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第四百九十話 緊急会議とジカイラの冗談

--翌日。


 国際会議場の建設工事が順調に進められている中、皇帝ラインハルトの寝室にダークエルフの女王ドロテアが侵入した事件により、バレンシュテット帝国指導層は蜂の巣を突っ突いたような大騒ぎになる。


 帝国四魔将と初代ユニコーン小隊の面々、皇太子ジーク夫妻が皇宮の会議室に集まり、緊急会議が開かれる。


 会議が開催され、ラインハルトがダークエルフの女王ドロテアとの一部始終を参加者に説明すると、エリシスが強い口調で語り始める。


「陛下に艶仕掛けなんて無駄なことを! それより、ダークエルフは、一体、どうやって寝室に侵入したの!? 帝都と皇宮には何重にも防御結界が施してあるのよ!? あり得ない! あり得ないわ!!」


 リリーが続く。


「帝都と皇宮の結界塔が作る防御結界は、第十位階魔法でも破れませんし、魔神たちでさえ通れません。最上級不死者(アンデッド)の私でも、不死王(リッチー)のエリシスでも、『鍵呪文(キーワード)』を使わないとあの防御結界は通れません。・・・想像もつきませんね。まさか、禁呪を使用したとか? ・・・彼らは、一体、どうやって?」


 アキックスは口を開く。


「わからん。・・・何者かが防御結界の内側から召喚した可能性は?」


 ナナシは答える。


「・・・あり得ない。誰がダークエルフを防御結界の内側から召喚したというのだ? そもそも、奴らは魔法で召喚できる種族なのか??」


 ハリッシュは呟く。


「寝室のベッドを調べましたが、魔力痕跡はありませんでした。・・・『誰かがダークエルフを召喚した』という線は無理がありますね。召喚魔法や転移魔法、禁呪を使えば、何某かの魔力痕跡は残りますから」


 ヒマジンは呟く。


「・・・帝都と皇宮の防御結界のどこかに穴があるんじゃないのか?」


 エリシスは答える。


「帝国南部方面軍の死者の魔導師(エルダー・リッチ)達を動員して調べさせるわ。総点検が終わるまで、陛下達には、どこか安全な場所に移って頂くしか・・・」 


 ナナシは、ぼやく。


「まったく。陛下の寝室に賊の侵入を許したとは。・・・帝国始まって以来の失態だ」


 アキックスは答える。


「ニーベルンゲンで過ごして頂こう。・・・飛行戦艦で常に移動していれば、攻撃対象にはなりにくいし、警護もしやすい。あの船ならば陛下たちが暮らしても問題無いはずだ」

 




 緊急会議は長円の円卓を囲む形で行われたが、小一時間ほど議論しても結論は出ず、帝都と皇宮の防御結界に穴があるかどうかを死者の魔導師(エルダー・リッチ)達を動員して総点検することとなり、当面の間、ラインハルト一家は、帝国軍総旗艦ニーベルンゲンで過ごす事となった。




 緊急会議が終わった後も、帝国四魔将達は会議室の一角に集まって議論を続けていた。


 ラインハルト達は、議論を続ける帝国四魔将達と少し離れた席で小休止を取っていた。


 ハリッシュは、席に座ったままテーブルに両肘を着いて頭を抱え、ブツブツと呟きながら悩んでいた。


「・・・『鍵呪文(キーワード)』を使わずに結界の内側に侵入してくるなど、あり得ない。あり得ないことです。・・・いったい、どうやって」


 クリシュナに宥められながら、ハリッシュは悩み考え続ける。


「ダークエルフの女王は、なぜ、ラインハルトに艶仕掛けを? ・・・それなら害したほうが合理的なはず。既婚者であることも知っているはずです。・・・なぜ、艶仕掛けなんて、そんな非効率なことを? なぜ? なぜです? 何故そんな事を? ・・・判りません。うぅ~ん」


 ダークエルフの侵入方法と侵入した意図が判らずに悩んでいるハリッシュを他所に、ジカイラは吹き出すのを堪えつつラインハルトをからかう。


「ぷぷぷっ。しっかし、ラインハルト。お前って、学生時代から女にはモテて『追っ掛け』までいたが、まさかダークエルフの女王に夜這いを掛けられるまで女にモテるとはな。・・・くっくっくっ」


 ジカイラの冗談にナナイはムキになって答える。


「笑いごとじゃないわ!!」


 ヒナも不快感を顕にしてナナイに続く。


「そうよ! 夜這いじゃなくて、暗殺だったら、どうするの!?」


 ナナイとヒナは、既婚であるラインハルトに夜這いを掛けたドロテアに対する怒りを顕にする。


 ジカイラは、ムキになって咎めるナナイやヒナを他所に、品の無い冗談をラインハルトに向けて続ける。


「・・・しかも、ベッドで女王を()らなかったとか。・・・欲求不満の女王がお前に執着して、また夜這いを掛けて来るんじゃないのか?」


 ラインハルトは、苦笑いしながら尋ね返す。


「女王がまた来ると思うか?」


 ジカイラは、悪びれた素振りも見せず、笑いながら続ける。


「ああ。来るかもな。・・・また、ダークエルフの女王が夜這いに来たら、一発犯って、イカせてやれよ。そうすりゃ、お前も女王もスッキリして満足するだろ? あいつらも少しは大人しくなるんじゃないのか? 孕まされた女王がお前に本気で惚れ込んだりしてな。くっくっくっ」


 ジカイラの言葉に、机の上で頭を抱えていたハリッシュがハッとしてジカイラの方を向く。


(・・・孕む?)


 ジカイラは、ハリッシュが自分の方を見詰めている事に気付かず、苦笑いするラインハルトに向けて品の無い冗談を続ける。


「お前とダークエルフの女王の子供となりゃ、上級騎士(パラディン)の力を持った無敵のダークエルフの王子が産まれてくるだろ? 更に、王子は、お前に似た美形で絶倫の()()()()! ダークエルフの女達を次々に犯りまくって、ポンポンと子供を産ませるんじゃないのか? はーっはっは」


 ジカイラの冗談を聞いたハリッシュは席を立つと、呟きながらよろよろと歩いてジカイラの方へとやって来る。


「・・・『上級騎士(パラディン)の力を持った無敵のダークエルフ』。・・・『絶倫のヤリチンでポンポンと子供を産ませる』・・・」


 ハリッシュはジカイラの前に来ると、正面からジカイラの両肩を掴んで叫ぶ。

 

「貴方は天才です! ジカイラ!!」 


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