第三百二十八話 放棄宣言、女の子達の入浴
--昼前。
自治庁に赴いてエリシス伯爵に『ハンガンの実』について報告したジカイラとヒナは、空中港でクリスタル・チューブの入口の警戒任務に当たるアレク達を訪れる。
ジカイラは、自分の元に集まって来たアレク達に話し掛ける。
「あれから何か異常はあったか?」
アレクは答える。
「異常ありません。誰も来ませんし・・・」
「そうか。なら良かった」
ジカイラは笑顔を見せる。
程なくして空中港の埠頭に転移門が現れ、エリシスとリリーが現れる。
アレク達は口を開く。
「エリシス伯爵!?」
エリシスは口を開く。
「ジカイラ大佐。アレク大尉。御苦労だったわね。・・・自治政府の首相は、この空中都市での麻薬『天使の接吻』の製造と流通を認めたわ」
ジカイラは尋ねる。
「と、すると? ・・・彼らの処遇は?」
エリシスは、微笑みながら答える。
「彼らの助命と引き換えに、空中都市イル・ラヴァーリの自治政府は、麻薬の製造と流通などの麻薬取引、奴隷貿易を放棄を宣言するわ」
エリシスの言葉をリリーは補足する。
「正午には、自治政府から放棄宣言が出されるでしょう」
リリーの言葉を聞いたエリシスは、口元に手を当てて笑いを堪えながら告げる。
「麻薬取引と奴隷貿易の放棄を言い出した時の首相の姿と言ったら・・・ねぇ? リリー」
リリーも口元に手を当てて笑い出すのを堪えながら答える。
「ええ」
エリシスとリリーの言葉を聞いたジカイラは、顔を引きつらせながら苦笑いして追従する。
(この二人が楽しそうに話しているって事は、首相たちは相当、苛烈な拷問を受けたんだろうな・・・)
やがて正午になり、空中都市イル・ラヴァーリの自治政府は、麻薬取引、奴隷貿易を放棄を世界に向けて宣言。
クリスタル・チューブの『ハンガンの実』栽培施設と、首相が自白した麻薬『天使の接吻』の生産設備は、南部方面軍の不死者達によって撤去された。
取引商品として捕らわれていた奴隷達は解放され、自由の身となった。
アレク達教導大隊は、自治庁前の大通りから空中港に接舷した飛行空母ユニコーン・ゼロに本陣を移し、空中都市イル・ラヴァーリへの駐留は、エリシス伯爵が率いる帝国南部方面軍が当たる事になった。
飛行空母ユニコーン・ゼロに戻ったアレク達は、久々にゆったりとした時間を過ごす。
ユニコーン小隊の女の子達四人は、連れ立って浴場へ向かう。
通路を歩きながら、ナディアは口を開く。
「野営するのも、野宿より仮設テントの方がマシだけど、お風呂が無いのが困るのよね」
ナディアの言葉にエルザも同意する。
「そうそう。野宿より、蚊帳があるだけ仮設テントの方がマシよね。それに・・・」
エルザにナタリーは尋ねる。
「それに?」
エルザは、得意気に答える。
「ユニコーンの獣耳アイドル・エルザちゃんの玉の御肌は、お風呂で良~くお手入れしないとね!」
エルザの言葉にルイーゼとナタリーは苦笑いを浮かべつつ、追従する。
浴場の脱衣所に着いた女の子四人は、それぞれ服を脱ぎ始める。
先に服を脱ぎ終えたナディアとエルザが、両手で怪しい構えを見せながらルイーゼに詰め寄る。
「ルイ~ゼ~」
怪しい構えで詰め寄って来る二人に、裸になったルイーゼは、たじろいで後退りする。
「えっ!? ええっ!?」
次の瞬間、エルザとナディアが、ルイーゼをくすぐり始める。
「覚悟!!」
ルイーゼは、くすぐる二人に抗議する。
「あははは! 止めて! 止めて! くすぐったい!!」
エルザはルイーゼに告げる。
「私が頑張ってヴェネトの女騎士を一騎打ちでやっつけたのに、なぁ~んでアレクの逢引きの相手がルイーゼなの!?」
ナディアもルイーゼに告げる。
「あの家具店も私が見つけたのに! ・・・アレクを誘惑したんでしょ!?」
くすぐられながらルイーゼは、涙目で抗議する。
「止めて! 止めてぇ~! あはははは!」
くすぐりながら、再びエルザはルイーゼに告げる。
「自分一人だけアレクを独り占めして! ズルい! ズルい! ズルい! 独り占めの罰よ!!」
ルイーゼをくすぐり続ける二人にナタリーが仲裁に入る。
「二人とも、止めなさいよー!!」
ナタリーの言葉でナディアとエルザは、ピタリとルイーゼをくすぐる事を止める。
「え!?」
驚くナタリーに、二人は怪しい笑みを浮かべながら、迫って来る。
ナディアは口を開く。
「・・・そう言えば、ナタリーもアルと逢引きしていたのよね?」
ナディアの言葉にナタリーは頷く。
「・・・うん」
エルザは怪しい笑みを浮かべながら、ナタリーに詰め寄る。
「ナタリーは、アルと二人でどこに行ったの?」
エルザからの問いに、ナタリーは赤面しながら答えるが、口籠る。
「・・・ええと・・・その・・・『ホテル』・・・かなぁ」
「ホテル!?」
ナディアとエルザは顔を見合わせながら驚くと、二人は、左右からナタリーの両腕をがっちりと組んで浴場へ向かう。
エルザはナタリーに告げる。
「アルとは、どこまで進んだの? ・・・キスだけ? ・・・それとも、その先も?」
ナディアもナタリーに告げる。
「お風呂に入りながら、詳しい話を聞かせてね」
ナタリーは赤面しながら二人に答える。
「そんなぁ! 恥ずかしいよぉ~!」
こうして四人は、入浴して湯船につかりながら、それぞれの恋愛と将来の夢について語り合うのであった。