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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十章 ホラント独立戦争
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第二百八十二話 ホラント独立戦争勃発、教導大隊の撤退

 ライン・マース・スヘルデから退却したアレク達は、数日掛けてゾイト・ホラントの白き風亭へ帰還する。


 帰還したアレク達をジカイラ達が出迎える。


「よくやった。御苦労だった」


 アレクは、ジカイラに任務失敗を報告する。


「ジカイラ大佐。属州総督府の襲撃に失敗しました。・・・申し訳ありません」


 ジカイラは、落ち込むアレクを励ます。


「ダークエルフの集団を相手に一人の犠牲者も出さずに撤退してきたんだ。お前達は十分、良くやった」


 アレクは力無く答える。


「・・・はい」


「オレ達の仕事は終わりだ。帰国するぞ」


 ジカイラがアレクにそう告げると、ホラント王国国民会議のリシー議長が納屋から現れる。


「おぉ! ジカイラ大佐。全員、戻って来たようですな。御苦労様でした!」

 

 ジカイラは答える。


「ん~。総督は捕まえ損ねたが、他は成功したな」


 リシーは興奮気味に語る。


「とんでもない! 大変な戦果です! スフラー・フェン・ハーフェンの奴隷市場、メストレーヒの強制収容所は解放され、ホラント独立を志す同志たちも各地の主要都市で一斉蜂起を決行! 同志たちはホラントのほとんどの主要都市を制圧する事ができました! 教導大隊の支援のお陰です!!」


 マイヨは、傍らのリシーに尋ねる。


「それでは、議長。・・・いよいよですか?」


「うむ! 明日、将兵達を集めて宣言しよう!」


 マイヨの言葉にリシーは大きく頷く。




 アレク達が白き風亭の食堂に入ると、宿屋の女将とエステル達がアレク達を出迎える。


「御主人様! お戻りになられたのですね!」


 アレクは苦笑いしながら答える。


「ああ。それと、『御主人様』は辞めてくれ」


 エステルは、ハッと思い出したようにアレクに謝る。


「申し訳ありません。アレク様」


「いいよ。それと・・・女将さん、二人の面倒を見てくれて、ありがとうございました」


 アレクは、留守中、エステルとエミリーの面倒を見てくれた宿屋の女将にお礼を言う。





-- 翌日。


 ゾイト・ホラントの白き風亭の前に、ホラント独立義勇軍の者達が整然と整列する。


 ジカイラやアレク達は、整列する独立義勇軍の脇に並ぶ。


 義勇軍の並ぶ前に造られた演台の上にリシーとマイヨ、ケーニッヒが昇って並び立つ。


 リシーは、独立義勇軍の志士達を前に演説を始める。


「諸君! 長きに渡って耐え忍んだ苦難の歳月、誠に御苦労だった! 先般、黒い剣士殿たちの助けもあり、我らが独立義勇軍は、ホラント各地で一斉に蜂起し、主要都市を制圧することが出来た。・・・残念ながら総督は捕らえられなかったが、十分な戦果だ!」


「おおっ!!」


 リシーの演説に整列している独立義勇軍の兵士達は、歓声を上げる。


 リシーは右手を挙げて兵士達の歓声に答えると、演説を続ける。


「諸君! 私はホラント王国国民会議の議長としてホラント王国の独立を宣言し、カスパニア王国に対して宣戦を布告する! 独立を勝ち取る勝利の日まで、共に戦おうぞ!!」


「おおおーっ!!」


 リシーの演説に独立義勇軍の兵士達は、興奮気味に歓声を上げて盛り上がる。




 歓声を上げて盛り上がる独立義勇軍を眺めながら、ジカイラは傍らのヒナに耳打ちする。


「『ホラント独立戦争』の始まりだな」


「そうね」


 


 リシーの演説が終わると、ジカイラは教導大隊に指示を出す。


「皆、良くやった。オレ達の仕事は終わりだ。帝国西部方面軍のナナシ伯爵がユニコーン・ゼロでゾイト・ホラント沖に来ている。帰国するぞ」


 ジカイラからの指示を受けたアレク達は互いに顔を見合わせるが、白き風亭の宿を引き払い、ゾイド・ホラント港へ向かう。

 

 教導大隊の乗る船が港から沖に出ると、飛行空母ユニコーン・ゼロが公海上で教導大隊が乗る船を待っていた。





 洋上の船から揚陸艇で飛行空母ユニコーン・ゼロに乗り込んだ教導大隊をナナシ伯爵が飛行甲板で出迎え、労う。


「ジカイラ大佐。御役目、大儀であった」


「恐れ入ります」


 ジカイラはナナシ伯爵に尋ねる。


「・・・しかし、ナナシ伯爵。こんなに早く教導大隊に撤退命令が出るとは。・・・ホラントの独立戦争は、始まったばかりですよ?」


 漆黒のフードを被ったまま、ナナシ伯爵はジカイラに答える。


「くっくっくっ。ジカイラ大佐。・・・帝国にとって『ホラント独立戦争』など、どうでも良いのだよ。・・・ホラントがカスパニアから独立に成功したなら、カスパニアは北方侵略の拠点を失う。ホラントが独立に失敗しても、独立派による反乱を鎮圧するため、カスパニアは前線から兵力を割かねばならず、世界大戦での兵力的優位を失う。・・・どう転んでも帝国に損は無い」


 ジカイラは再びナナシ伯爵に尋ねる。


「それでは、何故、教導大隊のホラント派遣を?」


 ナナシ伯爵は答える。


「独立派がホラント各地で一斉蜂起する『きっかけ』は、必要だろう? 帝国は独立派が一斉蜂起できるように支援を行った。・・・教導大隊に損害は無く、独立派はホラント各地で蜂起し、主要都市を制圧した。・・・見事な戦果だ。ジカイラ大佐」


 驚くジカイラに、今度はナナシ伯爵が尋ねる。


「むしろホラントの属州総督府にダークエルフの集団が居たと聞き及んでいる。そちらの方が帝国にとって深刻な問題だ。帝国本土のすぐ隣の地にダークエルフの拠点がある事は、帝国本土の安全保障上、見過ごす事はできん。直接戦った者達から話が聞きたい」


「ダークエルフと戦ったのは、ユニコーン小隊です」


 ジカイラの言葉にナナシ伯爵は驚いたように、フードを深く被ったままの顔をジカイラに向ける。


「ほう? 第二皇子がダークエルフ達と戦ったのか!? ・・・詳しく話を聞かねばなるまい」


 ナナシ伯爵はジカイラにそう告げると、漆黒のローブを纏いフードを深く被ったまま、ジカイラの元から去って行った。


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