第三百七十九話 野営訓練、二年目(七)
エルザは、アレクの手を引きながら幌馬車の荷台の中に連れ込む。
野営用の荷物が入った木箱を降ろした幌馬車の荷台は広く、幌の隙間から僅かに光が差し込んで来ていた。
エルザは、アレクの首に両腕を回してキスすると、アル達が長座布団の代わりに使っていた亜麻の布の上にアレクを押し倒して、その上に乗る。
「ちょっと待ってね」
そう告げるとエルザは、ビキニを脱いで裸になる。
アレクはエルザを抱く。
アレクは、自分の腕の中でぐったりとしているエルザにキスする。
キスし終えたエルザは、自分の上に乗っているアレクの頬を右手で撫でると、目を潤ませながら御礼の言葉を口にする。
「・・・アレク。ありがとう。良い思い出になったわ」
「『思い出』って?」
不思議がるアレクにエルザは説明し始める。
「女の子にとって『思い出』は大切なのよ」
「そうなのか?」
「そうよ。・・・半年後に士官学校を卒業したら、アレクと結婚して生まれてくる子供達に話してあげるの。『パパとママは、白い砂浜の綺麗な海に旅行に行って、たくさん愛し合って、貴方達が生まれて来たんだよ』って。思い出と一緒に『愛し合って、望まれて生まれて来たんだよ』って伝えてあげたいの」
エルザが見せた意外な一面に、アレクはエルザの額に再びキスして告げる。
「きっと子供達に伝わると思うよ。思い出も、愛情も」
「アレク。優しいのね」
「そう?」
「そうよ」
二人は抱き合ったまま微笑むと、エルザは口を開く。
「こうして二人で愛し合った余韻に浸っていたいけど、ナディアが待ってるわ。あまり長く逢引きしていると怪しまれるから、先に戻っていて」
「・・・判ったよ」
アレクは腰が抜けて動けないエルザをそのままに、水着を履いて幌馬車を後にした。




