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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十二章 空中都市

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第三百十話 子供達、殺戮の幕開け

 ブラックサレナ団との最初の戦闘を終えたアレク達の元に、後続の教導大隊の二年生の貴族組と、一年生の平民組、貴族組がやって来る。


 その中には、ミネルバ達の姿もあった。


 後続と合流した教導大隊は、隊列を大きく四列に分けて編成する。


 先頭がアレク達二年生の平民組。


 第二陣がキャスパー達二年生の貴族組。


 第三陣がミネルバ達一年生の平民組。


 第四陣が一年生の貴族組であった。


 アレク達の隣に帝国南部方面軍の不死者(アンデッド)達が隊列を組んで布陣する。





 動死体(ゾンビ)骸骨(スケルトン)死の騎士(デス・ナイト)骸骨の騎士(スカルナイト)といった不死者(アンデッド)達は、無言で隊列を組んでいく。


 ユニコーン小隊の女の子達は、その様子を眺めて顔を引きつらせる。


 エルザは、不死者(アンデッド)達が隊列を組んでいく様子を見て、顔を引きつらせながら思わず呟く。


「うへぇ・・・」


 エルザに続いてナディアも顔を引きつらせながら呟く。


「うはぁ・・・」


 ナディアに続いてナタリーも呟く。


不死者(アンデッド)達、凄い数ね・・・」


 ルイーゼもナタリーに続いて呟く。


「さすがに、これだけの数の不死者(アンデッド)達に隣に並ばれると、気味悪いわね」


 そう呟くと、ルイーゼは戦士の顔つきのまま、無言で不死者(アンデッド)達が隣に整列していく様子を眺めていた。


動死体(ゾンビ)骸骨(スケルトン)、無数の不死者(アンデッド)達。一体一体は、大したことは無いけれど、流石にこの数は・・・味方のままだと良いけれど・・・)


 



 ヴェネト共和国軍の物見は、ギリアム・ローズに報告する。


「帝国軍は増援が来たようです」


 ギリアム・ローズは、報告を受け、鼻で笑う。


「フン。・・・第二陣の準備はできたか?」


「はい」


「よし。第二陣、突撃だ!」


 ギリアム・ローズの命を受けた獄吏達は、奴隷輸送車の上から指示を出す。


「お前ら! 突撃だ!」


「突撃!」


「わぁああああ!!」


 指示を受けたブラックサレナ団の武装した小柄な者達は、大通りに布陣するアレク達帝国軍に向けて一斉に突撃し始める。


 



 大通りの向こうからヴェネト共和国軍ブラックサレナ団の第二陣がアレク達に向けて迫って来る。


 ルイーゼは、大通りに現れたブラックサレナ団の第二陣を指差しながらアレクに告げる。


「アレク! 敵の第二陣が来たわ!!」


 アレクは、ルイーゼが指し示す方向に目を向けると、教導大隊に号令を掛ける。


Präsen(プレツェン)tiert(ティア―ト) das(ダス) Schild(シード)!!」

(盾を構えろ!!)


 アレク達教導大隊は、一斉に敵に向けて盾を構えて並ぶ。


 ヴェネト共和国軍の第二陣は、整列したアレク達が構える大盾(タワーシールド)の列に激突する。


 アレク達は、盾越しにヴェネト共和国軍の第二陣の『押し』が、第一陣のそれよりも弱い事に違和感を覚える。


 アレクが力を込めて大盾(タワーシールド)を押し返すと、相手はよろよろと後ろに下がっていく。


(・・・弱い? 敵は、非力なのか?)


 ぶつかり合ったヴェネト共和国軍の第二陣に違和感を感じつつも、アレクは教導大隊に号令を掛ける。


Attacke(アタック)!!」

(攻撃!!)


 アレクの号令に合わせ、教導大隊は一斉に盾でヴェネト共和国軍の第二陣を押し返すと、盾の隙間から体勢を崩したヴェネト共和国軍の第二陣を武器で斬りつけようとする。


 剣で斬り付けようとしたアレクの目に、ヴェネト共和国軍の第二陣である敵の姿が映る。


(なんだと!?)


 敵の姿を認識したアレクは、慌てて剣を止める。


 それはアレクに限らず、教導大隊の第一陣の全員が同じであった。





 アレクが剣で斬り付けようとした敵。


 それは、アレクに盾で押し返されて尻もちを着き、恐怖に怯えた目でアレクを見上げる年端もいかない子供の姿であった。





「くそっ!!」


 アレクは、そう口にすると『警笛』を取り出して吹く。


 戦場に甲高い警笛の音が響き渡り、教導大隊の者達は驚いて手を止める。


「なんだ!?」


「非常事態??」


「戦闘中止!?」


 帝国軍において、警笛は、緊急事態や非常事態が発生した事態に吹かれる合図であった。





 教導大隊の者達が戦闘を止めて呆然と立ち尽くす中、アレクは目の前で尻もちを着いている子供を怒鳴りつける。


「馬鹿が! お前、死にたいのか!? 武器を持って、戦場に出る事の意味が判ってるのか!? 殺されるんだぞ!!」


「わぁあああぁ~ん」


 アレクに怒鳴られた子供が泣き出す。


 その様子を見ていたアルも驚いて口を開く。


「まさか!? 敵の第二陣って、子供(ガキ)ばかりかよ?」


 トゥルムは、妙に納得したように口を開く。


「どおりで・・・。非力(ひりき)(もろ)いはずだ」


 エルザは、怯えた顔のヴェネト共和国軍第二陣の子供達に優しく語り掛ける。


「みんな! 武器なんか捨てて、お姉ちゃんのところにおいで!!」


 ナタリーとナディアもエルザに続く。


「さぁ、おいで!」


「もう大丈夫よ!」


 ヴェネト共和国軍第二陣の子供達は、手にしていた武器を捨てて、小隊の女の子達のところへ集まって来る。


 武器を捨てて投降してくる子供達を見ながら、ドミトリーは口を開く。


「隊長。これはもう戦どころでは無い。こんな年端もいかぬ子供達を戦場に駆り出すとは・・・」


 アレクは、敵の第二陣が子供達だと知った動揺を隠せないまま、ジカイラに尋ねる。


「大佐。これは一体?」


 ジカイラは、苦虫を噛み潰した顔でアレクに答える。


「ヴェネト共和国の奴ら、麻薬中毒者(ジャンキー)達の次は、年端もいかない子供(ガキ)どもを差し向けて来るとはな。・・・どうやら、敵の狙いは、こっちの士気をくじくことにあるようだ」


 ヒナはジカイラに問い質す。


「それって、帝国と正面きって武力で戦っても勝てないから、こっちの心を折る作戦ってこと?」


 ジカイラは、唾棄するように答える。


「そういう事だ! 虫唾が走る!」


 



 教導大隊が対峙したヴェネト共和国の第二陣がアレク達に武器を捨てて投降する一方で、教導大隊の隣に布陣する帝国南部方面軍とヴェネト共和国の第二陣との戦端が開かれる。


「ウワァアアアア!!」


 大通りに悲鳴が響き渡る。


 帝国南部方面軍の不死者(アンデッド)達は、何の躊躇(ちゅうちょ)も無く、ヴェネト共和国軍の第二陣の子供達を殺していく。


 一方的な殺戮の幕開けであった。


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