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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十章 ホラント独立戦争
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第二百八十四話 帰寮、母からの手紙

 アレク達の乗る飛行空母ユニコーン・ゼロは、士官学校併設の飛行場に到着する。


 ユニコーン小隊の面々は、飛行空母のラウンジにいた。


 アレクは、窓の外の景色を眺めながら呟く。


「・・・今回のホラント遠征は、良い事が無かった。無駄足だったかな・・・」


 ルイーゼは、暗い表情のアレクに微笑みながら答える。


「そう? 私は楽しかったわよ」


 アルは、吹っ切れたように口を開く。


「ま、物事、上手くいく時もあれば、今回みたく上手くいかない時もあるさ」


 ナタリーもアルに続く。


「そうよ、アレク。気にし過ぎよ」


 ナディアは悪戯っぽくアレクに告げる。


「いいじゃない? 戦いは常に勝てるとは限らないわ。・・・私は、もう少し遠征を続けてアレクの『愛の奴隷』のままでいたかったのに」


 エルザは、不満を口にする。


「私は陸路や海路より、この飛行空母で遠征したかったな。・・・居心地良いから。自炊しなくても、温かい食事は出来上がっているし、冷たいデザートはあるし」


 トゥルムも口を開く。


「隊長。私は今回の遠征で新しい目標が出来たぞ。父の仇である『ロロトマシの討伐』だ」


 ドミトリーも同意する。


「今回の遠征には、皆、思うところがあるだろう。拙僧も打倒ダークエルフを目標として、上級職になれるよう鍛錬に励むとしよう」


 アレクは呟く。


「『打倒ダークエルフ』か・・・」





 そう呟くとアレクは天井を見上げて考える。


 アレクの兄ジークは、トラキア戦役でダークエルフと互角に戦った。


 父である皇帝ラインハルトは、三人のダークエルフを相手に戦い、彼らを圧倒した。


 アレクは、二人と同じ上級騎士(パラディン)でありながら、ホラントでダークエルフのシグマと戦い、苦戦していた。


(私と兄上、父上との差は、『経験の差』か・・・) 





 アレク達ユニコーン小隊がラウンジで寛いでいると、士官に連れられたエステル姉妹がラウンジに現れる。


 エステルは、アレクに御礼を言う。


「アレク様! ありがとうございました!」


 アレクがホラントの奴隷市場で買って来た二人の姉妹エステルとエミリーは、カルラと同じ孤児院に預ける事にして、以前、カルラ達をエスコートした士官にエステル達のエスコートをお願いしていた。


 アレクは答える。


「・・・そうか。エステル達は孤児院に行くんだったな」


 アレクからの問いに、エステルは笑顔で答える。


「はい! 奴隷だった私達が、食べる物も住む所も心配無く、学校で勉強できるなんて・・・。夢みたいです! 何もかも、アレク様のお陰です!」


 エステルの言葉に、アレクは照れながら答える。


「いやぁ、それほどでも・・・」


 エステルは真剣な顔で続ける。


「私、大人になったら、必ずアレク様に御恩返しに来ます! お約束します! ありがとうございました!」


 エステル達は、アレク達にそう告げると士官に連れられて飛行空母を降りて行った。




 ルイーゼは、アレクに話し掛ける。


「私達、ダークエルフには勝てなかったけど、奴隷市場からあの子達を救えたじゃない」


 ナタリーもルイーゼに続く。


「そうよ、アレク。ホラントの人達だって、カスパニアから独立する戦いを始められた訳だし。私達のホラント遠征は無駄じゃなかったのよ」


 ルイーゼとナタリーの言葉にアレクは表情を明るくする。

 

「そうだな。オレ達がホラントに遠征したのは、無駄じゃなかったよな」


 アレクが元気を取り戻したことに、小隊の女の子達は安心する。


 エルザは口を開く。


「明日から、また学校だね」


 ナディアは答える。


「そうね」




 アレク達は、飛行空母ユニコーン・ゼロから下船して寮へ戻る途中、夕食の材料の買い出しのため、補給処へ立ち寄る。


 道中、豪華な馬車や見慣れない顔の者達が士官学校の敷地内を行き来している事に目を止める。


 アレクは、すれ違った馬車を見ながら呟く。


「士官学校の敷地内なのに、ずいぶん豪華な馬車だな・・・」


 アルは答える。


「どこかの貴族の馬車だろ?」


 アレクは、アルに尋ねる。


「なんで貴族の馬車が士官学校に?」


 アルは、アレクからの問いに呆れたように答える。


「おいおい。アレク、忘れたのか? 新学期だからさ。寮に入る貴族組の新入生を乗せて、ここに来てるに決まってるだろ」


 アレクは、アルの言葉に思い出したように呟く。


「そうか。新学期か」


 アレク達がホラント遠征から士官学校に戻ると、一年生として入学する新入生達が寮に入るところであった。





 寮に戻ったアレク達は、食堂での夕食を終えると、それぞれ入浴を済ませて自分の部屋に戻る。


 アレクとルイーゼは、寮の自分の部屋に戻る。


 アレクは、寮の部屋でホラント遠征で留守にしていた間に届いていた自分宛の手紙を見つける。


「・・・手紙?」


 羊皮紙の手紙を手に取ると、施された封印の模様に目を留める。


 封印には帝室の紋章が施されていた。


「母上・・・?」


 アレクは、封印を切って巻かれていた羊皮紙を広げ、綴られている手紙の内容に目を通す。





「はぁあああ!?」


 ルイーゼは、手紙を読んでいる最中に、突然、素っ頓狂な声を上げたアレクに驚く。


「・・・アレク。どうしたの? 皇妃様からの手紙に何か?」


 アレクは、信じられないといった顔でルイーゼに告げる。


「妹が・・・。『ミネルバが、士官学校に入学するからよろしく』って・・・」


「ミネルバ様が!?」


 アレクの言葉にルイーゼも驚く。





 ミネルバ・ヘーゲル・フォン・バレンシュテット。


 皇帝ラインハルトと皇妃ナナイの長女であり、帝国第三皇女にしてジークとアレクの妹であった。


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