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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十七章 冬休み、二年目
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第四百五十話 西方協商と獣人兵団

-- カスパニア王国 王都セビーリャ 軍港


 カスパニア王国は、バレンシュテット帝国から遥か南西に位置する半島に位置しており、歴史のある古い軍港の埠頭の一角に、『西方協商』を形成する列強と呼ばれる王と代表達が集まっていた。


 カスパニア王国 王太子カロカロ、ヴェネト共和国 アノーテ・デ・ザンテ、ナヴァール王国 ブルグント王の三人である。


 軍港の沖合いには、無数のガレオンやキャラック、キャラベルなどの大型船が停泊していたが、三人は埠頭から洋上で組み立てられている『それ』を眺めていた。


 『それ』は、軍港の岸壁から沖合まで、延々と洋上に並べられて浮かんでいた。


 『それ』を見たブルグントは驚く。


「なんだ? これは??」


 カロカロは答える。


「これはアルビオン諸島攻略の切り札だ」


 アノーテは口を挟む。


「よく、こんな短期間でこれだけの数を揃えられたな」


 カロカロは、得意満面で口を開く。


「当然だ。これがカスパニアの力だ。前回の会議の後、カスパニアの奴隷を総動員して作らせた」


 アノーテは得意満面のカロカロに呆れる。


「・・・まったく。私が教えなければ、アルビオン諸島の砂浜にガレオンでそのまま突っ込むつもりだったのだろう? 呆れたものだ」


 ブルグントは尋ねる。


「よくこんなものを知っていたな?」


 アノーテが答える。


「空中都市イル・ラヴァーリで同じ物を目にしたからな」


 ブルグントは怪訝な顔で答える。


「ほう? 空中都市か・・・」


 カロカロは、意地の悪い笑みを浮かべながら、アノーテに嫌味を言う。


「・・・フン。お前は、喋っただけ。実際に物を作って用意したのは私だろう」


 カロカロは、隣の埠頭へ二人を連れて歩きながら口を開く。


「我がカスパニア無敵艦隊(アルマダ)がグレース本島を北回りで迂回してアルビオン諸島に突入し、制海権を確保する。ナヴァールの艦隊は上陸軍と『切り札』を乗せ、グレース本島を南回りで迂回してアルビオン諸島に上陸してくれ」


 ブルグントは答える。


「いいだろう」


 三人が隣の埠頭にたどり着くと、カロカロが口を開く。


「これも『切り札』だ」


 アノーテとブルグントの二人が怪訝な顔をする。


 アノーテは呟く。


「こいつらがか?」


 ブルグントも呟く。


「亜人ではないか」


 三人の前には、戦闘装備を整えている獣人(ビーストマン)達の姿があり、獣人(ビーストマン)達は、リーダーであろう兎人の少女から色々と指示を受けて作業をしていた。


 挿絵(By みてみん)


 兎人の少女がカロカロ達に気付き、カロカロの前にやって来て跪く。


「王太子殿下。この度は、かような機会を賜り、感謝しております」


 カロカロは答える。


「うむ。アナスタシア。見事、アルビオン諸島の敵軍を撃破して見せろ。獣人(ビーストマン)兵団の活躍に期待しておるぞ」


 アナスタシアと呼ばれた兎人の少女は答える。


「ははっ。お任せ下さい。必ずや成し遂げてみせます」


 カロカロ達三人がアナスタシアの元を立ち去ろうとすると、アナスタシアは呼び止める。


「王太子殿下! お待ち下さい!!」


 呼び止められたカロカロは、面倒臭そうに振り返る。


「なんだ?」


 アナスタシアは、跪いたまま顔を上げてカロカロに尋ねる。


「我らが敵軍を撃破した暁には、約束を果たして下さい」


 アノーテが小首を傾げる。


「約束??」


 ブルグントはカロカロに尋ねる。


「・・・カロカロ。こんな連中と何か約束したのか?」


 アナスタシアは、必死に訴える。


「『約束の地』を我等に御教示願いたく!!」


 カロカロは、作り笑顔を浮かべて答える。


「・・・そうだったな」


 カロカロは、アナスタシアにそう告げると他の二人を連れて埠頭を後にする。





 カロカロ達三人が立ち去ると、獣人(ビーストマン)達はアナスタシアに尋ねる。


「アナスタシア。今更だが、あいつらを信用するのか?」


 アナスタシアは、静かに答える。


「・・・信じるしかありません」


 他の獣人(ビーストマン)は尋ねる。


「人間ども、約束を守る気はあるのかよ?」


 アナスタシアは、静かに答える。


「・・・守ってもらいましょう」


 別の獣人(ビーストマン)は告げる。


「アナスタシアが『信じる』というからオレ達も信じる。だが、人間には注意しろよ」


 アナスタシアは、決意を込めて答える。


「判っています。約束を果たした暁には、必ず、遥か北にあるという獣人(ビーストマン)と人間が一緒に暮らせる『約束の地』。王太子殿下が知っているという、その『約束の地』を教えて貰いましょう」


 取り巻く獣人(ビーストマン)達は、アナスタシアの言葉に頷く。





 カロカロ、アノーテ、ブルグントの三人は、埠頭から送迎用の馬車へ向かって歩いていた。


 アノーテは口を開く。


「あの兎人の娘。なかなか可愛い顔をしているではないか。獣人達の首領なのか?」


 カロカロは答える。


「あの娘は祭司(ドルイド)だ。強力な力を持っている。あいつらの『聖女』らしい」


 ブルグントは下卑た笑みを浮かべながら尋ねる。


「そうか。・・・で、()らないのか?」


 カロカロは呆れたように答える。


「『聖女』は純潔を失うと、その力も失うらしい。・・・私はカスパニアの王太子だぞ? 女には不自由していない。それに、私に『(けもの)(メス)』と情を交わす趣味は無い」


 ブルグントは含み笑いを漏らす。


「クックックッ。『(けもの)(メス)』か。違いない」




 カスパニアは、アルビオン諸島での北部同盟との決戦に際し、数多くの傭兵団を雇い入れていたが、南方大陸から獣人(ビーストマン)達で構成された『獣人(ビーストマン)兵団』を連れて来ていた。


 

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