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第二百二十六話 アレク、中隊長就任

--ゴズフレズ 中部の都市 ブナレス上空 飛行空母ユニコーン・ゼロ 


 アレク達、教導大隊は、制圧したブナレスを進駐してきたゴズフレズ軍に引き渡し、飛行空母ユニコーン・ゼロに帰還し、休息していた。


 アレクがラウンジで仲間達と寛いでいると、ジカイラから会議室に呼び出される。


 ジカイラは、会議室に来たアレクに椅子に座るように促す。


「『良い知らせ』と『悪い知らせ』があるんだが、まずは『良い知らせ』から言っておく」


 そう言うとジカイラは、フクロウ便で届いた皇帝ラインハルトからの辞令を読み上げて伝え、羊皮紙に綴られた辞令を手渡す。


「辞令だ。アレキサンダー・ヘーゲル。バレンシュテット帝国中央軍教導大隊 大尉に任ずる。・・・帝国軍大尉に昇進だ。良くやったな。おめでとう」


「ありがとうございます」 


 アレクは、祝いの言葉を口にするジカイラに一言だけそう答えると、俯く。




 ジカイラが読み上げた辞令は、アレクの大尉昇進を伝えるものであったが、アレクの気持ちは複雑であった。


 皇帝ラインハルトからのアレクへの辞令は、平民名で書かれており、帝国第二皇子としての本名であるバレンシュテット姓は書かれていなかった。


 アレクは、帝国軍大尉への昇進は嬉しかったが、父である皇帝ラインハルトからの懲罰が解けないのが悔しかった。





 ジカイラは、俯くアレクの表情から、その気持ちを察する。


「お前は、アイツの想像以上に良くやってる。焦る事は無い。気を長く持て。・・・それと、お前を教導大隊平民組の四個小隊を率いる中隊長に任命する」


 アレクはジカイラの言葉に驚く。


「オレが中隊長に!?」


 ジカイラは続ける。


「そうだ。それと、オレは大佐に、ヒナは少佐に昇進する事になった。・・・これはオレの勘だが、ラインハルトは、オレ達、教導大隊を『独立即応戦隊』として試験的に運用したいようだ」


 アレクは尋ねる。


「それは・・・いったい??」


 ジカイラは苦笑いしながら続ける。


「『方面軍から独立している、何かあったらすぐに行動、対処できる部隊』ってことだ。・・・お前の昇進は、お前自身の実力と実績だが、オレとヒナの昇進は、帝国軍の他の部隊や方面軍との兼ね合いからだろう」


 ジカイラの答えを聞いて、アレクも苦笑いする。


「そして、『悪い知らせ』のほうだ。・・・一昨日、帝国の皇太子ジークとゴズフレズのカリン王女の婚約が発表された。・・・これは、ゴズフレズ王国がスベリエ王国への従属を辞め、バレンシュテット帝国と姻戚関係による同盟を結んだって事だ。・・・両国の規模や軍事力、経済力から、事実上、ゴズフレズ王国はバレンシュテット帝国の保護国になる」


 ジカイラの話を聞いてアレクは驚く。


「兄上が婚約!?」


「そうだ。ジークは、四人目の妃を娶るらしい」


 ジカイラは苦笑いすると、話を続ける。


「それを受けて昨日未明、スベリエ王国がカスパニア王国に宣戦布告した。・・・この列強二ヶ国は、全面戦争に突入する」


 驚いて絶句するアレクにジカイラは説明を続ける。


「スベリエは、ゴズフレズが従属から離れる事によって海峡を失う。カスパニアとの戦争を口実に、強引に軍でゴズフレズを占領するつもりらしい。・・・今まで『カスパニアvsゴズフレズ、帝国、スベリエ』で二手に分かれて戦っていたのが、『カスパニアvsスベリエvsゴズフレズ、帝国』と三つ巴の戦になる。・・・今後は、スベリエ軍との戦闘も想定しろ。どこが敵で、どこが味方か。戦況は、刻一刻(こくいっこく)と変わる。それに対応するための『独立即応戦隊』って事だろう」


 アレクは、ジカイラと小一時間ほど、今後の部隊運用などについて打ち合わせすると、仲間のいるラウンジに戻る。






 ラウンジに戻ったアレクは、自分の大尉昇進と中隊長に任命された事を平民組の仲間達に伝える。


 アレクと平民組の仲間達は、皆、アレクの大尉昇進と中隊長就任を喜んで祝福してくれる。


 アルは、自分の事のようにアレクの昇進を喜び、祝いの言葉を口にする。


「やったな! アレク! 大尉昇進おめでとう!」

 

 ルイーゼは、アレクに抱き付いてキスし、祝意を伝える。


「アレク! おめでとう!」


「ありがとう。ルイーゼ」


 仲間達も祝いの言葉を口にする。


「隊長! おめでとう!」


「おめでとう!!」


 エルザは傍らのナディアに得意気に告げる。


()()()()()()が中隊長になって、平民組の四個小隊を取り仕切るなんて、気分良いわね」


 ナディアは、立てた人差し指を顎に当てると、考えながら答える。


「そうね。・・・けど、アレクの事だから、平民組の女の子達を次々に()()()にしそう」


 ナディアの言葉を聞いたドミトリーは頷く。


「うむ。隊長なら本当にやりかねん。煩悩に捕らわれ過ぎているからな」


 ナディアとドミトリーのやり取りを聞いていたフェンリル小隊の僧侶の女の子エマが二人の会話に混ざってきて、頬を赤らめモジモジしながら呟く。


「私は・・・良いですよ。アレク大尉なら・・・。優しくしてくれそうですから」


「ええっ!?」


 エマの呟きに周囲は驚く。


 エルザは、アレクに詰め寄って文句を言う。


「ちょっと! ちょっと! アレク! 五人目の奥さんなんて、私、聞いて無いわよ!?」


 アレクは、エルザの文句を必死に否定する。


「いや、違うって! 待ってくれ! オレは、その子に、()()()()()()()()()って!!」


 すかさずナディアは、アレクにツッコミを入れる。


「『()()()()()()()()()』って、これから、『()()()()()』だったの? エロい! エロいわ!!」


 ナディアのツッコミにエルザが続く。


 エルザは頬を赤らめ、両腕を組むように両手で自分の二の腕を掴むと、身体をくねらせながら語る。


「そうよ! ここに居るルイーゼ、ユニコーンの獣耳(けもみみ)アイドル・エルザちゃんの純潔を奪っただけじゃ、足りないなんて! もぅ、アレクってば、本当にスケベなんだから!」


 ナディアもエルザに続いて頬を赤らめ、両腕を組むように両手で自分の二の腕を掴むと、身体をくねらせながら語る。


「そうよ! そうよ! ナディアお姉さんの純潔もアレクに奪われたのよ~。きっと、中隊を丸ごとハーレムにするつもりね! 一体、何人の乙女を(はら)ませるの?」


 エルザとナディアの寸劇のようなツッコミに、アレクはガックリとうなだれながら呟く。


「お前ら・・・。頼むから、変な噂を広めないでくれ・・・」

 

 ルイーゼは、うなだれるアレクの頭を苦笑いしながら優しく撫でる。


 その様子を見ていた周囲の仲間達の笑い声がラウンジに響く。





 アレクの大尉昇進と中隊長就任は、平民組の仲間達から祝福される。


 北方の動乱は、列強二ヶ国が全面戦争に突入した事により、激しさと凄惨さを増していく。


 アレク達の居るゴズフレズの地には、帝国本土より一足早く、冬の足音が聞こえ始めていた。

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