表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十六章 氷竜海の海賊姫
438/543

第四百二十七話 帝国の皇太子vs王国第一王女

 シャーロットからの一騎打ちの申し入れをジークは鼻で笑う。


「フッ・・・。良いだろう。空から帝国海軍(ライヒス・マリーネ)の演習を眺めているだけで、退屈していたところだ」


 アストリッドは、ジークの言葉を聞いた諫める。


「いけません! ジーク様! 帝国を担う御身が軽々しく一騎打ちなど!!」


 ジークは優しくアストリッドに答える。


「アストリッド。私が負けると思うか?」


「いえ。そのようなことは・・・」


「其方は身重だ。部屋に戻って休むと良い。・・・ヒマジン伯爵。アストリッドを連れて下がれ」


「判りました。 ・・・行くぞ。アストリッド」


「ジーク様!!」


 ヒマジンは、ジークの身を案じるアストリッドを連れて謁見の間を後にする。




 ジークは、ジークの身を案じて心配そうなアストリッドとヒマジンを見送ると、衛兵に指示を出す。


「衛兵。彼女の手枷を外せ。それと剣を」


「ハッ!」


 衛兵は、ジークから鍵を受け取るとシャーロットの手枷を外して剣を手渡す。


「私は・・・それでよい」


 ジークが指示したものは、木製の小太刀であった。


 シャーロットは両手で剣を構え、ジークは小太刀を右手に持って、謁見の間の中央で互いに構える。


 シャーロットはジークに告げる。


「私が勝ったら、私と部下を釈放しろ! いいな!?」


 ジークは答える。


「良いだろう。・・・私が勝ったら、どうする?」 


 シャーロットは答える。


「私を犯すなり、殺すなり、好きにしろ!」


 ジークは苦笑いする。


「負けても泣くなよ」




 シャーロットは、剣を構えて対峙しながらジークを観察しながら考える。


 流れるような金髪とエメラルドの澄んだ優しい瞳をした、神々が造り上げたような整った顔立ちの美男子。


 皇太子の礼装の胸元や袖口から垣間見える、騎士として鍛錬を重ねたであろう絞られた筋肉。


 シャーロットとは頭一つほど違う、見上げる長身。


 先だって試合したスベリエ王国の王太子アルムフェルトとは、全く纏っている雰囲気が違う。


 いくどもの実戦を戦い抜いたであろう隙の無い自然体の構え。 


 ジークが耳にした噂どおりの英雄だということは直ぐに判った。




 シャーロットは、自然とジークが構えている木製の小太刀に目が向かう。


(木製の小太刀だと!? 馬鹿にして!!)


「ハアァァッ!!」


 気合いの叫びと共にシャーロットは、ジークに斬り掛かる。


 右上からの袈裟斬り、左から右へ水平に払い、右から左上へと斬撃を放つ。


 ジークは最初の一撃を軽くステップを踏んで(かわ)し、次の払いを木立で受け流し、再び斬撃を(かわ)す。




 剣戟を続けながらジークの側もシャーロットを観察していた。


 上級騎士(パラディン)であるジークには見切りスキルがあり、シャーロットの攻撃はコマ送りのようにゆっくりとしたものに見える。


(・・・なかなかに鋭い)


(多少は、実戦経験を積んでいると見える)




 二人は小一時間ほど剣戟を繰り広げるが、近接戦最強の上級職である上級騎士(パラディン)のジークと中堅職である騎士のシャーロットでは格が違っていた。


 シャーロットはいくども斬撃を繰り出したが、ジークはステップを踏んで避けたり小太刀で受け流したりして、シャーロットの剣はジークにかすりさえしなかった。


 息が上がってきたシャーロットは、意を決して勝負に出る。


 ジークの胸元を狙い突きを放つ。


 ジークは、半身になってステップを踏みシャーロットの剣の軌道から体軸を避けると、小太刀でシャーロットの剣を受け流して利き腕の外側に回り込み、反射的に斬り返しを放つ。


 突きを放ち、延ばしきったシャーロットの両腕の上を這うようにジークの斬り返しの小太刀が迫る。


(なっ!?)


 反射的にジークが放ってきた斬り返しに、シャーロットは驚愕して目を見開く。


 上級騎士(パラディン)の剣技、受け流しと斬り返しの組み合わせ技であった。



 


 ジークは、シャーロットを観察しながら剣戟を続けていた。


 格下の相手との剣戟であり、右手に持つ小太刀と体術でシャーロットを軽くあしらっていた。


 しかし、シャーロットが繰り出してきた想定外の鋭い突きに、思わず反射的に受け流しから斬り返しとを連続でやってしまう。


 このまま撃ち込めば、小太刀はシャーロットの首、もしくは顔に直撃する。


「・・・チッ!」


 短く舌打ちしたジークは、慌てて小太刀を引き戻すと、小太刀を握る右手でシャーロットの鳩尾(みぞおち)を突く。





「カハッ!?」


 鳩尾(みぞおち)に一撃を受けたシャーロットは息を吐き出し、そのまま失神する。


 ジークは、失神してその場に崩れ落ちるシャーロットの身体を抱き抱えるとその顔を覗き込む。


(まったく。とんでもないヤンチャ王女だ)


(・・・しかし、格下相手の剣戟に斬り返しを使ってしまうとは)


(・・・我ながら大人気(おとなげ)無い)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