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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十五章 狂乱の道化師
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第三百九十七話 夕食のひと時(一)

 ルドルフから報告を受けたジカイラは、集落へ教導大隊を進軍させる。


 教導大隊が集落に到着する頃には陽は傾き始め、アレクとフレデリクが集落に到着したジカイラ達を出迎える。


 ジカイラは口を開く。


「お前達、無事か? ご苦労だったな」


 アレクは答える。


蛙人(トードマン)を撃退し、集落は制圧しました。無傷とはいきませんでしたが・・・」


 ジカイラはルドルフから報告を受けていたが、言葉を濁したアレクの様子から、ジカイラは三小隊の状況を察する。


「お前達は良くやった。じきに義勇軍も来る。大隊を郊外に移動させ、今夜はここで夜営しよう」


「判りました」


 アレク達は自分の小隊へと戻ると、乗って来た馬車を集落の郊外に移動させ、夜営の準備に取り掛かる。





 アレク達は手慣れた様子で手早く野営の準備を済ませると夕食を始める。


 アレクやアル達、ユニコーン小隊の面々が夕食の席に着くと、エルザは大皿に盛った特大オムレツを手に食卓にやってくる。


 エルザは、食卓に置いた料理を前にアレクに得意気に話す。


「ジャ~ン! エルザちゃん特製オムレツでぇ~す!」


 アルは、得意気なエルザをからかう。


「お前、料理なんかしてたのか? 珍しい」


 からかわれたエルザはムキになって答える。


「失礼ね! アレクが落ち込んでるみたいだから、栄養を付けて、元気を取り戻さないと!」


 アルは、特製オムレツを指差しながら告げる。


「それにしても、コレはデカ過ぎじゃね?」


 エルザは、したり顔で解説する。


「そんな事無いわよ~。ちゃ~んと下半身まで栄養が行き渡るには、これくらいないとね!」


 アルは呆れる。


「そっちの心配かよ!?」


「なによ~! アレクが落ち込んだままで、下半身までフニャフニャになったら、第三夫人として困るじゃない!」


 エルザの解説を聞いた小隊の仲間達が呆れていると、エルザはオムレツをスプーンに取り、アレクに食べさせようと口元へと運ぶ。


「はい。アレク。ア~ン」


「ア~ン」


 アレクは、エルザが作った特製オムレツを食べる。


 エルザが作ったオムレツは、中身が程よく半熟で、ほんのりと甘く味付けしてあり、美味しかった。


 アレクは、エルザが作ったオムレツを褒める。


「エルザ、美味しいよ」


「でしょ? 美味しいでしょ~?」


 褒められたエルザは、満面の笑顔でアレクの隣に座ると、自分でもオムレツを一口食べる。


 エルザは右手にスプーンを持ち、左手を自分の頬に当てて満面の笑みを浮かべながら呟く。


「ん~、美味しい!」


 エルザがオムレツを頬張っていると、近くの民家の影からジッとアレク達の食事風景を見詰めている人影に気付く。


 人影は、エルザが昼間、蛙人(トードマン)との戦闘で助けた幼い女の子であった。


 女の子は物欲しそうな顔で右手の指先を咥え、ジッとアレク達の食事風景を見詰めていた。


 エルザは、女の子に話し掛ける。


「どうしたの? お腹、空いてるの?」


 エルザからの問いに女の子は無言で頷く。


「お姉ちゃんのところにおいで」


 エルザに招かれた女の子がエルザの傍らまで歩いて来ると、エルザは女の子を膝の上に乗せ、アレクに食べさせたのと同じように、スプーンで女の子にオムレツを食べさせる。


「はい、ア~ン」


「ア~ン」


 エルザは、オムレツを口に頬張る女の子に尋ねる。


「どう? お姉ちゃんのオムレツ、美味しいでしょ?」


「うん!!」


 女の子は満面の笑みで答える。


 エルザは、持っていたスプーンを女の子に持たせる。


「ここに座って。・・・さぁ、たくさん食べて良いのよ~」


 エルザに促され、女の子は夢中でオムレツや食卓の上のパンを食べ始める。


 エルザは、小隊の食卓で女の子に食事させて良かったのかと仲間達の顔色を伺うが、微笑ましい光景にアレク達は皆、微笑んで見守っていた。


 アルは、アレクに囁く。


「意外だな。・・・エルザって、子供の面倒見が良いんだ」


 アルの言葉にアレクも同意する。


「うん。俺も少し驚いた」


 トゥルムはアレクに語り掛ける。


「隊長。エルザは子供の世話をするのが上手いぞ。以前、ゴズフレズで赤子を拾った時も、甲斐甲斐しく世話をしていた。・・・きっと、エルザは良い妻になるだろう」

 

 トゥルムに、アレクや小隊の仲間達の前でゴズフレズでの一件を語って褒められ、エルザは照れて赤くなる。


「ま、まぁね~。獣人(ビーストマン)は子供がたくさんいるから、村にいた時に年下の兄弟達の面倒を見てたから!」


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