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第二百三十一話 昔の仲間達

 ジカイラから「適当に寛いでいて構わない」と告げられたアレク達は、応接室で寛いでいた。


 特にやる事も無いアレクは、自分の愛剣『ゾーリンゲン・ツヴァイハンダー』を取り出し、その手入れを始める。


 アレクは、ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを鞘から抜いて剣身を眺める。


 父ラインハルトや兄ジークが愛用しているサーベルと異なる、反りの無い真っ直ぐな両手持ち用の両刃の長剣であり、輝く剣身は美しく、強い魔力を帯びている事が判る。


 先の戦闘で食人鬼(オーガ)の分厚い筋肉を容易く切り裂き、その武器の棍棒をも斬り飛ばしたが、刃こぼれ一つ無い。


 剣を左右にゆっくりと動かすと、淡く青白い魔法の光がたなびく。


 アレクの自慢の魔力を帯びている長剣であった。


 剣に油を塗り、羊毛で出来た布で丁寧に拭いていく。


 アレクが剣の手入れをしていると、エルザがニコニコしながらアレクの傍らにやって来る。


「ア~レ~ク。凄い剣ね」


 アレクは、にんまりとした笑顔で自慢げに答える。


「だろ? 上級騎士(パラディン)になった記念に父上から頂いたんだ」


 エルザは、アレクに甘えるようにおねだりし始める。


「ねね、アレク。エルザちゃんも、アレクみたいな凄い剣が欲しいなぁ~」


「え?」


 エルザは、驚くアレクの首に腕を回して、再びおねだりする。


「エルザちゃんにも凄い剣を買ってぇ~。買ってよぉ~」


 アレクは、エルザの言葉を少し考える。


(・・・強力な武器か。小隊の皆も中堅職に転職(クラスチェンジ)したし、使っている武器や防具も、新調したり、強化したくなるよな・・・)


 エルザは、考え込むアレクの頭を揺らす。


「ベッドだけじゃなく、お風呂でもサービスするからぁ~。ねぇ~。良いでしょ~?」


 アレクはエルザの両肩を掴むと、自分から引き剥がす。


「エルザ、落ち着けって・・・。今、考えるから」


 そう言うと、アレクは名案が無いか考え始める。





(強力な武器や防具があるところ・・・)


(皇宮の宝物庫。・・・いや、マズいな。収納品を勝手に持ち出した事がバレたら、父上に殺される)


(帝国造兵廠。・・・あそこなら、魔法で強化した武器や防具がある)


(造兵廠なら、兄上か、ジカイラ大佐の許可があれば、なんとかなるか)





考えがまとまったアレクはエルザに告げる。


「オレの剣は、金じゃ買えないよ。・・・でも、強力な武器や防具を扱っているところなら心当たりがある。ジカイラ大佐が御前会議から戻ったら、行って良いか、大佐に聞いてみよう」


「うん!」


 エルザは、大喜びで頷く。





-- 小一時間後。


 御前会議を終えたジカイラとヒナが応接室に戻って来る。


 応接室に戻ってきたジカイラは、アレク達に告げる。


「戻ったぞ。・・・お前達に伝えておくことがある。バレンシュテット帝国は、本格的にゴズフレズに武力介入する事になった。勅命により四個方面軍、総勢百万の帝国軍が動員される。」


 ジカイラの言葉にアレク達は驚く。


 小隊のメンバー達は、口々に周囲の仲間達と話し始める。


「・・・帝国軍が武力介入!?」


「これから雪が積もるのに・・・?」


「また、大きな戦になるのかしら?」


 アレクはジカイラに尋ねる。


「大佐! 帝国は、列強の二ヶ国と戦争になるのですか!?」


 ジカイラは、苦笑いしながら答える。


「いや。帝国側から宣戦布告はしないそうだ。直前にカスパニア軍とスベリエ軍に対して退去勧告をする。・・・ま、帝国軍に勝てる軍なんて、このアスカニア大陸には無い。すぐにカタが付くさ」


 ジカイラは続ける。


「それと、今回の武力介入は、帝国四魔将と四個方面軍が主に動く。オレ達、教導大隊に出撃命令が出された訳じゃない。・・・だが、準備は怠るなよ?」


 アレクは口を開く。


「大佐。その『準備』について、相談があるのですが・・・」


 アレクはジカイラに帝国造兵廠から武器や防具を入手しても良いか、相談する。


 アレクから受けた相談をジカイラは快諾する。


「ちょうど良い機会だ。オレの方で連絡しておくから、これから帝国造兵廠に行って、お前達の欲しい装備を見繕ってくるといい。オレとヒナは、昔の仲間達に会ってくる」


「ありがとうございます」


 エルザは、ジカイラに頭を下げてお礼を言うアレクの腕を取って急かす。


「早速、行こうよ! はやく~!」


 アレク達は皇宮を後にし、帝国造兵廠に向かう。





-- 皇宮 皇帝の私室


 御前会議を終えたラインハルトとナナイは、皇帝の私室に戻っていた。


 二人の居る皇帝の私室にハリッシュとクリシュナ、ティナが訪れ、半時もしないうちにジカイラとヒナが訪れて来る。


 ラインハルトは口を開く。


「今日は、皆に会わせたい人物がいる」


 ジカイラは呟く。


「『会わせたい人物』?」


 ラインハルトが目配せすると、侍従がドアを開けて私室の外に居た人物を中に招き入れる。


「みんな! 久しぶりだね!」


 明るい声と共に私室に現れた小柄な男の姿は、私室に居る者達が知っている昔の姿と変わらなかった。

 

 魔力が付加された強化弓と革鎧とブーツ、腰には、(つば)に改造を加えた二本のショートソードを下げている。


 私室に居る者達は驚きの声を上げる。


「ケニー!!」


 現れた小柄な男は、ケニー・ジョンブル。


 初代ユニコーン小隊のメンバーであり、大人しく気持ちの優しいマスタークラスの忍者。


 現在は、帝国情報局に所属しており、ラインハルトの命によって新大陸や列強諸国を探索し、情報収集して回っていた。


 ジカイラはケニーに尋ねる。


「ルナは元気か?」


 ルナは、ケニーの恋人の獣人(ビーストマン)三世(・クォーター)の女の子であり、彼女もケニーと一緒に各地を飛び回っていた。


 ケニーは、照れながらジカイラに答える。


「ルナは元気だよ。久しぶりに帝都に来たんで、市街を観光しているよ」


 ラインハルトは、口を開く。


「皆に集まって貰ったのは、他でもない。ケニーに列強諸国の動静を探索して貰ったのだが、列強諸国にキナ臭い動きがあるらしい」


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