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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十五章 狂乱の道化師
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第四百十二話 邪神降臨

--夕刻


 女士官は邪神ロロネーに乱暴され、石の床の上に横たわり呻き声を上げる。


「ううぅ・・・」


 ロロネーは、仁王立ちしながら動かなくなった女士官を見下ろしながら呟く。


「すっかり動かなくなったな。・・・コイツにも飽きたし。外に出るか」


 ロロネーは伸ばしていた触手を身体の中にしまうと、地下室の天井を見上げて吠える。


「オオオオオオォォーー!!」


 ロロネーの咆哮に呼応するように机の上のパズル・ボックスが輝き出し、そこから伸びた光の柱が天井を照らし貫いていく。




 アレク達は、半壊した総督府の中で総督を捜索していた。


 突如、地震が起きて総督府の建物が大きく揺れ始める。


 ルイーゼは口を開く。


「・・・何!? 揺れてる?」


 天井からパラパラと瓦礫の破片が落ちてくる。


 アレクは叫ぶ。


「地震だ! 総員、退避! 急いで建物から出ろ!」





 アンナは口を開く。


「えっ!? 揺れてる??」


 ルドルフは号令を掛ける。


「崩れるぞ! 総員、退避! 急げ!」


 アレク達三個小隊が総督府の建物から外に出ると、地震は更に大きくなる。


 アレクは叫ぶ。


「みんな、総督府から離れろ! 崩れるぞ!!」


 アレク達三個小隊は、総督府の敷地からジカイラ達がいる広場まで走って行くと、総督府の方向を振り向く。


 アルは呟く。


「何だ?」


 ナタリーはアルに答える。


「ただの地震じゃない?」


 トゥルムも呟く。


「あの光の柱・・・」


 ドミトリーは呟く。


「一体、何が起きたというのだ?」




 アレク達の目の前に信じがたい光景が現れる。


 轟音と共に、地下から総督府の中心を貫く光の柱が現れ、上空の雪雲を貫いて一直線に天空まで立ち昇っていく。


 雪雲は、光の柱を避けるようにドーナツ状に晴れていく。


 光の柱はどんどん大きく太くなり、総督府の建物と、建物に頭を突っ込んだストーンゴーレムを巻き込んで瓦礫と共に上空へと吹き飛ばし、粉々に粉砕して分解していく。


 ジカイラは、光の柱を眺めながらヒナに話し掛ける。


「うおおっ!? あのストーンゴーレムがバラバラに・・・。ヒナ。あの光、ヤバいヤツだろ?」


 ヒナは、緊張で顔を強張らせながら光の柱を睨む。


「・・・嫌な予感がする」


 やがて光の柱は細くなると、上空に立ち込めていた雪雲と総督府の建物は消えて無くなり、総督府の跡地には地下室まで続く大きな穴が開いていた。


 アルは、細くなった光の柱の空中の一点を指差す。


「なんだ? あれ?」


 アレクは、アルに答える。


「・・・道化師?」


 それは光の柱の中を地下室から飛び上がり、地上から三十メートルほどの高さで空中に浮かぶロロネーであった。


 ロロネーは、右手に(ハーフ・)斧槍(ハルバード)を持ち、左手には金色に輝くパズル・ボックスを持ったまま、空中に浮いていた。


 ロロネーは、口を開く。


「さて。現世の者達へ挨拶だ」


 ロロネーは左手に持つパズル・ボックスを目の高さに掲げると、再び咆哮を上げる。


「ウオオオオオオォォーー!」


 ロロネーの咆哮にパズル・ボックスが共鳴し、強大な魔力の衝撃波を放つ。





 強大な魔力の衝撃波は、土星の環のような同心円状の形状をしており、空中で波紋のように水平に広がっていく。


 放たれた魔力の衝撃波は極めて強力であり、アスカニア大陸が存在する世界、全ての魔力を認識できる者達が、放たれたその邪悪な魔力の波動を感じとるものであった。


 


 ロロネーの近くにいた教導大隊の魔力を認識できる者達は、例外なく全員その邪悪な魔力の波動の直撃を受ける。


 ジカイラの傍らにいたヒナは、全身に冷や汗が溢れ出して鳥肌が立ち、顔面蒼白でその場にうずくまる。


 ジカイラは、うずくまったヒナを気遣う。


「ヒナ? おい!? 大丈夫か?」


 ヒナは、見上げるように光の柱を睨む。


「なんて邪悪な・・・。強大な魔力・・・」


 アレク達も邪悪な魔力の波動の影響を受けていた。


 ナディアは、肺の中の空気を吐き出すように大きく咳き込むと、崩れ落ちるようにその場にガックリと両膝を着く。


「クハッ! ハッ!」


 エルザが、いきなり両膝を着いたナディアに驚く。


「ちょっと! ナディア!?」


 ナディアは、苦悶の表情を浮かべながらエルザに答える。


「・・・心臓を鷲掴みされたみたい」


 ドミトリーも心臓発作を起こしたようにうずくまる。


「ぐうっ・・・!」


 トゥルムはドミトリーに駆け寄る。


「大丈夫か!?」


 ドミトリーも全身に冷や汗を吹き出させながら答える。


「ああ。・・・何というか。・・・恨み、憎しみというより『怨念』の波動というべきか」


 トゥルムは尋ねる。


「『怨念の波動』?」


 ドミトリーも光の柱を睨みながら答える。


「そうだ。・・・決して心地良いものではない。邪悪な意思を感じる波動だ。この世の全てを恨み憎んでいる・・・」


 アンナも顔面蒼白で全身に冷や汗を噴き出させ、力が抜けた様にその場にへたり込む。


 ルドルフは、へたり込むアンナの元に駆け寄る。


「アンナ!?」


 アンナは、ルドルフに抱き起こされながら呟く。


「何なの? ・・・激しい敵意と憎悪。・・・まるで地獄の瘴気に当てられたみたい」


 もっとも大きく波動の影響を受けたのは、両親から優れた魔法の才能を受け継いだナタリーであった。


「きゃあッ!?」


 短い悲鳴と共にナタリーは気を失って、その場に崩れ落ちる。


 アルは、慌ててナタリーを抱き抱える。


「ナタリー!? ナタリー! しっかりしろ!?」


「ううぅ・・・」


 ナタリーは、アルの腕の中で苦悶の表情を浮かべる。


 ルイーゼは周囲を見回すと、ロロネーの魔力の波動によって教導大隊の魔法を扱える職の者達は、一斉に倒れ、或いはうずくまっていた。


 ルイーゼは、アレクに告げる。


「アレク! みんなが!?」


 アレクは、苦々しく告げる。


「くそッ! 何なんだ! あれは!?」





 やがて光の柱が消え去ると、上空に浮かんでいたロロネーは、パズル・ボックスをズボンのポケットに仕舞い、ゆっくりと総督府の正門跡に降り立つ。


 ロロネーは、正門跡から広場にいる教導大隊の前に歩み出て告げる。


「我は人が造りし神ロロネー。・・・神の前にひれ伏せ。人間ども!」


 ジカイラは、警戒しながら斧槍(ハルバード)を構えてロロネーに対峙する。


「『神』・・・だと!?」


 ジカイラは、緑色の道化服を着たロロネーの姿を正視する。


(・・・!? まさか!?)


 ジカイラは、ロロネーの姿形に見覚えがあった。


 オカッパ頭、瓶底眼鏡、出っ歯でネズミのような顔をした神経質そうな小男。


 ジカイラは、ロロネーに尋ねる。


「・・・お前、キャスパーか!? 道化服なんて着やがって! お似合いだが、遂に頭までイカれやがったか!」



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