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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十章 ホラント独立戦争
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第二百六十四話 港湾自治都市群、中核都市デン・ヘルダー

 アレク達とジカイラ達が乗る汽車は、港湾自治都市群の中核都市であるデン・ヘルダーに迫る。


 港湾自治都市群に三つある主要な中核都市の一つである大きな港町は、街の周囲を城壁を築いて囲んでおり、まさに都城といった風情であった。


 アレク達の乗る汽車は、城門を潜って市街地に入り、鉄路を進む。


 自治領主を廃して皇帝直轄領となったデン・ヘルダーは、帝都と港湾自治都市群を結ぶ北西鉄道が最初に到達する中核都市の一つであり、アスカニア大陸と新大陸との貿易拠点の港町として発展していた。


 繁華街の中心に作られた駅に汽車が到着、アレク達は列車から降りて駅前の広場に出る。


 駅前の広場から城門まで続く大通りには数多くの露店が並び、飲食しながら露店に屯する冒険者達と、商売に勤しむ商人達で溢れていた。


 アレクは、街の大通りを眺めながら呟く。


「着いたな」


 ルイーゼは、アレクの傍らで答える。


「ええ」


 やがてジカイラとヒナが駅の出口から出てきて、駅前に居るアレク達の元に来る。


 ジカイラは、アレク達に話し掛ける。


「お前達、ここに居たのか」

 

 アレクは答える。


「はい」


 ヒナは、遠い目をしながら大通りを眺める。


「前に来た時と随分変わったわね。この街・・・」


 ジカイラは、苦笑いしながら答える。


「十七年前のあの時、この街は傭兵団と娼婦で溢れ返る酒保だったな」


「そうね」


 二人は、以前、探索任務でこの街に来た時の思い出に想いを巡らせていた。





 アレク達は、駅の窓口でホラント行きの船便を手配する。


 アレクは、入手にした船便の乗船券を見ながら呟く。


「『ゾイト・ホラント港行き』か。・・・いよいよだな」


 アルは、アレクに尋ねる。


「お? アレク、もう乗船券が手に入ったのか?」


「うん。二部屋取ったよ」


 アレクはそう言ってアルに乗船券を見せる。


 アルは、船便の乗船券を見て驚く。


「これ、一等船室の乗船券じゃないか! 高かっただろ!?」


 アレクは、苦笑いしながら答える。


「四人一部屋だけどね。まぁ、軍の経費だから」


 エルザは笑顔で告げる。


「初めての船旅なんだし、贅沢に行きましょ!」


 ナディアも笑顔で答える。


「私も船旅は初めて。楽しみだわ!」


 ルイーゼは、浮かれる二人をたしなめる。


「もぅ~、二人とも。遊びじゃないのよ」


 ナタリーは、ルイーゼに尋ねる。


「ルイーゼは、船で旅したことはあるの?」


 ルイーゼは答える。


「いえ。私も初めて」


「そうなんだ」

 

