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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第十章 ホラント独立戦争
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第二百五十七話 偽装の配役

 御前会議が終わり、応接室にはジカイラとヒナ、アレクとルイーゼが残っていた。


 ジカイラは口を開く。


「聞いてのとおりだ。・・・ヒナ、小隊長達を呼んできてくれ」


「判ったわ」


 ヒナは、教導大隊の小隊長達を呼びに行く。






 半時ほどで教導大隊の小隊長とその副官達が応接室に集まる。


 小隊長達が集まったのを見計らってジカイラは口を開く。


「集まったな。傾注せよ。新しい任務を伝える。・・・勅命により、教導大隊はカスパニア属州ホラントに潜入し、独立派を支援することとなった。作戦目標は、ホラントの独立だ」


 ジカイラの説明に学生達がざわめくが、ジカイラは説明を続ける。


「・・・皆、知ってのとおり、カスパニアの西方協商とスベリエの北部同盟の二つの陣営は、戦争状態にあり、バレンシュテット帝国は対外的にどちら側にも組しない中立宣言を出している。従って、今回の任務は、全て秘密裏に行う必要がある」

 

 ここまで話すと、ジカイラの口調は明るいものに変わる。


「と、まぁ、現在、確定している事項は、ここまでだ。我々の潜入方法や潜伏先、具体的な活動内容などの詳細は、これからホラント独立派と協議して決める必要がある」


 ブルクハルトはアレクに耳打ちする。


「・・・まだ、具体的な事は決まっていないのか」


 アレクは答える。


「そうだな」


 ジカイラは続ける。


「・・・一応、一週間後には、士官学校から出発する予定だ。各小隊は、それまでに職業替え(クラスチェンジ)や装備の購入など準備を済ませておくように。詳細は決まり次第、追って連絡する。以上だ」


 ジカイラの説明が終わったため、小隊長達はそれぞれ自分の小隊の仲間達のところへ帰って行く。


 アレクとルイーゼも応接室を後にした。






-- 三日後。


 アレク達教導大隊の小隊長達は、ジカイラからホラント独立支援の任務の詳細について指示を受ける。


 今回は飛行空母ユニコーン・ゼロは使わず、小隊毎に民間人に偽装して帝都から北西鉄道で港湾自治都市群へ向かい、海路でホラントへ潜入するというものであった。


 平民組の小隊長達での打ち合わせで、グリフォン小隊は行商人に偽装し、フェンリル小隊は大道芸人に、セイレーン小隊は巡礼者に偽装するとの事であった。


 アレクは、ユニコーン小隊が何に偽装したら良いか決めることが出来ず、悩んでいた。


 グリフォン小隊も、フェンリル小隊も、セイレーン小隊も『人間のみ』の小隊であり、アレク達のユニコーン小隊は、『人間以外の種族(亜人)が居る』ためであった。


 カスパニアは、種族融和を進める帝国とは異なる『亜人差別国家』であり、亜人には人権が無く、犬や猫と同じ扱いであった。


 蜥蜴人(リザードマン)のトゥルムや獣人(ビーストマン)三世(・クォーター)のエルザ、ドワーフのドミトリーやエルフのナディアの四人は亜人であり、どのように偽装しても目立つ存在であった。






 アレクが寮へ帰ると、既に辺りは暗く夜になっていた。


「すぐ晩御飯にするね」


 ルイーゼは帰って来たアレクにそう言うと、小隊の女の子達のいる台所へと戻る。


 食堂では、アル達、他の小隊の仲間達がアレクの帰りを待っていた。


 アルは、アレクが帰って来る姿を見て軽口を叩く。


「遅かったな。疲れただろ? 偉い人達の話は『長い』と相場が決まっているんだ」


 アレクは、苦笑いしながら答える。


「まぁね」






 夕食の時、アレクは小隊の仲間達にホラント独立支援の任務の詳細について説明する。


 カスパニア領属州ホラントへ潜入し、独立派を支援してカスパニアから独立させるという任務であり、帝国が対外的に中立を宣言している以上、自分達の活動は秘密裏に行う必要があった。


 アレクは他の仲間たちに相談する。


「みんな。ホラントに潜入するために、ユニコーン小隊は何に偽装したら良いと思う?」


 アレクからの問い掛けに、小隊の仲間達は考え始める。


 ルイーゼはアレクに尋ねる。


「ホラントは、カスパニアの属州なのよね・・・?」


「うん」


 アルも呟く。


「カスパニアの人間から見て、『まさか帝国軍がコレには偽装しないだろう』『帝国の人間ではないだろう』ってヤツに偽装しないとな」


 ナタリーはアルに尋ねる。


「例えば・・・?」


 アルはナタリーに答える。


「『奴隷商人』とか・・・」


 アルの言葉にアレクは驚く。

 

「『奴隷商人』だって!?」


 トゥルムは、口を開く。


「隊長。案外、名案かもしれんぞ? 幸い、ユニコーン小隊は、蜥蜴人(リザードマン)獣人(ビーストマン)、エルフにドワーフと各種族が揃っている。奴隷商人ならではの亜人の見本市だろう?」


 アレクは呟く。


「それはそうだけど・・・」


 ドミトリーも口を開く。


「うむ。拙僧も名案だと思うぞ。奴隷商人なら、各種族の者達を連れて歩いていても不思議は無い。それにカスパニアの者達も、まさか帝国軍が取り締まり対象である奴隷商人に偽装するとは思わないだろう?」


 アレクは、懸念を示す。


「けど、任務とはいえ、四人を奴隷扱いするなんて・・・」


 エルザは、アレクの隣に来ると、微笑みながらアレクと腕を組んで答える。


「あら? 何をいまさら・・・。私なんて、とっくにアレクの『愛の奴隷』よ!」


 ナディアもエルザとは反対側のアレクの隣に陣取って、アレクと腕を組んで答える。


「私もアレクの『愛の奴隷』よ! 御主人様、可愛がってね!」


 アルは、四人の亜人達の様子を見て偽装の『配役』を提案する。


「それじゃ、アレクが奴隷商人の主人。ルイーゼは奴隷商人の奥さん。オレは奴隷商人の用心棒で、ナタリーは奴隷商人のメイド。他の四人は奴隷ってことで良いか?」


 アルの提案にユニコーン小隊の者達は賛同する。


「良いぞ」


「良いね」


「賛成!!」


「異議なし!!」


 アレクの心配を他所に、小隊の仲間達はホラント独立支援任務による『奴隷商人』への偽装を好意的に受け止めてくれていた。 

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