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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十五章 狂乱の道化師

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第三百八十九話 揚陸艇降下、教導大隊潜入

--カスパニア属州ホラント ゾイト・ホラント港沖 公海上空 飛行空母ユニコーン・ゼロ


--夜。


 飛行空母ユニコーン・ゼロは、帝国海軍(ライヒス・マリーネ)の大演習によって航行禁止に指定された海域の上空に移動していた。


 教導大隊をゾイト・ホラント港に揚陸させ、密かにホラントに潜入させるためであった。


 ジカイラは、揚陸艇のコクピットから窓越しに夜空を眺める。


 月明かりの無い暗闇の夜空に無数の星が瞬く。


「・・・新月の夜か。運が良い。オレ達がホラントに潜入するには好都合だ」


 パイロットはジカイラに答える。


「そうですね。ただ、闇夜の中で揚陸艇を操縦するには少々、腕を必要としますが・・・」


「ははは。違いない」


 ジカイラは乾いた笑い声をあげる。


 ヒナは傍らのジカイラに告げる。


「ジカさん、出発の時間よ」


「判った。・・・行くぞ。揚陸艇を出せ!」


「了解です!!」


 教導大隊を分乗させた四機の揚陸艇が飛行空母ユニコーン・ゼロの飛行甲板から飛び立ち、闇夜の中を属州ホラントのゾイト・ホラント港を目指して降下していく。




 

 アレク達は、揚陸艇の格納庫の座席に座っていた。


 漏光制限が行われている揚陸艇の格納庫内は薄暗く、灯火管制用の覆いが付けられた照明が、僅かに真下だけを照らしていた。


 揚陸艇の船体が大きく揺れ、格納庫内のアレク達にも飛行甲板から揚陸艇が発艦した事が判る。


 アルは、座席に座ったまま呟く。


「発艦したな」


「ああ」


 アレクはアルに答えながら、窓の外に目を向ける。


 窓越しに見える漆黒の闇夜には、僅かに星の光が瞬いていた。


 座席に座っていたエルザは呟く。


「う、う、う、ううぅ~」


 隣の席のナディアが尋ねる。


「どうしたの? エルザ??」


「降下する時の高度を下げていく、この『落ちていくような感覚』って、嫌いなのよね~」


 ナディアは、したり顔で答える。


「士官学校で訓練しているけど、私も好きじゃないわ」


 ドミトリーは、二人に注意する。


「二人とも! 作戦中くらい、我慢できんのか?」 


 トゥルムもドミトリーに続く。


「揚陸艇は客船ではない。乗り心地が悪いのは、仕方あるまい」


 二人に注意されたエルザは、少し拗ねたように呟く。


「何よ・・・。揚陸艇での降下が好きなのって、アレクとアルだけじゃない。女の子の乳揺れ見て喜んで」


「なっ!?」


 アレクとアルは、エルザに名前を出されギクリとして固まると、条件反射のように女の子達の胸に目線を向けてしまう。


 アルと目線が合ったナタリーは、頬を赤らめながら両腕で自分の胸を隠す。

 

 アレクと目線が合ったルイーゼは、慣れた様子で苦笑いしていた。



 周囲の様子を見たドミトリーは、ため息交じりに呟く。


「まったく・・・二人とも、煩悩に捕らわれ過ぎだ」


 トゥルムはドミトリーを諭す。


「まぁ、冗談を言っていられるのも、今のうちだ。敵地に潜入したら、冗談も言ってられないだろう」


 それは、トゥルムの言葉通りであった。


 揚陸艇は、飛行空母ユニコーン・ゼロの飛行甲板から海面スレスレまで降下すると、ゾイト・ホラント港を目指して低空飛行を始める。





 半時ほどで揚陸艇は、ゾイト・ホラント港の上空に差し掛かる。


 揚陸艇のコクピットから闇夜を見詰めるジカイラの目に、各所に明かりを灯すゾイト・ホラント港の姿が映る。


 ゾイト・ホラント港の木造ガントリー・クレーンや灯台にはホラント独立派の旗が掲げられて明かりが灯され、教導大隊を出迎えているようにも見えた。


 ヒナは、港の各所に明かりが灯されている事に驚き、傍らのジカイラに尋ねる。


「港に明かりが!? ホラント独立派の旗!? ジカさん、どういうこと?」


 ヒナは、教導大隊のホラント潜入作戦がカスパニア側に漏れていたのではないかと危惧していた。


 ジカイラは、ニヤけながら答える。


「『ゾイト・ホラント港は、ホラント独立派が制圧している』って事さ」





 揚陸艇は、港からの通りの市街地上空を低空飛行で進み、高い木の塀で囲まれた奴隷市場の上を通過して町外れに向かっていく。


 やがて、揚陸艇は街外れに差し掛かると、闇夜の中、四方の周囲に篝火を焚き、煌々と照らし出されている宿屋が見えてくる。


 ジカイラは口を開く。


「着いたぞ。『白き風亭』だ」


 低空で水平飛行していた揚陸艇は、前進を止めると、ゆっくりと地上へ向けて降下し、宿屋の側に着陸する。




 四機の揚陸艇が白き風亭の周辺に着陸して跳ね橋(コーヴァス)を降ろし始めると、白き風亭から数人の者達が現れる。


 揚陸艇から降り立ったジカイラやアレク達の前にホラント独立派であるホラント王国国民会議のリシー議長とホラント王国親衛隊隊長のマイヨ大尉、その副官のケーニッヒ少尉達が歩み出てアレク達を出迎える。


 リシーは口を開く。


「帝国軍の皆さん、よく来て下さいました! 皆さんの到着を歓迎致します!」



 アレク達、教導大隊の到着により膠着状態であったホラント独立戦争は、再び大きく動き始める。


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