アレクは、ジカイラに告げる。


「大佐。自分達は先に船に乗りますので、失礼します」


 ジカイラは、笑顔で答える。


「おう。オレ達は、もう少しこの街を見て回る。ゾイト・ホラントの白き風亭で会おう」


「判りました」


 アレク達はジカイラ達と別れ、大通りをデン・ヘルダーの港に向かう。






 アレク達の目にデン・ヘルダーの港が見えてくる。 


「わぁああ!」


「すげぇ・・・」




 心地よい潮風が顔を撫で、カモメや海鳥の鳴き声が聞こえてくる。


 港には、世界各地から寄港したであろう大型の船舶が停泊していた。


 埠頭は賑わっており、活気があった。


 起重機で岸壁に接舷している船から荷馬車に荷降ろしされる木箱や、積み込まれる木箱。


 船から降りてくる人々や、船に乗り込む人々。


 港湾荷受けで(せわ)しなく動き回る人夫達。


 船から降りてきた旅客目当てに飲料や果物を売る露店。


 そのどれもが、アレク達の目には新鮮であった。




 初めて見る大きな貿易港の様子に、アレク達は感嘆し、女の子達は目を輝かせながら笑顔を見せる。


 アレクは、埠頭に接舷している大型船を見上げながら呟く。


「・・・凄い。あの大型船は新大陸まで行っている船か!?」


 アルは、したり顔で解説する。


「ガレオンだ。おそらく新大陸とアスカニア大陸を行き来している武装商船だな」


 トゥルムも埠頭に接舷している帆船を見て感嘆する。


「初めて飛空艇を見た時も驚いたが、この港も凄い。大型船がこんなにたくさんあるとは!」


 ドミトリーも感慨深げに呟く。


「それだけ帝国の貿易が活発なのだ。経済が発展している証左だろう」


 女の子達は、飲料や果物を売る露店の前に集まっていた。


 四人はそれぞれ、カットされ竹の器に盛られたマンゴーを買うと、竹の器に付いていた楊枝でマンゴーを一欠片、突き刺して食べる。


 マンゴーは甘く、程良く冷えていた。


「美味しい!」


「甘い!」


 ナディアは、アレクの元に歩いて来て、楊枝で突き刺したマンゴーを勧める。


「はい、アレク。ア~ン」


 アレクはナディアに促されるまま口を開けると、ナディアは楊枝で突き刺したマンゴーをアレクに食べさせる。


 ナディアは、アレクに尋ねる。


「どう? このマンゴー、美味しいでしょ?」


「うん」


 ナディアに続いてエルザもアレクの元にやって来る。


「ああっ! ナディア、ズルい! 自分だけ抜け駆けして!!」


 エルザもナディアと同じように楊枝で突き刺したマンゴーを見せ、アレクに口を開ける事を促す。


「アレク。こっち向いて。ア~ン」


 アレクが口を開けると、エルザは楊枝で突き刺したマンゴーをアレクに食べさせる。


「私のマンゴーも美味しいでしょ?」


「うん」


 アルは、三人を冷やかす。


「まったく、明るいうちから三人で乳繰り合って。・・・で、アレク。オレ達はどの船に乗るんだ?」


 アレクは、マンゴーを飲み込んで答える。


「あの船だな・・・」


 アレクが指し示す先には、大砲が少ない大型のガレオン船があった。


 アルは呟く。


「大砲が少ない。・・・『商用ガレオン』ってやつだな。ここからホラントまでは沿岸航海で四時間くらいだし、外洋に出る訳じゃないから、搭載する大砲も少しで良いって事か」


 トゥルムは、アルの言葉に感心する。


「アル。流石に詳しいな」


 アルの父、黒い剣士ジカイラは元海賊であり、アルは父ジカイラから様々な船の事を教わっていた。


 アルは得意気に答える。


「まぁね!」


 アレクは、皆に告げる。


「早速、乗ろう!」


「おぉ」


 アレク達は、船が接舷している埠頭で係員に乗船券を見せると、舷梯(げんてい)を登って船に乗り込んで行く。


 アレクは通路を歩いて手配した客室を探しながら呟く。


「五号室と六号室か」


 ルイーゼは、答える。


「そうね」


 部屋割りは、アレクとルイーゼ、ナディアとエルザが五号室。アルとナタリー、トゥルムとドミトリーが六号室であった。


 アレク達は、手配した客室にたどり着く。


「ここか」


 ドアを開けると、二段ベッドが二つある四人一部屋の一等客室があった。


 アレクは、想像していたより貧相な客室を見て呟く。


「うーん。イマイチ・・・」


 ルイーゼは、渋い反応を見せるアレクに答える。


「たまたま、今まで乗っていた飛行空母の部屋が豪華なだけよ。軍用列車より良い部屋じゃない」 


 エルザは上機嫌で客室に入って来ると、二段ベッドの上の段に陣取る。


「ふふ~ん。私、上のベッドね~」

 

 ナディアも上機嫌でエルザに続く。


「私も上ね~」


 アレクは、手配した客室の内装が貧相だと感じたが、女の子達は初めての帆船での船旅に喜んでいた。


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