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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十五章 狂乱の道化師
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第四百十五話 教導大隊vs邪神ロロネー(二)

 トゥルムは、自分の腹部に食い込んだロロネーの(ハーフ・)斧槍(ハルバード)を引き抜くと、傷の具合を確かめる。


(・・・出血しているが、傷は浅い。だが、手当無しで長時間は戦えまい)


 トゥルムが再び三叉槍(トライデント)を構えると、起き上がったドミトリーはトゥルムに駆け寄り、トゥルムの腹部に両手を向けて回復魔法を掛ける。


「トゥルム! 大丈夫か!? 魔法を掛けるぞ! ・・・治癒(ヒール)!」


 トゥルムの傷口は塞がり、出血は止まる。


「すまない」


 回復魔法を掛けたドミトリーが拳を構えてトゥルムの隣に並び、両手剣を構えたエルザもトゥルムの隣に並ぶ。


 ナディアは三人の後ろで身構える。


 戦闘態勢を取った四人をロロネーがあざ笑う。


「アヒャヒャヒャヒャ! 雑魚が群れようが、無駄な事だ!」


「ウォオオオオ!!」


 トゥルムは雄叫びを上げながら踏み込むと、一気にロロネーとの間合いを詰め、鋭い三叉槍(トライデント)の突きを放つ。


「ヒャッハーーー!!」


 ロロネーは高く飛び上がってトゥルムの三叉槍(トライデント)の突きを躱すと、右手に持った(ハーフ・)斧槍(ハルバード)を振り下ろす。


 ロロネーの(ハーフ・)斧槍(ハルバード)がトゥルムの鱗鎧(スケール・メイル)の肩当を砕き、肩口に食い込む。


「グウァアァァ!!」


 ドミトリーは、樽のような身体で軽快な動きを見せ、トゥルムの尾から背中へと駆け上がり、空中に飛び上がったロロネーに向かって飛び蹴りを放つ。


「そりゃああああ!!」


 一瞬、ロロネーの胴体にドミトリーの飛び蹴りが炸裂したかのように見えた。


「おぉっ!? ・・・ナ~ンチャッテ!」


 次の瞬間、ロロネーは、左腕の肘と左の膝で飛び蹴りを放つドミトリーの右脚を挟むように打撃する。


 ドミトリーの右脚があらぬ方向へと曲がり、ドミトリーは絶叫しながら両手で右足を抑えて落下する。


「ドワーフ! 脚が折れたな?」


「オァアアアーー!?」


 ロロネーは着地すると、折れた脚を抑えながら地面に落ちたドミトリーをあざ笑う。


「アヒャヒャヒャヒャ!!」


 エルザは、両手剣を振り上げて着地したロロネーに大上段から斬り掛かる。


「おんどりゃあああ!!」 


 ロロネーは、エルザの両手剣の斬撃を身を反らして躱す。


 エルザは、両手剣を振り下ろした勢いに乗って身を翻すと、ロロネーの頭部を狙って、後ろ回し蹴りを放つ。


「おりゃあああ!!」


 ロロネーは、身体を捻りながら屈んでエルザの後ろ回し蹴りを避けると、地面すれすれの回し蹴りを放って、後ろ回し蹴りを放つエルザの軸足を払う。


「って、・・・えっ!?」


 ロロネーに軸足を払われたエルザは、転倒して背中を打つ。


「きゃん!!」


「アヒャヒャヒャヒャ!!」


 ナディアは前に出て、転倒したエルザを背に庇うように召喚魔法を唱える。


戦乙女の(ヴァルキリーズ)戦槍(ジャベリン)!!」


 ナディアの前に三つの光の玉が召喚され、それらは光の矢となってロロネーに向かって飛んで行く。


 ロロネーの道化服に薄い緑色の光を放つ無数の東洋文字が浮かび上がると、ロロネーの周囲に球状の魔力の防壁が現れてナディアの魔法を弾き、三つの光の矢は、あらぬ方向へと飛んで行く。


 ナディアは魔法が無効化され驚いて目を見開く。

 

「そんなことって!?」 


「アヒャヒャヒャヒャ!!」




 トゥルムは、出血している左肩の傷をそのままに、歯を食いしばりながら右腕一本で三叉槍(トライデント)を構えてロロネーに対峙する。


「ぐぅうう・・・」


 ロロネーは、トゥルムの姿を見て感心する。


「ほう? あの一撃を受けて、まだ立ち上がるか? 蜥蜴人(リザードマン)


 ロロネーは右腕で肩に(ハーフ・)斧槍(ハルバード)を担ぐと、掌を上になるように左手をトゥルムに向けて伸ばしてポーズを取りながら、トゥルムに告げる。


「見上げた意気だ。蜥蜴人(リザードマン)。・・・その意気に免じて、そこの女二人を神である我に捧げるなら、お前は見逃してやる」


 トゥルムは、ロロネーを睨みながら答える。


「断る!」


 ロロネーは、続ける。


「・・・お前が命懸けで女達を守ったところで、そこのエルフと獣人(ビーストマン)の女は蜥蜴人(リザードマン)である、お前の仔は(はら)めんのだぞ?」

 

 ロロネーからの悪魔の囁きに、トゥルムは怒りの咆哮の如く答える。


「ふざけるな! 我が名はトゥルム・ドルジ! 戦士の一族だ! 自らの命を惜しんで、仲間の女を敵に差し出し、命乞いをするとでも思ったかぁ!」


「ならば、死ね。蜥蜴人(リザードマン)


 ロロネーは、凶悪な笑みを満面に浮かべながら、(ハーフ・)斧槍(ハルバード)を振り上げる。




 その瞬間、二本の投げナイフがロロネーの元に飛んで来る。


 ロロネーは、(ハーフ・)斧槍(ハルバード)で飛んで来たナイフを撃ち落とすと、ナイフが飛んで来た方向に目を向ける。


 ロロネーに向けてナイフを投げたのは、アルであった。


 アルは、小隊の仲間達の元に駆け寄ると仲間に向けて軽口を叩く。


「待たせたな! 『真打ち登場』ってヤツさ!」

 

 トゥルム、ドミトリー、ナディア、エルザは、叫ぶ。


「アル!!」


 アルは、仲間達の前に出てロロネーと対峙すると、斧槍(ハルバード)を大きく二回振り回して正眼に構え名乗りを上げる。


「我こそは『黒い剣士』こと帝国無宿人ジカイラが一子、アルフォンス・オブストラクト・ジカイラ・ジュニア!! いざ!!」


 ロロネーは、目を細めてアルを睨むと高笑いする。


「アヒャヒャヒャヒャ! 面白れぇぞ、クソガキが! 遊んでやらぁ!」


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