第三百八十話 野営訓練、二年目(八)
アレクが幌馬車から砂浜に戻ると、ナディアがアレクの帰りを待っていた。
ナディアとエルザは昨年同様に二人で並んで日光浴をしており、ナディアは傍らでアレクとエルザが乳繰り合いながらローションを塗っている様子を黙って見ていた。
一人で戻って来たアレクに、砂浜に敷いた敷物の上で寝そべるナディアは声を掛ける。
「あら? アレク一人? エルザと逢引きしたんじゃなかったの?」
アレクは気不味そうに答える。
「・・・ちょっとね」
「ふぅ~ん」
アレクの答えを聞いたナディアは訝しんで、起き上がってアレクの傍らに行くと、アレクに告げる。
「隠したって、お姉さんには判るわよ~」
そう告げると、ナディアはアレクの顔に自分の顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
エルフであるナディアの感覚は、人間のものより鋭いものであった。
ナディアは口を開く。
「・・・この柑橘系の香りは、エルザが使っていた日焼け止めローションの香りね」
「判るのか!?」
アレクは、全身に日焼け止めローションを塗ったエルザを幌馬車の中で抱いていた事がナディアにバレたのかと焦る。
ナディアは、得意気に鼻先をアレクに近付けて続ける。
「判るわよ~。エルフですもの。・・・そして、この、チーズのような、ヨーグルトのような匂いは・・・」
そこまで口にすると、急にナディアは口籠って赤面する。
(・・・これって!?)
ナディアは気付く。
ナディアはアレクと目線を合わせると、赤面して上目遣いに恥じらいながらアレクに告げる。
「もぅ・・・アレクったら。まだ明るい内から、エルザと・・・してたのね」
ナディアに言い当てられたアレクは、焦りながらしどろもどろに答える。
「ま、まぁ、ちょっと・・・ね」」
アレクの様子に、ナディアは余裕の笑みを浮かべながら砂浜に敷いた敷物の上に横たわる。
「私はアレクがエルザを抱こうと怒ったりしないわよ。私はアレクの第二夫人で、エルザはアレクの第三夫人ですもの」
アスカニア大陸の国家は一夫多妻制であり、バレンシュテット帝国もそうであった。
ナディアは甘えるようにアレクに告げる。
「ねぇ、アレク。私にも日焼け止めローションを塗って」
「・・・判ったよ」
アレクはナディアから日焼け止めローションの入った小瓶を受け取ると、アレクは両手でエルザに塗った時と同じように、うつ伏せに横たわるナディアの身体の上部から順に、肩から背中、腰へとローションを塗っていく。
ナディアは、エルフ特有の線の細い妖精のような美しい身体をしており、胸元と背中が大きく開いた黒のハイレグの水着が良く似合っていた。
ナディアは口を開く。
「アレク」
「ん?」
「相変わらず、ローションを塗る手つきが凄くいやらしい・・・。それと・・・」
「それと?」
ナディアは口元に手を当てて恥じらいながらアレクに尋ねる。
「私を・・・責めてるでしょ?」
「いや・・・」
ナディアはうっとりとした表情でアレクに告げる。
「もぅ・・・こうやってエルザをその気にさせたのね? ・・・えっちなんだから」
「別にそんなつもりは・・・」
「ふふ。お姉さんは『今すぐ抱いて欲しい』とか、無理は言わないわ。今日はエルザを抱いてアレクも疲れているでしょ? ・・・日を改めてね」
ナディアの言葉にアレクは苦笑いする。




