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第四百九十九話 講和会議前日、列強の思惑

 ー翌日、夜。


 北部同盟に所属する列強の王たち、グレースのシャーロット女王とソユット帝国の皇帝シゲノブ一世は、腹心たちを伴い、帝都郊外にあるスベリエ王国の公使館に集まる。


 広い敷地の入り口に噴水をあしらえた石造りの堂々たる公使館は、苔むした外壁を蔦が覆っており、列強スベリエ王国が長年に渡って北方の雄として君臨してきた歴史を示しているかのようであった。


 王たちは、公使館二階の会議室に集まって顔を合わせる。


 アスカニア大陸北方諸国の武闘派国家からなる北部同盟を如実に表すかのように、スベリエのフェルディナント王、グレースのシャーロット女王、ソユット帝国の皇帝シゲノブ一世、三人とも軍服を着用し、帯剣していた。


 フェルディナントは話し始める。


「揃ったな。始めるとしよう。バレンシュテットの仲介による西方協商との講和会議が明日より開催される。北部同盟の基本方針について、三ヶ国で認識を合わせておこうと思う」


 シゲノブは、フェルディナントの方を向いて口を開く。


「異論はない」


 シャーロットも口を開く。


「私もだ」


 フェルディナントは、不敵な笑みを浮かべると二人に話し始める。 


「フッ・・・建前や回りくどいのは無しだ。本音でいこう。・・・我がスベリエは、カスパニアや西方協商と講和するつもりなど無い。奴らからの侵略を受け、ようやくこちら側の反撃準備が整ったところで、帝国からの、この講和会議の申し入れだ。講和会議など皇帝の顔を立てる建前として受けたに過ぎん。・・・西方協商など叩き潰してやる!!」


 フェルディナントは二人にそう告げると、はらわたが煮えくり返り、もう我慢ならないといった様子で拳を握った右手で机を叩く。


 シゲノブは、フェルディナンドの話しを聞いて目を細めると、口を開く。


「我がソユットも同感だ。アルビオン諸島の決戦でヴェネトは東方不敗を失い、航空戦力を著しく欠いており、南方大陸では我が方が制空権を押さえている。反撃に出るには絶好の機会だ。反撃準備が整った、このタイミングで講和など受けるつもりは無い」


 巨躯の豪傑二人が述べた持論を聞き、シャーロットも口を開く。


「皇帝ラインハルト陛下は、私の義理の父だ。無視する訳にはいかないので講和会議への参加は受けたが、我がグレースも西方協商と講和するつもりは無い。アルビオン諸島の決戦で、父の仇ブルグンドを討ち、ナヴァールの戦力を大きく削る事ができた。グレースの反撃はこれからだ」


 フェルディナントは、シゲノブもシャーロットも自分と同じ『講和を蹴る』考えであることに満足し、笑みを浮かべながら告げる。


「北部同盟の方針は決まりだな。『講和などしない』」


 シゲノブも続く。


「ああ」


 シャーロットも続く。


「そのとおりだ」


 フェルディナント、シゲノブ、シャーロットの三人は、互いの意思を確認するように頷く。





ー同日、夜。


 北部同盟のみならず、西方列強の王たちもカスパニア公使館に集まっていた。


 盟主カスパニア王国は、王太子カロカロと三人の将軍たちレイドリック、イナ・トモ、アルシエ・ベルサードが。


 ヴェネト共和国からは、議長のリューネ、有力商会長のアノーテ・デ・ザンテ。


 ナヴァール王国からは、ブルグンド二世が参集していた。


 西方協商の王たちは、公使館一階のホールに集まって会食しながら、講和会議への対応の協議を始める。


 カロカロは、参集者達に向けて話し始める。


「よく集まってくれた。講和会議の前に西方協商の方針を決めておこうと思う」


 ブルグンド二世は口を開く。


「良いわよ。決めましょう」


 リューネは口を開く。


「手早くね」


 カロカロは、語り始める。


「我らが西方協商は、アルビオン諸島の攻略失敗で少なからず損失を受けた。戦力の立て直しに少しでも時間が欲しい時に、帝国から講和会議の仲介を受けた。・・・講和会議の協議で時間を稼ぎつつ、戦力の立て直しを進める」


 ブルグンド二世は、オカマ口調で尋ねる。


「で、北部同盟と講和するの?」


 リューネも口を開く。


「損の無い取引にしてくれよ?」


 カロカロは断言する。


「講和はしないが、世界大戦は継続する」


 ブルグンド二世は再び尋ねる。


「あらヤダ。最初から講和する気が無いのに、帝国の仲介を受けたの?」


 カロカロは憮然として答える。


「皇帝直々の仲介を無視する訳にはいかないだろう。だから、戦力を立て直す時間稼ぎに利用させてもらう」


 リューネは皮肉を口にする。


「悪い奴だな」


 カロカロはリューネに言い返す。


「フン。守銭奴のお前に言われたくないな」


 カロカロ、リューネ、ブルグンド二世は、示し合わせた様に含み笑いを浮かべながら、会食を行う。




 世界大戦を戦う列強諸国には、それぞれの思惑があった。


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