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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十章 ホラント独立戦争
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第二百六十九話 一斉蜂起の作戦計画

 カスパニア国境を越えたジカイラとヒナがゾイト・ホラント市内の『白き風亭』にやって来たのは、深夜であった。


 先の港湾自治都市群の探索勅命の際に、国境を越境して侵攻してきたカスパニア軍十万を単騎で撃退したジカイラとヒナは、カスパニアでは『黒い剣士と氷の魔女』と呼ばれて恐れられており、陽のある日中にゾイト・ホラント市内に潜入するのは困難だとジカイラが判断したためであった。


(詳細は、拙著『アスカニア大陸戦記 黒衣の剣士と氷の魔女』を参照)



-- 翌朝。


 ジカイラとヒナの二人、『黒い剣士と氷の魔女』の到着を受け、白き風亭のホラント独立派の志士達は、興奮に沸く。 


 朝食の後、野戦指揮所のような納屋の二階<ホラント独立派司令部>にホラント独立派の志士達と、帝国から派遣されたアレク達教導大隊、ジカイラとヒナが集まり、作戦会議が開かれる。


 ホラント王国親衛隊のケーニッヒ少尉は、壁にホラントの大きな地図を張り出す。


挿絵(By みてみん)


  リシーは、ホラントの地図を指し示しながら作戦計画を説明し始める。


「皆さん、良く集まってくれました。我々の作戦計画を説明致します。・・・まず、ホラントの南西端、ここがこの司令部のあるゾイト・ホラント。そして、一斉蜂起を計画している主要都市の位置関係ですが、このようになっております」


 リシーは続ける。


「ホラントの州都であり、属州総督府のある『ライン・マース・スヘルデ』。巨大な奴隷市場のある『スフラー・フェン・ハーフェン』。巨大な強制収容所がある『メストレーヒ』。カスパニア軍の物資集積地である『ヘメーンテ・デルフト』・・・この四都市です」


 ジカイラは呟く。


「属州総督府やカスパニア軍の物資集積地は、ともかく。・・・奴隷市場と強制収容所を狙うのか?」


 リシーは続ける。


「この二つの街の施設は巨大です。カスパニアの奴隷市場と強制収容所を襲撃して、何万人とも言われている捕らわれている人々を解放します」


 ホラント王国親衛隊のマイヨは、補足説明をする。


「解放した人々にも蜂起に加わって貰おうと考えている」


 ジカイラは、尋ねる。


「カスパニアの統治機構である属州総督府の制圧が最優先だろう。ここを制圧するためにも、ホラントに残るカスパニア軍をどこかに引き付けておきたいが・・・」


 リシーは、地図上で最も東にある『ヘメーンテ・デルフト』を指しながら続ける。


「それなら、属州総督府から最も離れたところにある、カスパニア軍の物資集積地の『ヘメーンテ・デルフト』。ここにカスパニア軍を引き付けるのが良いでしょう」


 アレクは手を挙げて質問する。


「質問してもよろしいですか? ・・・『ヘメーンテ・デルフト』にカスパニア軍を引き付ける囮役は誰が・・・?」


 ジカイラは苦笑いしながら答える。


「メンバー的に、オレとヒナ、そしてマイヨ大尉だろうな。『黒い剣士と氷の魔女』、そして『ホラントの蒼き鷹』が揃って現れ、軍の物資集積地を襲撃したとなると、カスパニア軍は、さぞ大慌てするだろうよ」


 リシーは頷きながら追従する。


「カスパニアは、ホラントに残る全軍を『ヘメーンテ・デルフト』に向けるでしょうな」


 ジカイラは口を開く。


「オレとヒナは、『ヘメーンテ・デルフト』に向かう。セイレーン小隊は、この司令部の守備を。フェンリル小隊は、奴隷市場のある『スフラー・フェン・ハーフェン』へ。グリフォン小隊は、強制収容所がある『メストレーヒ』へ。そして、属州総督府のある『ライン・マース・スヘルデ』には、ユニコーン小隊が向かえ」


 各小隊長達は答える。


「了解しました」


 ジカイラは続ける。


「貴族組の各小隊は、小隊毎に平民組各小隊のサポートに当たれ」


「了解しました」


 リシーは補足する。


「もちろん、帝国軍の各小隊にはホラント独立義勇軍の部隊を付けます」


 ジカイラは尋ねる。


「『ヘメーンテ・デルフト』に行くには、どれくらい掛かるんだ?」


 ケーニッヒ少尉は答える。


「御三方だけなら早馬で二日といったところで。ホラント独立義勇軍の部隊は、既に現地に潜伏して待機しております。御三方の到着次第、いつでも行動可能です」


 マイヨは答える。


「・・・なら、早速、向かうとしよう。・・・黒い剣士殿、氷の魔女殿。御二方、よろしいですか?」


 ジカイラは快諾する。


「構わないさ。・・・そうすると、一斉蜂起の作戦開始は二日後だな?」


 リシーは答える。


「そうですね。御三方が現地に到着する二日後に一斉蜂起を決行しましょう」


 ジカイラとヒナは席を立つと、部屋に残っている者達に告げる。


「判った。今から向かう。・・・ヒナ、行くぞ」


「判ったわ」


 マイヨも席を立つと、副官であるケーニッヒ少尉に告げる。


「私も今から現地に向かう。ケーニッヒ少尉、リシー議長を頼むぞ」


「判りました」


 ジカイラとヒナ、マイヨの三人は、納屋の二階にあるホラント独立派司令部を後にし、任地へ向かって行った。


 この日の作戦会議によって、ホラント独立派の志士達からなるホラント独立義勇軍は、二日後にホラント各地の主要都市で一斉蜂起を決行することを決め、アレク達も一斉蜂起のための準備を始めた。



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