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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十章 ホラント独立戦争
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第二百七十話 出発、トラキア離宮

 教導大隊の各小隊は、司令部の防衛を任されたセイレーン小隊とそのサポートに当たる貴族組ヘルハウンド小隊を除き、それぞれ任地へと向かう。


 任地に向かうにあたり、アレクはエステル達を白き風亭の女将に預ける事にした。


 アレクが女将に二人の姉妹を『少しの間、預かって欲しい』と頼むと、気の良い宿屋の女将は快く引き受けてくれ、エステル達姉妹に厨房での仕事を手伝わせ、可愛がってくれた。





 アレク達は、再び御者付きの二台の馬車を手配する。


 白き風亭の前で宿屋の主人と女将夫婦とエステル達姉妹は、馬車に乗り込むアレク達を見送る。


 エステルはアレク達に頭を下げて見送る。


「行ってらっしゃいませ」


 アレクは笑顔で答える。


「すぐに戻ってくる。元気で」


 アレク達は馬車に乗り込むと、任地である属州総督府のある『ライン・マース・スヘルデ』へと向け馬車を進めた。


 ルイーゼは、アレクの傍らに座り話し掛ける。


「いよいよ戦地ね」


 アレクは答える。


「ああ」


 向かいの席に座るナディアも口を開く。


「お姉さんは、カスパニアには容赦しないわよ。ふふふ」


 ナディアの隣のエルザも口を開く。


「ユニコーンの獣耳(けもみみ)アイドル、エルザちゃんの活躍にも乞うご期待ね!」


 エルザの言葉にアレク達四人は笑う。


 アレク達に少し遅れてアレク達ユニコーン小隊のサポートに当たる貴族組の馬車が付いてくる。


 ルイーゼはアレクに尋ねる。


「アレク。私達のサポートに当たる貴族組の小隊って??」


 アレクは素っ気なく答える。


「・・・バジリスク小隊さ」


 アレクの答えに他の三人が驚く。


「ええっ!?」


 エルザは尋ねる。


「あのオカッパ頭たちが一緒なの!?」


「・・・そうだ」


 ナディアも口を開く。


「あのオカッパ頭。また変なマネしたら、今度こそ『割礼』してやるんだから!」


 ナディアの言葉に再びアレク達は笑う。






-- 時間を少し戻した 帝国軍 総旗艦 ニーベルンゲン


 ジーク達の乗るニーベルンゲンは、昼過ぎに帝国領トラキアの州都ツァンダレイに向かっていた。


 夜。


 ジークは、閨にアストリッドを呼んでいた。


 ジークが第二妃であるアストリッドを閨に呼ぶのは久しぶりであった。


 私室のドアをノックする音の後、侍従の声がする。


「殿下。アストリッド様をお連れ致しました」

 

 ベッドの上で寛いだまま、ジークが答える。


「入れ」


 侍従がドアを開け部屋の中に向かって深々と一礼すると、その前を、湯浴みを終えた後であろうバスローブ姿のアストリッドが歩いてジークの私室に入って来る。


 私室に入ったアストリッドは、ベッドの上で寛ぐジークの傍らに背を向けて座る。


 自分に背を向けるアストリッドの様子を見たジークが尋ねる。

 

「・・・どうした?」


 背を向けたまま、アストリッドが答える。


「ジーク様は、ソフィアばかり閨に呼んで、アストリッドの事など忘れてしまったのかと思ってました」


 ジークは身を乗り出してアストリッドをなだめる。


「アストリッド、・・・拗ねているのか?」


 次の瞬間、アストリッドは振り向くと、両手でジークの両頬を軽く摘まんで左右に引っ張る。


「いーーーだ!!」


 アストリッドの悪戯にジークは苦笑いする。


「こらっ!!」


 苦笑いするジークにアストリッドはキスする素振りを見せて答える。


「チューしてくれたら、許してあげます」


 ジークは微笑みながら答える。


「判った」


 ジークは、キスする素振りをしたままのアストリッドの頬に軽く右手を添えると、キスする。


「んっ・・・んんっ」


 ジークからキスされたアストリッドは、両腕をジークの首に回して抱き付くと、再びキスする。


「ジーク様。寂しかったです」


「済まなかった」


 その夜、二人は熱く愛し合った。

  




--翌朝。


 侍従がジークの私室のドアをノックした後、報告する。


「殿下。まもなくトラキアの州都ツァンダレイに到着致します」


 傍らで穏やかな寝息を立てるアストリッドを抱いたまま、ジークが答える。


「判った」


 旧トラキア連邦の首都であったこの街は、帝国領トラキアの州都となっていた。


 ツァンダレイにあった、かつてのトラキア連邦政府関連の建物、連邦議会会議場や議長府などの建物は取り壊され、巨大な『トラキア離宮』が建設されていた。


 トラキア離宮。


 帝都にある皇宮には及ばないものの、トラキアの人々にバレンシュテット帝国の力と富を見せつけるよう広大な敷地に豪華に建設された白亜の宮殿は、神殿のような造りになっており、トラキア開拓という勅命に当たる皇太子ジークがトラキアに滞在する時のために造られた宮殿であった。


 トラキア離宮に併設された飛行場にニーベルンゲンは着陸する。






 儀仗兵が整列する中を、ジークは妃達を連れてタラップを降り、レッドカーペットの上をトラキア離宮へと歩いて行く。


 目の前に(そび)え立つ豪華な白亜のトラキア離宮を見たフェリシアとカリンが驚く。


 フェリシアは呟く。


「これは・・・!?」


 カリンも呟く。


「・・・凄い」


 ジークは、歩きながら妃達に話す。


「『トラキア離宮』だ。皆の部屋もある。・・・さぁ、中に入ろう」


 ジークは、三人の妃達を伴いトラキア離宮の中へと歩いて入って行った。

 

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