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第二百四十三話 教導大隊vsスベリエ飛行艦隊(三)

 ぶどう弾に被弾したアレク達は、スベリエ飛行艦隊から距離を取って飛空艇の編隊の隊列を組み直す。


 アレクは、小隊メンバーの状況をルイーゼに再確認する。


「ルイーゼ。三人の怪我の具合は?」


 ルイーゼは答える。


「・・・三人とも骨折していると思う。出血もしているわ」


 報告を受けたアレクは決断する。


「ルイーゼ、手旗信号で伝えてくれ。『被弾した三機は、先にユニコーン・ゼロに帰還して手当てを受けろ』と」


「判ったわ」


 ルイーゼはアレクに言われた通り、手旗信号で他の三機にアレクからの指示を伝えると、アレクに尋ねる。


「アレクはどうするつもりなの?」


 アレクは答える。


「中隊の他の三小隊が戦闘中だ。引き続き、ここで指揮を執るよ」


「了解!」


 ルイーゼはアレクからの答えも他の三機に伝えると、ナタリーはアレク達に手旗信号で答える。


 ルイーゼは、ナタリーの手旗信号を読み上げる。


「『ユニコーン二号機、了解。我、先に帰還する。アレク、無茶するなよ』だって」


 アレクは、編隊を組んでいる後続の三機からも見えるように拳を握った右腕を上げると、後続の三機はアルとナタリーの乗ったユニコーン二号機を先頭に三機編隊を組み、ユニコーン・ゼロに向かって帰って行った。


 ユニコーン小隊の仲間達を先に帰したアレクは、三機が戦闘空域を離れるまで飛空艇を滞空させて見送る。





 先に帰した三機を見送ったルイーゼはアレクに告げる。

 

「アル達は、無事に戦闘空域を離脱したみたいね」


「ああ」


「ねぇ、アレク」


「ん?」


 ルイーゼは、したり顔でアレクに告げる。


「・・・やるつもりでしょ?」


 アレクは苦笑いしながら答える。


「・・・バレたか」


 ルイーゼは真顔でアレクに告げる。


「アレクの考えている事は判るわ。・・・あの旗艦をやっつけるつもりでしょ?」


 ルイーゼからの問いにアレクは素直に答える。


「うん」


 ルイーゼの覚悟は、既に決まっていた。


「旗艦から距離を取って攻撃しないと、また、さっきの砲弾でやられるわ。気を付けてね」


 ルイーゼからの答えにアレクは驚く。


「ルイーゼ!? 良いのかい?」


 ルイーゼはアレクに告げる。


「止めても聞かないでしょ? それに・・・」


「それに?」


「『私はアレクについて行く』と決めていたから。・・・一緒よ」


「ありがとう。ルイーゼ」


「行きましょう!!」


「ああ! 仲間をやられたまま、引き下がれるか!!」 


 アレクとルイーゼの乗るユニコーン・リーダーは、再びスベリエ飛行艦隊に進路を向ける。





 アレク達の視界に入ったスベリエ飛行艦隊は、教導大隊の他の小隊や貴族組の部隊と交戦しながら、組んでいた防御円陣を解いて、旗艦を先頭にスベリエ本国へ向けて回頭して撤退行動に入っていた。


 アレクはルイーゼに告げる。


「あいつら、逃げるつもりだ!」


 ルイーゼは、望遠鏡でスベリエ飛行艦隊の様子を探る。


「・・・敵の飛行艦隊も結構、ダメージを受けているみたい。・・・黒煙を噴きながら航行している艦があちこちにあるわ」


 ルイーゼの報告を聞いたアレクは告げる。


「旗艦だけを狙う。他は放置で」


「了解!」


 アレクは、飛空艇の進路をスベリエ飛行艦隊の旗艦に向ける。






 アレクはスベリエ飛行艦隊の後方上部から接近して、主砲の射程に旗艦を捕らえる。


 アレクは、旗艦の尾部に照準器の狙いを定めて告げる。


「距離二千。こっちの主砲は有効射程だが、敵の砲はこっちに届かない。・・・行くよ! ルイーゼ!!」


「うん!」


 アレクは主砲のトリガーを引く。


 轟音と共に二発の砲弾が飛空艇の機首の大砲から発射され、スベリエ飛行艦隊の旗艦ケブネカイセの尾部に向かって飛んで行く。


 アレクが主砲で撃った二発の砲弾が旗艦ケブネカイセの尾部に命中して爆発すると、旗艦ケブネカイセの推進機構である二軸六連プロペラと方向舵が爆発して吹き飛び、黒煙を噴きあげる。


 被弾した旗艦ケブネカイセは、黒煙を噴きあげながら、徐々に高度を下げていく。






--スベリエ飛行艦隊 旗艦ケブネカイセ 艦橋


 再び、旗艦ケブネカイセが被弾して艦橋に衝撃が走り、士官達が狼狽える。


「うぉおお!?」


 士官達は被害状況を報告する。


「船尾に被弾! 推進機構と方向舵がやられました!!」


「七番、八番ガス嚢も損傷! 高度を維持できません! 不時着します!!」


 アルムフェルトは舌打ちして告げる。


「チッ! ・・・やむを得ん! 不時着後、ケブネカイセは放棄! 他の艦に移乗するぞ! 退艦準備にかかれ!!」


 アルムフェルトの指示により士官達は、不時着したらすぐに艦を乗り換えられるように退艦準備を進める。


 




 スベリエ飛行艦隊の旗艦ケブネカイセは、被弾した個所から黒煙を噴きあげながら徐々に高度を下げ、やがてブナレス郊外の平野に不時着する。


 ルイーゼは、望遠鏡で飛行艦隊の旗艦の不時着を確認する。


「アレク、敵の旗艦は被弾して不時着したわ!」


 アレクは、指示を出す。


「ルイーゼ、赤の信号弾を打ち上げろ!」


 ルイーゼは、聞き返す。


「赤の信号弾!?」 


 赤の信号弾は、仲間や友軍に緊急事態や非常事態を知らせるための信号弾であった。


 アレクは、告げる。


「そうさ! 不時着した敵旗艦から脱出する飛行艦隊の指揮官を捕らえる! 急げ!!」


「了解!!」


 アレクの意図が理解できたルイーゼは、発射装置から赤の信号弾を打ち上げると、教導大隊の他の小隊に手旗信号でアレクの指示を伝える。


 赤の信号弾を見て、アレク達の飛空艇の隣へ機体を寄せたフェンリル小隊の隊長フレデリクはルイーゼからの手旗信号を読み上げる。


「『(われ)、不時着した敵旗艦の傍に降下し、敵指揮官を逮捕する。援護されたし』ってか! やるねぇ! 中隊長!!」


 ルイーゼは、手旗信号を終えるとアレクとルイーゼの乗るユニコーン・リーダーは、不時着したスベリエ飛行艦隊の旗艦ケブネカイセに向けて急降下を始める。


 旗艦ケブネカイセに向けて急降下するユニコーン・リーダーに続いて、グリフォン小隊、セイレーン小隊、フェンリル小隊の飛空艇も高度を下げていく。


 

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