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第二百二十二話 スベリエ軍の上陸

 三方向から攻撃を受けるようになったカスパニア軍魔獣大隊は、ゴズフレズ中部の都市ブナレスへ向けて撤退を始め、夕刻には中部戦線の趨勢が決する。


 ゴズフレズ軍前線部隊とアレク達の教導大隊は、撤退するカスパニア軍を深追いする事はせず、飛空艇を回収し、ゴズフレズ王国のハロルド王が率いるゴズフレズ軍主力と合流する。


 ジカイラとヒナも揚陸艇を着陸させて、ゴズフレズ軍主力と合流する。


 ゴズフレズ軍主力は、中部の都市ブナレスの攻略に向け、野戦陣地を構築して宿営地を造り始める。






 --ゴズフレズ中部の都市 ブナレス 市庁舎


 カスパニア王国の王太子カロカロとカスパニア王国王立騎士団の騎士レイドリックが市長室で歓談していると、カスパニア軍の伝令の兵士が駆け込んで来る。


 二人は駆け込んできた兵士に驚き、カロカロは伝令の兵士に尋ねる。


「何事だ?」


 伝令の兵士は、息を切らせながら答える。


「殿下、魔獣大隊がゴズフレズ軍に敗れました! 魔獣大隊はブナレスに向けて撤退し、ゴズフレズ軍がブナレスに迫っています!」


 レイドリックは口を開く。


「敵軍の中に恐ろしく手練れの部隊が居るとは聞き及んでいましたが、まさか鶏蛇(コカトリス)食人鬼(オーガ)の魔獣大隊が敗れるとは・・・」


「ううむ・・・」


「殿下。しかし、御心配には及びません。ブナレスには、カスパニアB軍集団三万の精兵が居ります。こちらに向かっているゴズフレズ軍とほぼ同数ですが、ブナレスの都城に籠る我々の側が有利です」


 レイドリックの言葉にカロカロは安心したようにソファーに深く腰掛ける。


「そうだな」


 二人が話していると、更に伝令の兵士が駆け込んで来る。


「殿下、一大事です!」 


「今度は何だ?」


「スベリエ軍がブナレスの北に上陸しました! その数、およそ六万!」


「何だと!?」


 伝令から報告を受けたレイドリックは、地図を眺めて考えながら呟く。


「・・・マズい。北にスベリエ軍六万、東にゴズフレズ軍三万。・・・このままでは、この街が三倍の敵軍に包囲されてしまうな」


 カロカロは、レイドリックに意見を求める。


「・・・レイドリック。どうしたら良い?」


 地図を眺めて、考えがまとまったレイドリックはカロカロに答える。


「殿下。ここはブナレスを放棄して、南部の都市リベにA、B、Cの三つの軍集団を集結させましょう。A軍集団は、将軍のシロヒゲが()られただけで、正規軍の被害は軽微。他の軍集団は無傷です。そうすれば我が軍の兵力は九万。敵軍とほぼ同数です。ここよりカスパニア属州に近い南部の都市リベで敵と決戦するべきです」


 レイドリックの案を聞いたカロカロは同意する。


「うむ。そうするとしよう。B軍集団のイナ・トモ将軍とC軍集団のアルシエ・ベルサード将軍にそう伝えよ。直ちに撤退の準備だ」


「ははっ」


 カスパニア軍はブナレスの港から船に乗り、南部の都市リベに向けて撤退し始める。


 カロカロは口を開く。


「レイドリック。本国へ伝令だ」


「はっ。伝令の内容は、如何致しますか?」


「私の名前で『カスパニア無敵艦隊(アルマダ)の出撃を要請する』と伝えよ」


「ははっ! 直ちに!」



--夜。


 ジカイラとヒナ、アレクを含む教導大隊の各小隊長は、ゴズフレズ軍本陣のハロルド王の天幕に集まり、ゴズフレズ軍のネルトン将軍が大きな地図を広げてブナレス攻略の軍議を行っていた。


 軍議の最中に伝令の兵士が駆け込んで来る。


「申し上げます!」


 ネルトンは、伝令の兵士を質す。


「陛下の御前であるぞ。何事だ?」


「スベリエ軍がブナレスの北に上陸しました!」


 報告を聞いたその場に居る一同が驚き、ジカイラの眼光が鋭くなる。


「スベリエ軍が?」


 伝令の兵士が続ける。


「スベリエ軍の上陸を受けて、ブナレスのカスパニア軍は撤退した模様です」


 伝令からの報告に、その場にいる一同が驚く。


 ジカイラの眼光は鋭くなる。


「アレク! 今すぐ飛空艇でブナレスへ飛んで、市庁舎を押さえろ! ユニコーン、グリフォン、フェンリル、セイレーンの四個小隊は、街の四方の門を固めろ! スベリエ軍より先にブナレスに入るぞ! オレとヒナも教導大隊を乗せて揚陸艇で向かう!」


「了解!」


 矢継ぎ早に出されるジカイラの命令にアレク達四人の小隊長は答えると、自分の小隊メンバーの居る天幕へ駆け足で向かう。


 ジカイラはハロルドとネルトンに告げる。


「我々は、一足先にブナレスに飛びます。ゴズフレズ軍も今すぐブナレスに進軍して、進駐して下さい。スベリエ軍に街を占領されたら厄介です」


 ネルトンはハロルド王に告げる。


「陛下、ジカイラ中佐のおっしゃるとおりです。スベリエ軍にブナレスを占領されて居座られたら、厄介な事になります。我々が先に進駐するべきです」


 ネルトンの進言にハロルドは大きく頷く。


「うむ。直ちに兵を向かわせるとしよう!」


 ゴズフレズ軍が出陣準備を進めるなか、アレク達四個小隊は出撃準備を終え、飛空艇を離陸させる。


 アレク達四個小隊の飛空艇は、ゴズフレズ軍本陣の上空で編隊を組むと、ブナレスへ向けて夜空を飛んで行った。



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