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第二十九話 初陣

--翌朝。


 帝国辺境派遣軍は、定刻通りにヨーイチ男爵領州都『キャスパーシティ』上空に到着した。


 アレク達は、先日、宿泊した時と同じ部屋に同じ部屋割りで泊まり、朝を迎える。


 アルとナタリーは、初日は同じ部屋に泊まることに緊張していたものの、二日目ともなると少し慣れたようであった。


 アレクとルイーゼも同様であったが、アレクは裸のルイーゼが傍らで寝ている『蛇の生殺し』状態が続いたため、寝不足気味であった。


 平民組、貴族組と朝食を食べ終わった頃に、呼集が掛かり、アレク達は武装して格納庫に集まる。


 格納庫では、二人の教官、もとい、ジカイラ中佐とヒナ大尉がアレク達が集合するのを待っていた。


 教え子達が時間通り集まった事を確認し、ジカイラが口を開く。


「傾注せよ! オレ達、教導大隊の初任務は『偵察』だ。 飛空艇による航空偵察を行う。 小隊毎に別れ担当する地域を偵察すること。 小隊長は、自分の小隊の担当地域を地図で確認するように」


 傍らのヒナが地図を掲示板に貼り出す。


 ジカイラは、地図を指し示しながら説明を続ける。


「現時点では、敵に関する詳しい情報は、ほとんど判っていない。 敵の勢力範囲や宿営地、兵站施設、補給基地なども、ほぼ不明だ。 各員、可能な限り情報を集めろ。 各機のナビゲーターは、担当地域の偵察で確認したことを記録。 各小隊は、正午迄に飛行空母に帰投すること。以上だ!」


 アルが残念そうにアレクに話し掛ける。


「な~んだ。初陣は、偵察任務かぁ・・・」


 苦笑いしながらアレクが答える。


「まぁ、そんなもんだろ」


 エルザが地図を書き写しながら、二人に話し掛ける。


「文句言わないの! 楽な任務で良いでしょ?」


 アルが不満げに答える。


「それは、そうだけどさぁ・・・」


 トゥルムが異論を唱える。


「何を言っている? 『偵察』は重要だぞ! 敵の位置や陣地、兵力、装備が判らないで、どう戦う? まず『敵を知ること』が重要だ」


 トゥルムの意見にアレクは素直に感心する。


「・・・なるほど」


 アレク達は、掲示板の前に行き、自分たちの小隊が担当する地域の位置を確認する。


 作戦区域となるヨーイチ男爵領は、アスカニア大陸の経済の動脈である『交易公路』も無ければ、大きな街道も鉄道も大河も港も無い。


 ヨーイチ男爵家が本宅を構える州都『キャスパーシティ』 は、『都市』というより『田舎の町』であり、それの他は、開拓集落が領内に点在しているだけであった。


 ヨーイチ男爵領は、なだらかな丘陵のある原野の中央に大きな原生林がある他、小さめの原生林と小川が原野に点在するという、まさに『帝国辺境の未開の開拓地域』であった。


 地図を見ながら、ルイーゼが呟く。


「今の私達の居る場所がここ。ヨーイチ男爵家のあるキャスパーシティの上空」


 他の小隊メンバーが頷くと、ルイーぜは解説を続ける。


「私達、ユニコーン小隊は、キャスパーシティの上空から真っ直ぐ東に進んで、ここまで行くっと。ヨーイチ男爵領の東南の一番、端の地域の担当ね」


 アレクが答える。


「東南の一番端・・・だね。隣の地域の担当は、グリフォン小隊か・・・」


 グリフォン小隊は、ルドルフ・ヘーゲルが小隊長を務める小隊であった。


挿絵(By みてみん)




 アレク達は、地図で自分達が担当する地域を確認すると、出発時刻が近いこともあり、自分達が乗るガンシップの所に行き、乗り込む。


ガンシップ「エインヘリアルⅡ」

カロネード砲 二門搭載

魔導発動機 二機搭載

複座式 戦闘爆撃機



 小隊全員が飛空艇に乗り込んだ事を確認したアレクは、整備員に告げる。


「ユニコーン小隊、出撃します!」


「了解!」


 整備員は同僚と共に、アレク達が乗る四機の飛空艇をエレベーターに押して乗せると、同僚の整備員に向かって叫ぶ。


「ユニコーンが出る! エレベーターを上げろ!」


 整備員が動力を切り替えると、飛行甲板に向けてアレク達が搭乗する四機の飛空艇は、エレベーターで上昇していく。


 程なく、アレク達が搭乗する四機の飛空艇は、飛行甲板に出る。







 上空の冷たい風がアレクの顔を撫でる。


 アレクは、伝声管でルイーゼに告げる。


「行くよ。ルイーゼ」


「うん」


発動機始動(モータリングスタート)!」


 アレクは、掛け声と共に魔導発動機(エンジン)の起動ボタンを押す。


 魔導発動機(エンジン)の音が響く。


 ルイーゼが続く。


飛行前点検(プリフライトチェック)開始(スタート)!」


 ルイーゼは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。


魔導発動機(エンジン)航法計器(エアーデータ)浮遊水晶(クリスタル)降着装置(ギア)昇降舵(フラップ)全て異常無し(オールグリーン)!」


 ルイーゼからの報告を受け、アレクは浮遊(フローティング)水晶(クリスタル)に魔力を加えるバルブを開く。


「ユニコーン・リーダー、離陸(テイクオフ)!」


 アレクの声の後、大きな団扇(うちわ)を扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。


発進(ゴー)!」


 アレクは、クラッチをゆっくりと繋ぎ、スロットルを開ける。


 プロペラの回転数が上がり、風切り音が大きくなると、アレクとルイーゼの乗る機体ユニコーン・リーダーは、加速しながら飛行甲板の上を進む。


 やがて飛行甲板の終わりまでくると、二人の乗るユニコーン・リーダーは大空へと舞い上がった。






 二人の乗るユニコーン・リーダーは飛行空母の上を旋回して、小隊の仲間が離陸してくるのを待つ。


 直ぐにアルとナタリーが乗るユニコーン二号機が飛行空母を発進し、上昇してくる。


 続いて、ドミトリーとナディアが乗るユニコーン三号機とエルザとトゥルムが乗るユニコーン四号機が飛行空母から発進して上昇してくる。


 四機全てが揃ったユニコーン小隊は、自分達が偵察を担当する地域を目指して、編隊を組んで向かった。


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