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第四百九十七話 講和会議二日前 集結、中立国

ー帝都ハーヴェルベルク駅 十四番ホーム。


 十四番ホームに講和会議に参加する来賓を乗せた専用列車が到着する。すぐ隣の十五番ホームには、ヴェネト共和国の一行を乗せた専用列車が止まっていた。


 帝国のはるか北東部に国境を接するメオス王国と、それを挟んで向こう側に位置する二つの国の代表団を乗せた専用列車であった。


十三番ホームには、帝国北方からゴズフレズ王国の一行を乗せた専用列車が到着しており、十二番ホームには、帝国北西鉄道経由でホラント王国の一行が到着していた。


 エルフのベルナール王とドワーフのモロトフ王の二人は従者を連れて専用列車から十四番ホームに降り立つ。


 二人は十四番ホームから蒸気機関車と駅の構内を見渡すと、驚きのあまり目を見張る。


 モロトフは、初めて鉄道を知り、目を見開いて驚きを口にする。


「まさか蒸気の力で鉄の荷車を動かすとは! たくさんの人と荷物を一度に運べる! しかも馬車よりも速い! ・・・ドワーフの職人でも、こんな物は造れんぞ!」


 同じく初めて鉄道に乗ったベルナールであったが、引きつった顔で解説しはじめる。


「・・・モロトフ。これは『鉄道』というのです。エルフにも、こんな物は造れませんよ。帝国は、この『鉄道』を帝国領内に張り巡らし、百万の兵を動かせるようにしたそうです」


 モロトフは、自分の長い顎鬚(あごひげ)を撫でながら、感心したように呟く。


「ううむ。・・・ドワーフにも、エルフにも、造れない物を人間が造りあげるとはな」


 ベルナールは、青ざめた顔で答える。


「見たところ、帝国は我々の国よりも三百年から五百年は文明が進んでいるようですね。・・・あの革命戦役から、たった十八年ですよ? 十八年前、ヴァンガーハーフェンで私達が対峙した帝国軍を率いていた若者が皇帝に即位し、内戦で疲弊した帝国を十八年でこんな超大国にするとは・・・」


 モロトフがしたり顔で告げる。


「・・・十八年前のあの日。我らは帝国と戦わずにヴァンガーハーフェンから兵を引いた。・・・正解だったな」


 ベルナールもモロトフに賛同する。


「・・・そうですね。戦っていたら、我らは帝国に滅ぼされていたかもしれません」





 十八年前、革命戦役の際に革命政府は罪人たちを徴用した『烈兵団』をメオス王国に侵攻させた。


 メオス王国は、計画的に住民とメオス王国軍を撤退させて、王都エスタブリシュメントまで烈兵団を引き付け、エルフ、ドワーフ、メオス王国の三ヶ国からなる相互防衛条約『斧と弓の盟約』を発動。


 三ヶ国連合軍十万は、王都エスタブリシュメント郊外で烈兵団を包囲殲滅すると、国境の街ヴァンガーハーフェンまで進軍する。


 しかし、バレンシュテット本土へ攻め込もうとする三ヶ国連合軍の前に、ラインハルトたちとアキックス伯爵率いる帝国竜騎兵団が立ち塞がる。


 ベルナールとモロトフは、咆哮を上げる金鱗の竜王シュタインベルガーの雄姿を見て肝を潰し、国境を越えることはせず、斧と弓の盟約を果たした事を理由に兵を退いたのであった。


 エルフとドワーフが兵を引いた後、メオス王国軍三万が帝国竜騎兵団を攻撃するが、金鱗の竜王シュタインベルガーの力は圧倒的であり、帝国竜騎兵団による初撃を受けたメオス王国軍は壊滅。メオス王国軍を率いた将軍ナブは戦死し、壊走したのであった。


 


 

 二人がホームで語り合っていると、隣の車両からメオス王国のポクリオン王とガローニ将軍が降りてくる。


 ホームに二人の姿を見つけたポクリオンが話し掛ける。


「おぉ、ベルナール王にモロトフ王。お二方とも息災かな?」


「ポクリオン王」


 モロトフがポクリオンに答える。


「初めて帝都に来て、二人で驚いているところだ。・・・帝国は凄い」


 ポクリオンも驚きを隠せずに答える。


「余も驚いた。まさか、これほど繁栄しているとはな・・・」


 そう告げると、ポクリオンは感心したように鉄道のホームがいくつも並ぶ広い駅の構内を見回す。 


 ガローニが口を開く。


「迎えが来たようです。皆さま、参りましょう」


 世界大戦に参戦していない三つの中立国の王たちは、出迎えに来た皇宮警護軍(インペリアル・ガード)の女騎士たちに護衛されながら、馬車に乗って帝国政府が用意した宿へ向かって行く。


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