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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十四章 野営訓練、二年目
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第三百八十二話 野営訓練、二年目(十)

 ルドルフ達と話し終えたジカイラとヒナは、アレク達ユニコーン小隊のところへと見回りにやって来る。


 砂浜の海岸の浅瀬ではアルとナタリーが二人で泳ぎの練習をしており、現れたジカイラとヒナの姿を見て、アルとナタリーは陸に上がる。


 アレクとルイーゼは、海岸の先にある岬の方へ二人で歩いて行った後であり、トゥルムとドミトリーは酒盛り中で、幌馬車から戻ったエルザとナディアは、二人並んで砂浜に敷物を敷いて寝転がり日光浴中であった。


 ジカイラが陸に上がって来たアルに話し掛ける。


「お前達、楽しんでいるか?」


 アルは笑顔で答える。


「うん!」


 ジカイラは、自分の息子であるアルの顔をひと呼吸の間、見詰める。


(・・・アル。士官学校に入ってから、たった一年半で、大人になった。・・顔付きまで変わったな。精悍な男の顔になった。・・・男の成長は早い。・・・好きな女が出来たら、尚更か)


 次にジカイラは、アルの傍らに居るナタリーに目を向ける。


(・・・ハリッシュとクリシュナの娘。褐色の肌も、プラチナブロンドの髪も、琥珀色の瞳も、クリシュナにそっくり。・・・アルの彼女か)


 自分を見詰めるジカイラにナタリーは尋ねる。


「・・・あの。大佐? 何か・・・?」


 ジカイラは、苦笑いしながら答える。


「いや、二人は、お似合いだなと思ってな」


 ジカイラの言葉にアルとナタリーは、照れて赤くなる。


「いやぁ・・・」


「え~」


 ジカイラの傍らで話を聞いていたヒナも、口元に手を当てて微笑む。


 ジカイラは口を開く。


「アルフォンス」


「はい?」


「お前はナタリーと結婚したいのか?」


「え!?」


 ジカイラからの突然の質問にアルとナタリーは驚く。


 ジカイラは続ける。


「今、ここにいるのは、この四人だけだ。隠す事は無い。・・・オレは、二人が愛し合っているなら構わないぞ。士官学校を卒業したら、一緒になると良い。オレ達は、ナタリーの両親の事も良く知っているからな」


 ヒナも口を開く。


「私もアルの伴侶がナタリーなら安心できるわ」


 アルの両親であるジカイラとヒナは、ナタリーの両親であるハリッシュとクリシュナと同じ小隊で革命戦役を戦い抜いた戦友であり、友人であった。


 両親からの問いにアルは答える。


「父さん。母さん。・・・オレ、士官学校を卒業したら、ナタリーと結婚したいと思ってる」


 アルは、ハッキリと自分の両親にナタリーと一緒になりたいという意思を伝えた。


「アル! ・・・嬉しい!」


 傍らで見ていたナタリーは、感激して胸が一杯になり、両手の指先を口元に当てて涙ぐむ。


 ジカイラは口を開く。


「判った。卒業したら結婚すると良い。・・・後は、好きな女を守れる強さを身に付けろ」


「うん!」


「話はそれだけだ。・・・じゃあな」


 そう告げると、ジカイラとヒナは二人の元を後にする。





 ジカイラとヒナは次の小隊に向かって砂浜を歩く。 


 歩きながらヒナは、傍らのジカイラに尋ねる。


「私、驚いたわ~。ジカさんがいきなり二人に結婚の話をするなんて」


 ジカイラは、悪びれた素振りも見せず答える。


「・・・ラインハルトに孫ができるんだ。オレ達もアルの結婚や、近い将来に孫ができる事を考えないとな」


 ヒナは両手を後ろ手に組むと、ジカイラの顔を覗き込むように黒髪のポニーテールを揺らしながら嬉しそうに答える。


「ふふふ。それもそうね」 


 白い砂浜に二人の足跡が続いていく。


 二人寄り添って歩んで来た人生を示す様に。




 

 両親が去った後、アルはジカイラから言われた言葉を考えていた。


(『好きな女を守れる強さを身に付けろ』か・・・)


 ナタリーは考え込むアルの顔を見ながら尋ねる。


「アル。どうしたの?」


 アルは真剣な顔でナタリーに決意を告げる。


「ナタリー。・・・オレは、士官学校卒業までに父さんと同じ暗黒騎士になる! 上級職になるよ!」


「アル・・・」


 アルは力説する。


「上級職の暗黒騎士ならダークエルフとだって互角以上に戦える! どんな事からもナタリーを守れように強くなるよ!」


 ナタリーもアルが力説する決意に答える。


「・・・なら、私も上級職に。首席(アーク・)魔導師(ウィザード)になるわ。傍で私が支えるから。・・・無茶はダメよ」


「ありがとう。ナタリー」


 二人は互いに手を握り合うと抱き合う。


 小柄なナタリーは、アルの腕の中にすっぽりと納まる。




 さざ波が響く白い砂浜での二人の誓いを海猫が静かに見守っていた。


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