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第二百四十一話 教導大隊vsスベリエ飛行艦隊(一)

 飛行空母ユニコーンゼロから発艦したアレク達は、ユニコーン小隊で編隊を組むと、ブナレスの市庁舎を砲撃しているスベリエ飛行艦隊を迎撃するべく飛空艇の進路を向ける。


 アレク達は、市庁舎を砲撃するために高度を下げていたスベリエ飛行艦隊の真上に出る。


 アレクは口を開く。


「現在、高度三千。敵飛行艦隊の真上」


 周囲を観察して、ルイーゼは答える。


「南南東、微風。所々に雲があるけど、視界は良好。・・・アレク! 行けるわ!」


「行くよ。ルイーゼ」


「うん」


 アレクは攻撃開始の号令を掛ける。


「ルイーゼ、全機へ伝達! 敵艦隊の直上より攻撃せよ! 攻撃開始!!」 


「了解!!」


 ルイーゼは、アレクからの指示を手旗信号で僚機へ伝える。


 アルは、ルイーゼの手旗信号を見た口を開く。


「いよいよだ! 行くよ! ナタリー!!」


「うん!」


 アレク達ユニコーン小隊は、アレクの攻撃開始の号令を合図にスベリエ飛行艦隊に向けて、真上から急降下を始める。





 アレクは、飛空艇を急降下させながら、スベリエ飛行艦隊の大型戦闘飛行船の一隻に狙いを定め、主砲の照準を合わせる。

 

 飛空艇が急速に高度を下げて大型戦闘飛行船に迫っているため、照準器の枠内から見える、大型戦闘飛行船の船体がみるみる大きくなっていく。


(まと)はデカい。・・・外す事は無い) 


 アレクは、飛空艇の主砲のトリガーを引く。


 轟音と共に二発の砲弾が飛空艇の機首の大砲から発射され、スベリエ飛行艦隊の大型戦闘飛行船の一隻に向かって飛んで行く。


 二発の砲弾が大型戦闘飛行船の上部に命中し爆発すると、エンベローブに空いた穴から黒煙を吹き上げる。


 アレクとルイーゼが乗るユニコーン・リーダーの砲撃に続いて、アルとナタリーの乗るユニコーン二号機、ナディアとドミトリーの乗るユニコーン三号機、トゥルムとエルザの乗るユニコーン四号機が同じ大型戦闘飛行船に対して砲撃を加える。


 飛空艇の八発の砲弾が次々に命中した大型戦闘飛行船は、轟音と共に大爆発を起こし、船体が中央で折れて轟沈する。


 アレク達は、轟沈する大型戦闘飛行船の脇をすり抜けてスベリエ飛行艦隊の下に回り込むと、機首を引き起こす。


 アレク達ユニコーン小隊の攻撃に続いて、グリフォン小隊、フェンリル小隊、セイレーン小隊がそれぞれ小隊毎に別々の大型戦闘飛行船を攻撃していき、貴族組や他の二学年の中隊が続く。


 



 教導大隊の奇襲にスベリエ飛行艦隊は驚く。


 アルムフェルトのいる旗艦の艦橋に次々と戦況報告が入る。


 艦橋に居る士官達は、次々と報告していく。


「航空部隊の奇襲です!」


 アルムフェルトは、問い質す。


「クソッ! どこの部隊だ?」


「攻撃してきた航空部隊は、バレンシュテット帝国軍との事です!」


「クリンプフィエル、ウムネス、フォルスマーク轟沈!」


「ソールセレ大破! 戦列から離脱します!」


 アルムフェルトは士官達に命令を出す。


「ボサッとするな! 反撃しろ!」


 アルムフェルトの命令で艦長や士官達は次々に指示を出していく。


「了解!」


「全艦、対空防御!」


「小口径砲、敵航空部隊へ個別照準! 撃て!」


「防御円陣! 密集して火力を集中させろ! 急げ!」


 砲術士官は悲鳴に近い報告を上げる。


「対空砲火、間に合いません! 速過ぎます!」


 アルムフェエルトの乗る旗艦の艦橋の前を、アレク達ユニコーン小隊の飛空艇の編隊が横切る。


 艦橋から高速で飛行するアレク達の飛空艇を見たアルムフェルトは驚愕する。


「速い! ・・・何なんだ!? あの速度は?」


 アルムフェルトの傍らにいる士官は、答える。


「敵航空部隊の速度は、四〇〇以上と思われます」


 アルムフェルトは、素っ頓狂な声を上げる。


「ハァ!? 四〇〇以上だと? 馬鹿な!? あり得ない!」


 スベリエ飛行艦隊の指揮を執る旗艦の艦橋に一瞬の沈黙が走る。


 次の瞬間、旗艦が被弾して艦橋に衝撃が走り、士官達が狼狽える。


「うぉおお!?」


「旗艦ケブネカイセ被弾!」


「クビックヨック大破! 戦列から離脱します!」


 艦橋の士官達が指揮と判断を仰ぐべく、アルムフェルトに注目する。


 帝国軍に一方的にやられている悔しさにアルムフェルトは、歯軋りしながら命令を出す。


「対空砲火に『ぶどう弾』を使え! 羽虫どもを撃ち落とせ!」


「了解!」


 ぶどう弾とは、小弾(小さな鉄球)を詰め込んだ前装滑腔砲用の砲弾であり、洋上を帆走する軍艦の索具類破壊と人員殺傷を目的に考案された砲弾である。


 ぶどう弾の名称は小弾が詰まっている様がブドウに似ていることに由来する。


 子弾は砲撃と同時に飛散し始めるため、射程距離は短い。





 アレク達は、対空砲火を躱して旗艦の脇をすり抜ける。


 アレクは指示を出す。


「ルイーゼ、僚機へ伝達! 反転して後続艦を叩く!」


「了解!」


 ルイーゼは、アレクからの指示を手旗信号で僚機に伝える。

 

 アレク達は、編隊の進行方向を変えながら、教導大隊の奇襲攻撃で次々と被弾して爆発し、黒煙を吐いていくスベリエ飛行艦隊の大型戦闘飛行船群の姿を目にする。


 アルは、軽口を叩く。


「フフッ・・・。あんなデカい鉄の砲丸を撃ってきたところで、飛空艇に当たるかよ?」


 エルザも軽口を叩く。


「・・・楽勝じゃない!」





 編隊の進路を変えながら、アレクは旗艦のある大砲に目が止まる。


 その大砲は、アレク達の編隊に向けられており、兵士達によって砲口から『布袋に入った砲弾』が込められていた。


(何だ? あれは?)


 一瞬、アレクの背中に悪寒が走る。


 布袋に入った砲弾が込められた大砲が発射される。 


(・・・マズい!!)


 アレクは叫ぶ。


「回避!!」


 アレクが飛空艇を急旋回させたため、突然の急激な操縦で身体が振られたルイーゼがは鳴を上げる。


「きゃあっ!!」


 アレクとルイーゼの乗るユニコーン・リーダーは、急旋回する。


 次の瞬間、布袋に入った砲弾が込められた大砲から撃ち出された、ぶどう弾の無数の小さな鉄球がアレク達の編隊を襲う。


「うわぁっ!?」


「きゃああああ!!」 


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