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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十八章 決戦、アルビオン諸島
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第四百七十話 グレース王国艦隊 vs ナヴァール王国艦隊

--アルビオン諸島 本島沖 ナヴァール王国艦隊


 ナヴァール王国の艦隊は、本島の沖に錨を降ろして停泊したまま、本島のスベリエ軍の沿岸砲台を砲撃していた。


 スベリエ軍が沿岸砲台に使用しているカルバリン砲はスベリエ・ガレオンに使用しているラピッドファイア砲より射程距離こそ長いものの威力に劣り、遠距離からナヴァール王国のガレオンに当てる事ができても、その装甲板を撃ち抜く事は出来なかった。


 反対にナヴァール王国艦隊が使用している大口径のキャノン砲は、射程距離に入る沿岸砲台を砲撃し、容赦無く破壊していた。


 ブルグンド王は、旗艦の船尾楼の屋上に出ると望遠鏡で本島の沿岸を眺め、砲撃の戦果と上陸軍部隊の戦況を確認する。


 沖の輸送艦から艀の浮き桟橋を通過して沿岸砲台が破壊された海岸へ上陸しているナヴァール軍とカスパニア軍、そして防衛するスベリエ軍が激突し、激しい戦闘を繰り広げていたが、沿岸砲台が破壊されていくスベリエ軍に対し、大口径の艦砲射撃の援護を受けているカスパニア・ナヴァール軍がジリジリと圧迫していた。


「ふむ。砲撃は順調だ。・・・だが、上陸部隊は随分と手こずっているようだな?」


 傍らの士官は、答える。


「はっ。本島を防衛しているスベリエ王国軍は、頑強な抵抗を見せており・・・」


「傭兵達も上陸させろ。予備兵力を全て投入するのだ」


「ははっ!!」


 ブルグンド王が傍らに控える士官に指示を出していると、沖の方角から霧が立ち込めてくる。


 ブルグンド王は怪訝な顔をする。


「・・・霧か」


 士官が尋ねる。


「陛下。天候が悪化してきたようです。如何なさいますか?」


 ブルグンド王は自信満々に答える。


「この冬の時期、霧が出るのはやむを得ない。このまま上陸戦を継続しろ。霧が出たところで、陸上の沿岸砲台は移動できん。砲撃の的であることは変わらないのだからな」


「はっ!!」







--スカパフロー沖の戦闘から四時間。アルビオン諸島沖 昼頃。


--グレース王国艦隊 旗艦HMSクィーン・シャーロット 


 乳白色の薄霧がぼんやりと立ち込め、マストに絡まるように漂う。


 船員たちは浮かび上がる影に注意しながら船を進めていく。


 シャーロットは、氷竜海に立ち込める冬の霧の中をグレース艦隊を率いて南下していた。


 厳しい冬の寒さに晒されながら、船尾楼の屋上に出て望遠鏡を覗き、海図で状況を確認する。


「海図では、そろそろアルビオン諸島本島のはずだ。迷っていないだろうな?」


 傍らの士官はシャーロットに答える。


「姫。本島は目と鼻の先ですぜ。冬の霧が出たからといって、自分の庭で迷う奴なんていませんって!」


 シャーロットは声を上げて笑う。


「ハハハ! 違いない! 氷竜海は我らの海だ!!」


 シャーロットが傍らの士官と話していると、立ち込めていた霧が晴れてきて針路上の視界が広がって来る。


 シャーロットは叫ぶ。


「霧が・・・、晴れるぞ!!」


 アルビオン本島へ向かうグレース艦隊の前に、本島沖で上陸戦を繰り広げるナヴァール艦隊とカスパニア輸送船団の姿が見えてくる。





 (はしけ)を鉄鎖で繋いで浮き桟橋とし、沖の輸送艦から軍勢を本島に上陸させているカスパニア輸送船。


 沖に錨を降ろして停泊しながら本島の沿岸砲台を砲撃しているナヴァール艦隊。





 シャーロットは、目の当たりにした戦況に目を見張り、大声で歓喜して叫ぶ。


「ハハハハハ! 戦闘の最中に錨を降ろして停泊している馬鹿どもが! 艦隊の安全は、移動し続ける事で確保されるのだぞ!」


 シャーロットは命令を発する。


「全艦、突撃! すり抜けながらブチかませぇ!」


「おおっ!!」


 グレース艦隊は、錨を降ろして停泊しているナヴァール艦隊に向けて突撃していく。






--ナヴァール王国艦隊 旗艦オルレアン 


 ブルグンド王は、船尾楼の屋上で指揮を執りながらホットワインを手に簡単な昼食を取っていた。


 グルヌイユ オン ペルシヤード(カエルのバター炒めに刻んだにんにくとパセリを乗せたもの)、鴨のコンフィ、アリコムートン(白インゲン豆とラム肉のラグー)の三皿をそれぞれ頬張りながらホットワインを口にする。


 火力的な優位からジリジリと戦線を押し進める自軍と口当たりの甘いホットワインに上機嫌であった。


 ブルグンド王は、手にしていたホットワインの杯を開けると、沖に立ち込めていた霧が晴れてくる。


「おぉ。 晴れて来たな。・・・んん?」




 晴れてきた霧の中から幽霊船の集団のようにグレース艦隊が現れ、自艦に迫り来る。


 ブルグンド王は、グレース艦隊を見て戦慄が体を突き抜ける。


 逃げ場を求める必死の小動物のような目で傍らの士官に告げる。


「グ、グレース艦隊!? 無敵艦隊(アルマダ)は何をしていた!? せ、制海権の確保はカロカロの仕事だろう!? ・・・錨を上げろ! 艦を出せ! 早く! 早くしろぉ!!!」


 突然、霧の中から現れたグレース艦隊に、士官も驚愕して言葉を返せずにいた。


 シャーロットが乗るグレース艦隊の純白の旗艦HMSクイーン・シャーロットは、ブルグンド王の乗るナヴァール艦隊旗艦オルレアンの艦尾に接近。至近距離でHMSクイーン・シャーロットの艦舷に並ぶ新型カロネード砲を一斉にオルレアンの船尾楼に向ける。


 ブルグンド王の目に、敵艦の船尾楼の屋上で純白の元帥服に身を包み、自分を睨み付けるシャーロットの姿が見え、ブルグンド王の顔が恐怖に凍り付く。


「ヒ、ヒィィィィイ!」


「我が父の仇! 撃てぇぇぇえ!」


 シャーロットの号令のもと、HMSクイーン・シャーロットの艦舷に並ぶ新型カロネード砲が一斉に砲炎を噴き、オルレアンの船尾楼ごと艦尾を撃ち砕く。


 大爆発と共に艦の後方、四分の一程の艦体が爆砕し、ナヴァール王国の艦隊旗艦オルレアンは轟沈する。


 ブルグンド王は即死であった。


 シャーロットは、轟沈するオルレアンを見下ろしながら呟く。


「お前達の行くヴァルハラは無いぞ。侵略者ども」


 グレース艦隊の他の艦も旗艦HMSクイーン・シャーロットと同様に、錨を降ろして沖に停泊していたナヴァール艦隊の艦尾に回り込み、至近距離から、すり抜け様に艦尾を撃ち抜いていく。



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