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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十四章 野営訓練、二年目

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第三百七十七話 野営訓練、二年目(五)

 焼肉も終盤となり、トゥルムとドミトリーは、昼食の残りをつまみに、そのまま二人で酒盛りを始める。


 去年と異なり、あらかじめ二人に浴場の準備を済ませて貰ったので、二人が酒盛りを始めてもアレクは安心していた。


 ベジタリアンのナディアは、リンゴ、オレンジ、マンゴーなど様々な果物を持って来ており、アレク達は、焼肉の後、口直しに果物を食べる。


 アレクは、ルイーゼにリンゴの皮を剥いて貰って食べていた。


 ランスロットが血相を変えてアレク達の元に駆け込んで来る。


「アレク先輩! 大変です!」 


「どうしたんだ?」


「姫が! ミネルバさんが貴族組に!」


 アレク達がランスロットの話を聞くと、ミネルバが貴族組の三人の女達に呼び出され、一緒に雑木林の方へ行ったとの事であった。


「なんだって!?」


 話を聞いたアレクの顔は、引きつる。


 ランスロットは口を開く。


「『女同士で話しがある』とか言って呼び出されていましたが・・・。ミネルバさん、大丈夫でしょうか!?」


 アレクは答える。


「ミネルバより、その貴族組の女の子達の方が心配だ! どっちへ行った!?」


 ランスロットは、ミネルバ達が向かった先を指で指し示す。


「向こうです!」


 アレクは口を開く。


「オレ達で行く! ルイーゼ、行こう!」 


「ええ!」


 アレクとルイーゼは、二人で雑木林の中へと向かう。






 アレクとルイーゼの二人が雑木林の中に分け入ると、ほどなく少し開けた空き地のような空間に出て、そこにミネルバと三人の貴族組の女の子達がいた。


 四人の様子を見てアレクは呟く。


「やっぱり・・・」


 貴族組の取り巻きであろう二人の女の子達は、口と鼻から血を流しながら白目を剥いて地面に倒れていた。


 ミネルバは、白いビキニ姿で腕を組んで仁王立ちしながら、全裸で地面に額をこすりつけて土下座して平伏する貴族組の女の子のリーダー格であるミミリィ・ニードリゲクラッセ子爵令嬢の頭を足で踏み付けていた。


 ミネルバは、凍てつくアイスブルーの瞳で足の下のミミリィを見下しながら、格調高く告げる。


「・・・皇宮に参内(さんだい)すらできぬ田舎貴族の分際で、帝国貴族を(かた)り、狼藉(ろうぜき)を働くとは!」


 ミミリィは、ミネルバの足の下で顔面蒼白でガタガタと震えながら答える。


「なにとぞ・・・ なにとぞ、お赦しを・・・」


 ミネルバは、そのまま足でグリグリとミミリィの頭を踏み付けながら続ける。


「・・・※大逆の罪、汝と一族の命で(あがな)うがいい!」


(※大逆罪:皇帝とその家族である帝室に対する反逆の罪。バレンシュテット帝国での量刑は、死刑のみが課せられる重罪)


 ミミリィは泣き叫ぶ。


「ヒ、ヒィィィィイ!!」


 ミミリィは泣き叫ぶと同時に恐怖のあまり失禁する。

 

 惨状を見ていられなくなったアレクは口を開く。


「ミネルバ!!」


 アレクに呼ばれたミネルバは、表情を一変させてアレクとルイーゼの方を向く。


「あら? アレク兄様。・・・それに、ルイーゼも」


 ルイーゼは、ミネルバに向かって最敬礼を取る。


「・・・ミネルバ様」


 ミネルバは、悪びれた素振りも見せず、踏み付けていたミミリィの頭から足を避けると、平伏しているミミリィの髪を掴んで頭を引き起こし、ミミリィの顔をアレクの方に向ける。


 ミミリィの顔は、ミネルバにボコボコに叩きのめされいて、顔中あちこち青紫色に腫れあがっていた。


「アレク兄様! 見て!」


 髪を引っ張られ顔を引き起こされたミミリィは、呻き声を挙げる。


「ウゥウウウ・・・」


 アレクの方に向けられたミミリィの顔には、ミミリィ自身が履いていたであろうパンツが被せられており、呻き声を上げて開いた口から(のぞ)く前歯が三本程折れていた。


 アレクは口を開く。


「お前、いくら何でも、これはやり過ぎだろ!?」 


 ミネルバは答える。


「こいつら、三人掛かりで、この私にお茶を掛けたのよ!? これくらい当然よ!」


 そこまで言うと、ミネルバは立ち上がり、再び平伏しているミミリィの頭を足で踏み付ける。


「ねぇ? ミミリィ??」


 ミネルバの足の下でミミリィは答える。


「・・・ふぁい」


 アレクは止めに入る。


「もう止めろ! 充分だろ!? その辺にしてやれ」


 ミネルバは、意外にもアレクの言葉にすんなりと従い、踏み付けていたミミリィの頭から足を離す。


 アレクは、地面に平伏したままうずくまるミミリィを介抱する。


「大丈夫か? ・・・って、酷いな」


 ミネルバは、アレクに介抱されているミミリィの髪を再び掴むと、顔を引き起こし、自分の顔を近づけて睨み付けながらミミリィに凄む。


「判っているな? 私の身分や、余計な事を喋れば、どうなるか・・・」


 ラインハルト譲りのミネルバの迫力に、アレクでさえ戦慄を覚える。


「ヒィイイイ! い、言いません! 誰にも言いません! 誓います! 両親と家名に掛けて誓います!」


 ミミリィは、アレクに介抱されていたものの、ミネルバからの恫喝に恐怖で委縮してアレクにしがみついてガタガタと震えながら再び失禁する。


(女の子同士って、ほんと情け容赦無いな・・・)


 アレクは、女性同士の制裁が情け容赦の無いものだと改めて認識する。 


「・・・もういい。興ざめだわ」


 アレク達にそう告げると、ミネルバは平民組のいる海岸の方へ歩いて行った。


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