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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十七章 冬休み、二年目
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第四百四十一話 アレク達の冬休み、二年目

ーーバレンシュテット帝国 本土 士官学校


 アレク達は、士官学校の寮に帰ってきた。


 折しも士官学校は冬休みの時期に入り、生徒達の多くが帰省し始めていた。


 小隊の仲間達は寮の食堂に集まり始める。


 アレクは口を開く。


「久しぶりに帰ってきたなぁ」


 アルは答える。


「ああ。遠征だったからな」


 言葉を交わしたアレクとアルの二人がそれぞれソファーに座ると、自室に荷物を置いて部屋着に着替えたナタリーとルイーゼが食堂にやって来る。


 ナタリーは口を開く。


「誰もいなかったから、建物が冷え切ってるみたい。暖房を点けたけど・・・寒い」


 そこまで口にすると、ナタリーはアルの膝の上に乗って座る。


 小柄なナタリーは、筋骨隆々としたアルの懐にすっぽりと納まると、甘えるような笑顔を浮かべながらアルの顔を見上げて告げる。 


「えへへ~。アルの膝の上、温かい」


 ルイーゼもアルに甘えるナタリーを見て、真似をしてアレクの膝の上に乗って甘える。


「私も!」


「ルイーゼ!?」


 ルイーゼの柔らかい感触に、アレクは思わずニヤける。


 膝の上に座ったルイーゼは更にアレクにキスする。


「んっ・・・」


 二人の熱愛ぶりを目の当たりにしたアルは、照れたように呟く。


「四人でWデートした時の事を思い出すよ」


 アレクは答える。


「キャスパーシティだったな」


 極左テロリストのアクエリアス・ナトが率いるトラキア解放戦線討伐のために教導大隊が訪れたキャスパーシティで、アレクとルイーゼ、アルとナタリーの四人でピンク色の照明が灯る少しいかがわしい雰囲気のお店に行き、それぞれ睦あった事も、今となっては良い思い出となっていた。


 ナディアとエルザは、部屋に荷物を置くと食堂にやって来て、膝の上でルイーゼを抱いてキスしているアレクの姿を見つける。


「ああっ!!」


 ナディアはすぐにアレクの隣に座ると、その右腕をとって自分の両腕を絡め、アレクに身体を預けるように寄せて猫撫で声で甘え始める。


「アレク。寒いなら私が温めてあげるわ。・・・ねぇ」


 エルザも負けじとナディアの反対側に座ってその左腕をとると、アレクに身体を預けるように寄せる。


「アレクは、エルザちゃんが好きなのよねぇ~」


 ルイーゼは、ナディアとエルザ、二人の露骨な横やりに怒る。


「ちょっと! 二人とも!!」


 ナディアは、ルイーゼに言い返す。


「隣に座るくらい良いじゃない。膝の上で抱っこされるのは、『正妻様』の特権なんでしょ?」


 エルザも便乗して反論する。


「そうよ! そうよ! 自分だけ膝の上の特等席に居るのに、隣に居るくらい良いじゃない!」


 アレクは、女三人に押しくらまんじゅうのように押し込めれて(うめ)く。


「あ、暑い。苦しい・・・」


 トゥルムとドミトリーも部屋に荷物を置くと食堂にやって来て、アレク達の姿を見て呆れる。


 トゥルムは、苦言を呈する。


「隊長も、お前達も・・・。何も白昼堂々、明るい内から乳繰り合わんでも良いではないか」


 ドミトリーも口を開く。


「うむ。皆、乳繰り合っている場合では無いぞ。拙僧達は、上級職に転職(クラスチェンジ)せねばならないのだ。冬休み期間中も士官学校の事務方が休みでなければ良いのだが・・・」


 アルは答える。


「冬休み中でも補給処や図書館は空いているんだから、事務所も開いているんじゃないか?」


 アレクは口を開く。


「皆で行ってみよう」


 アレク達は、寮から事務所へと向かう。






 アレク達が士官学校の事務所へ向かっている道中に補給処に通り掛かると、補給処の前に人だかりが出来ていた。


「なんだぁ? 冬休みだってのに・・・」


 アルは人混みの中を覗き込むと、補給処の片隅で一組の男女と貴族組の集団が対峙していた。


 ミネルバとランスロット、キャスパー・ヨーイチ三世とその取り巻きの者達であった。


 アルは、アレクに告げる。


「アレク! ミネルバちゃんだ!!」


 アレクもアルに続いて人混みの中を覗き込む。


「あいつ! また、何か、やらかしてるのか!?」


 アル、アレクに続いて、小隊の仲間達も人混みをかき分けて中を覗き込む。


 エルザは、人混みをかき分けながら呟く。


「どれどれ~」 




 アレク達に人混みの中の状況が見えてくる。


 困惑した顔で立つミネルバ。


 その隣で身構えるランスロット。


 真っ赤なバラの花束を手にミネルバの前に跪くキャスパー。


 その後ろに集まる貴族組の取り巻き達。


 跪くキャスパーは、ミネルバに両手で真っ赤なバラの花束を捧げながら告白する。


「ああ、見目麗しいミネルバ・ヘーゲル嬢。士官学校に咲く一輪の可憐な華。我が愛しの姫君よ。どうか、この私、キャスパー・ヨーイチ三世と交際を。卒業後は、我がヨーイチ男爵家の妃に迎えたく・・・」


「あの・・・、す、すご~く、困るんですけど・・・」


 ミネルバは、キャスパーに対する生理的嫌悪感が露骨に顔に出て美しい顔が引きつり、二歩、三歩と後退(あとずさ)る。


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