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第三百四話 初撃

 空中都市イル・ラヴァーリに向かう教導大隊の編隊は、大きく四つの雁行陣を組んでいた。


 最前列の第一陣がアレク達、二年生の平民組。


 第二陣が二年生の貴族組。


 第三陣がミネルバ達、一年生の平民組。


 最後尾となる第四陣が一年生の貴族組であった。


 今回の作戦は、ジカイラとヒナも飛空艇で出撃しており、大隊の中央となる第二陣と第三陣の間に位置取りしていた。


 ジカイラは口を開く。


「ヒナ、手旗信号を頼む。『全機、先頭のユニコーン01に続け。警戒を怠るな』だ」


「了解!」


 ヒナは、ジカイラの言葉を手旗信号で教導大隊の僚機に伝える。






 アレクとルイーゼは、教導大隊の先頭を飛んでいた。


 地図を手に時計と航法計器を見ながら、ルイーゼは口を開く。


「アレク。予定位置に到達。高度を上げて」


「了解」


 アレクは操縦桿を引き、機体の高度を上げる。


 アレクとルイーゼの乗るユニコーン01が高度を上げて層雲と呼ばれる雲の中に入ると、教導大隊の各機もユニコーン・リーダーに続いて高度を上げて層雲の中に入る。


 密度の薄い層雲の中は、真っ白であったものの明るく、アレクは雲の中に居ても不安に感じる事は無かった。


 





 やがてアレクとルイーゼの乗るユニコーン・リーダーは、予定高度に到達し、層雲を抜ける。


 機体が層雲を抜けた瞬間、快晴による強い日差しが降り注ぎ、アレクは一瞬、目が眩む。


 層雲を抜けて明るさに目が慣れてくると、そこには澄んだ青い空が広がっていた。


 高度を上げた事により、顔を撫でる風も湿気の無いひんやりとしたものに変わる。


 アレク達の飛空艇は、それぞれ白い飛行機雲を造って曳き始める。






 そして、雲を抜けた向こうに、アレク達の目の前にそれは現れる。


 空中都市イル・ラヴァーリであった。 


 飛空艇で飛んでいるアレク達からは、層雲でできた広がる雲海に浮かぶ巨大な島のように見える。


 ルイーゼは、出現した空中都市イル・ラヴァーリの姿に目を奪われ思わず口を開く。


「・・・凄い。雲の海に浮かんでいる大きな島みたい」


 アレクもルイーゼの呟きを聞いて思わず口を開く。


「・・・これが、空中都市イル・ラヴァーリ。空中港は、・・・正面か」


 アルも目の当たりにした、その都市に目を見開く。


「すげぇ・・・。街ひとつ、空に浮いているのかよ」


 ナタリーも呟く。


「大きい・・・」


 トゥルムも驚いて呟く。


「人にこんなものが・・・、空に浮かぶ、あの島を人が造ったというのか・・・?」


 ナディアは、皮肉交じりに呟く。


「こんなものを造った人達は、自分が神様にでも、なったつもりだったんでしょ」


 ドミトリーも驚いて呟く。


「街ごと空に浮かべるなど・・・」


 エルザが空中都市イル・ラヴァーリを眺めていると、空中港の周辺でチカチカとオレンジ色の光が瞬き、白い煙が立ち上る。


 ヴェネト共和国軍がアレク達に向けて大砲を発射する発射光と発砲煙であった。


「ヴェネト共和国軍の発砲を確認! 敵が撃ってきたわ!!」


 エルザは、手旗信号でヴェネト共和国軍の発砲を僚機に伝える。






 ルイーゼは、エルザの手旗信号を読み上げる。


「エルザからよ。『ヴェネト共和国軍の発砲を確認、各機注意せよ』」


 アレクは、ルイーゼの言葉に答える。


「こっちはまだ、二千以上離れているのに? 敵の大砲の有効射程圏外だぞ?」


「敵の大砲は、こっちには届かないってこと?」 


「そうだ。・・・デタラメに撃ってる感じだ。ヴェネト共和国軍の練度は、低いみたいだな」





 アレクのヴェネト共和国軍への評価は、正しかった。


 空中港の周辺から次々と発射炎らしきオレンジ色の光が瞬き、発砲煙とみられる白煙が立ち上る。


 だが、ヴェネト共和国軍の対空砲火の砲弾は、アレク達には届かなかった。





 ルイーゼは、航法計器を見ながら口を開く。


「アレク! そろそろよ!」


 アレクは答える。


「各機へ伝達! 主砲斉射用意! 目標、敵対空砲台!」


「了解!」


 ルイーゼは、アレクからの指示を手旗信号で僚機に伝える。


 ナタリーは、ルイーゼからの手旗信号を読み上げてアルに伝える。


「アル! アレクからよ。『主砲斉射用意。目標、敵対空砲台』」


 ナタリーの言葉に、アルは口元を緩ませる。


「了解。いいねぇ、一斉射撃。いよいよだぜ・・・。主砲発射タイミング、ユニコーン・リーダーに同調!」




 アレク達は、主砲の照準器の中心に空中港に配置された砲台を捕らえる。


 ひと呼吸の後、アレクは号令を下す。


「撃て!!」


 アレクの号令に合わせてルイーゼが勢い良く手旗を振り下ろすと、教導大隊の第一陣である二年生平民組の各飛行艇が一斉に主砲を発射する。


 アレク達が一斉射撃した砲弾は、各飛空艇から空中港周辺の砲台目掛けて真っ直ぐに飛んで行く。





 砲弾は、次々とヴェネト共和国軍の砲台に命中し、砲台を破壊して爆発煙を上げていく。


 ルイーゼは口を開く。


「第一撃の命中を確認! アレク、やったわ!」


 アレクは答える。


「いいぞ! 各機へ伝達! 『第一陣、戦闘増速! これより敵空中港に突入する!!』」


「了解!!」


 ルイーゼがアレクからの指示を手旗信号で僚機に伝えると、アレク達の第一陣は、空中港に突入するべく加速していく。





 ヒナは、ルイーゼの手旗信号を見てジカイラに伝える。


「ジカさん! 第一陣の攻撃は成功よ!」


「よし! 第二陣以降も、第一陣に続いて砲撃の後に突入! ヒナ、オレ達も前に出るぞ!」


「了解!!」


 ジカイラとヒナの乗る飛空艇は、加速してアレク達第一陣の後を追う。



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