заряженная(ゼリジャーナ) громом(グローマム). Соберитесь(ツェベリーテ) здесь(・ヅェペス・) со(セス・) всех(ベス・) небес(ネベス)

(雷を帯びた塵よ。万天より此処に集え)


 エリシスがここまで魔法を詠唱すると、ドロテアはアキックスが水平に払った剣を避けるため、エリシスの正面に飛び上がってくる。


 エリシスは、空中に浮かんで魔法の準備を終え、サディスティックな笑みを浮かべながらドロテアに話し掛ける。


「酷いわ。私を無視するなんて」


 




 飛び上がったドロテアは、エリシスが『飛行(フライ)』の魔法で空中に浮きながら魔法を準備し、自分の目の前に浮いていることに気が付かなかった。


 ドロテアはエリシスの声に驚くと、顔から余裕のある笑みは消え、ギョッとした目をエリシスに向ける。


(この女、気配が無い! 不死者(アンデッド)!? それに、この魔力!!)


 エリシスは、身体の周囲におびただしい数の小さな雷を発し、大気中から光を放つ小さな粒子を魔法陣に集めながら詠唱を続ける。


Стань(スタン・) копьем(コピヨン・) молнии(モーニー) и(・イ・) пронзи(プロンジ・) моих(モーニ・) врагов(ブラゴフ).」

(閃電一撃の光槍となりて、我が敵を貫け!!)


 エリシスは、広げていた両手を伸ばしたままドロテアに向けて合わせ、魔法を放つ。


копье(コピヨ) из(イズ) заряженных(レジャーナフ) частиц! !(・チェスティス!!)

荷電粒子光槍(ランチア・ロンギーニ)!!)






 エリシスの周囲の魔法陣は合わせた両手の先に直列に十一個並び、最初の魔法陣から十一個の魔法陣の中心を貫くように、強烈な光を放つ輝く巨大な光の槍が造られると、ドロテアに向かって高速で飛んで行く。


 エリシスが放った禁呪『荷電粒子光槍(ランチア・ロンギーニ)』に甲板の者達は驚愕し、戦闘を中断して互いに距離を開けると、空中にいる二人の方を向く。


 ダークエルフ達は、ドロテアを見上げて口を開く。


「陛下!?」


 ヒマジンは驚きの声を上げる。


「なっ!?」


 アキックスは口を開く。


「禁呪!?」


 ナナシも口を開く。


「『ロンギヌスの槍』か!?」


 リリーは叫ぶ。


「エリシス! やり過ぎです!」





飛行(フライ)……くぅっ!」


 ドロテアは、飛行(フライ)の魔法を唱えて急降下し、エリシスの放った禁呪『荷電粒子光槍(ランチア・ロンギーニ)』の一撃を(かわ)すと、すれ違いざまにエリシスに向けて古代エルフ語の魔法を放つ。


Стань(スタン) камнем(カーミョ) ! Вечное(ベーチェノーイェ) проклятие(プロクェーチェ)!!」

(石となれ! 永遠(とこしえ)の呪い!!) 


 ドロテアの手の先に紫色の光を放つ魔法陣が現れると、魔法陣からエリシスに向けて紫色の光が伸びていく。







「外した!?」 


 エリシスは、ドロテアが自分の魔法を掠めながら避けて反撃してきた事に気付き、左側に動いて回避しようとするが、右の手首に当たってしまう。






 ドロテアは、ダークエルフの従者たちの後ろに片膝を着いて降り立つ。


 しかし、エリシスの魔法がドロテアの髪飾りを掠めたため髪飾りが砕け散り、留めてあったドロテアの銀髪が肩に広がっていく。


「陛下!」


「御無事ですか!?」


 ドロテアは、集まってくる従者たちを横目で一瞥しながら答える。


「心配無い」


 禁呪の威力を目の当たりにし、ドロテアの顔から笑みが消える。


 ドロテアは、片膝をついたままでエリシスを睨みながら呟く。


「あの女。あの赤い巻き毛。……思い出したぞ。大帝の情婦だった女魔導師か。不死者(アンデッド)になり、七百年生き永らえていたとは」





 エリシスは、ラインハルトの隣に降り立つ。


「陛下」


 エリシスはラインハルトに声を掛けると、乾いた音を立てながら手首から肘へと石化が進んで行く右腕を差し出す。


 ラインハルトは、差し出されたエリシスの右腕を無言のままサーベルで斬り落とした。


 斬り落とされたエリシスの右腕は塵となって消えていき、エリシスの肩から骨、筋肉、皮膚の順に右腕が再生されていく。


 ナナシは、エリシスを咎める。


「エリシス! 『ロンギヌスの槍』を使うとは! 飛行戦艦でも撃沈するつもりか!?」


 エリシスは、再生途中の自分の右腕を動かして再生の具合を確かめながら、ナナシに答える。


「あの女は、砲弾を弾くのよ? あれぐらいで良いのよ」


 

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