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第五百八話 襲撃、魔導王国エスペランサ(三)

 国際会議場に空襲警報が鳴り響き、各国の外交代表団は、貴族組の誘導に従って避難し始める。


 『妖魔襲撃』という情報を掴んだのは、北部同盟のみならず西方協商も同様であった。


 カスパニア公使から妖魔襲撃の報告を受け、カスパニア王太子カロカロは、ニヤけながら含み笑いを漏らす。


「とんだ失態だな。皇帝。世界各国の王たちが集うこの場所に妖魔の襲撃を受けるとは。くっくっくっ」


 レイドリックは尋ねる。


「殿下。我らも避難いたしましょう」


 カロカロは上機嫌に答える。


「うむ。ヴェネトとナヴァールにも教えてやれ。皆、我らも避難するぞ」


 カロカロが席を立つと三人の将軍達やカスパニア公使なども席を立ち、カロカロに続いて国際会議場を後にする。


 カスパニアをはじめとする西方協商各国の外交代表団も、北部同盟に続いて国際会議場から飛行場へ避難していく。





 国際会議場の中では整然と避難誘導が進んでいたが、口伝えに『妖魔襲撃』の報が広まっていく。


 中立国の代表たちも例外ではなかった。


 蜥蜴人(リザードマン)族長のダグワ・ドルジは、自治領主のアイゼンブルクから『妖魔襲撃』を聞くと怒りをあらわにして、槍を手にその場に立ち上がる。


「ぬぅぅぅぅうん! 厳粛なる話し合いの場を、暴力でかき乱すとは! かかる狼藉、まかりならん!」


 ダグワは、怒りの咆哮のごとく吠える。


「古来より『義を見てせざるは勇無きなり』という! 妖魔ごときに遅れを取る蜥蜴人(リザードマン)ではないわぁ! ・・・者共(ものども)、槍を持てぇ!」


「おおっ!」


 槍を手に憤るダグワと気勢を上げる蜥蜴人(リザードマン)たちに アイゼンブルクは、尋ねる。


「ぞ、族長、何をなさるおつもりか?」


「アイゼンブルク殿らは避難されよ! 蜥蜴人(リザードマン)ドルジ一族は、これより帝国軍に加勢致す! 者共(ものども)、つづけぇ!!」


「おおっ!」


 蜥蜴人(リザードマン)たちはドルジを先頭に国際会議場から出て行った。


 その様子を見ていたアナスタシアは、席から立ち上がると、獣人(ビーストマン)の仲間達に告げる。


「皆さん、私達も行きましょう!」


 バルドゥインは、アナスタシアに尋ねる。


「アナスタシア。・・・妖魔と帝国軍の戦場に行って、どうするつもりだ?」


「ダグワ族長は『義を見てせざるは勇無きなり』とおっしゃっておられました。その通りだと思います! 私達にもできることがあるはずです!」


 アナスタシアは、ダグワの言葉を引き合いに出して力説する。


「わかった! 行こう! 行くぞ、みんな!」 


「うむ!」


「やれやれ・・・」


 バルドゥインが席から立ち上がると、パンタロウとシャイニングも立ち上がる。


 アナスタシアたち四人も、蜥蜴人(リザードマン)たちの後を追う。







ー帝国軍総旗艦 ニーベルンゲン 艦橋


 甲板へ向かった帝国四魔将達と入れ違いにラインハルト夫妻が艦橋にやって来る。


 ラインハルトは、艦長のアルケットに尋ねる。


「艦長、なにが起きた?」


「陛下!」


 アルケットは、邪竜が現れてから現在までの経緯をラインハルトに報告する。


 ラインハルトはアルケットに尋ねる。


「艦を一回転させられるか?」


「やってできなくはありませんが、本艦の内装は皇宮のそれに近い造りです。艦内の被害は甚大なものになりますが・・・」


「判った。それでは、三番砲塔で、あの古代(エンシェント)(・ドラゴン)を狙い撃ちできるか?」


「それはできますが、至近距離で艦砲の砲弾が炸裂すると、本艦も無傷では済まなくなります」


「よし。砲弾から信管を抜け。三番砲塔で狙撃して爆発しない砲弾を当て、あの古代(エンシェント)(・ドラゴン)を艦の上から叩き落とせ」


「了解しました」





 展開した陸戦隊が甲板から撤退したのを見計らい、三番砲塔は、直前の二番砲塔の上に着座している邪竜ウエスト・ミンスターの漆黒の巨体にゆっくりと照準を合わせる。


 アルケットは号令を掛ける。


「撃てぇ!」


 ニーベルンゲンの三番砲塔の三連装砲は、轟音と共に砲口から発砲炎を噴き上げて至近距離から邪竜ウエスト・ミンスターを砲撃する。


 巨砲から撃ち出された三つの巨大な鋼鉄の塊は、邪竜ウエスト・ミンスターを直撃。


「グゥオォォオァアア!」


 発射された砲弾の一発が頭に、二発が身体に当たったウエスト・ミンスターは、苦悶の叫びを上げながら体のバランスを崩し、ニーベルンゲンの二番砲塔と甲板の上から、ずり落ちる。


 ウエスト・ミンスターは、甲板から落ちまいと艦舷に両前足の爪を立てるが、引っ掻き音を立てながら、ニーベルンゲンの上から地上目掛けて落下する。


 アルケットは、航法士官達に指示を出す。


「今だ! ニーベルンゲン、上昇!」


 高度を下げていたニーベルンゲンは、上昇し始める。


 ラインハルトは、アルケットとナナイに声を掛ける。


「艦長、よくやった。・・・ナナイ。私達も甲板へ行くぞ」


「ええ」


 ラインハルトとナナイは、甲板へと向かう。


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