第二十二話 ユニコーン小隊vs腹筋同盟
帝都の装備品店で武器や防具を一式揃えたアレク達は、帝都の大通りに面したカフェで昼食を取る。
アレク達は、四人掛けの丸テーブル席二つを寄せて座り、雑談しながら楽しく食事する。
アルがアレクを冷やかす。
「お前、どこから見ても、帝国騎士だぞ?」
「あは。アルこそ『黒い剣士』だろ?」
同じ二人の会話を聞いてルイーゼとナタリーが微笑む。
傍らの席で、蜥蜴人のトゥルムが獣人のエルザに話し掛ける。
「エルザ。君は、猫系の獣人なのに、魚は食べないのか?」
エルザが答える。
「魚も食べなくはないけど、私は、お肉のほうが良いかなぁ・・・」
ナディアは呟きながら、自分の皿の料理から肉を探し出して、せっせとフォークでエルザの皿に入れていた。
「・・・ベジタリアンの私に肉の入った料理なんて!」
ナディアの様子を見て、ドミトリーが唸る。
「むむむ。ベジタリアンの肉食女子とは!? 此れ、如何に??」
アレク達はカフェで昼食を取ると、会計を済ませて大通りに出た。
「おい! お前ら!!」
アレク達に声を掛けてきたガラの悪い男達が居た。
ガラの悪い男は、アレクを見て仲間に叫ぶ。
「間違いない。こいつらだ!」
アレク達の回りにガラの悪い男達が集まってくる。
ガラの悪い男がアレクに告げる。
「お前ら、この前は、随分とナメた真似をしてくれたな? ああん??」
アルが口を開く。
「先輩!?」
アレク達に絡んできたのは、士官学校校舎の外れの階段の踊り場で、ルドルフに私刑を加えていた先輩学生達であった。
ガラの悪い男がアレク達に告げる。
「ここじゃ人目が多い。お前ら、ちょっと顔を貸せ」
そう言うと、ガラの悪い男達は、路地裏にアレク達を連れ込んだ。
十二人のガラの悪い男達は、路地裏の大通り側に陣取って、アレク達に詰め寄る。
「お前ら!! ここに居るウサギ・アマギさんとソナーさんは、あの『フナムシ一家』の下位組織である『腹筋同盟』のメンバーなんだぞ!! 『腹筋同盟』をナメやがって! 覚悟はできているんだろうなぁ!」
アレク達に凄む先輩学生達を無視して、アルがアレクに尋ねる。
「・・・ここは学校の外だ。アイツらに殴られてやる必要はないぜ?」
アレクもアルに答える。
「同感だ、相棒! 本気出すぞ!!」
「そうこないとな!」
アレクは、大声で小隊の全員に指示を出す。
「Ausrichtung!!」
(整列!!)
アレクの指示により、八人は前列と後列に分かれ、陣形を整えて整列する。
前列は左から順に、エルザ、トゥルム、アル、アレク。後列は、ナディア、ドミトリー、ナタリー、ルイーゼである。
アレクは、再び大声で小隊の全員に指示を出す。
「Präsentiert das Gewehr!」
(構え!)
アレクの掛け声に合わせて、前衛のエルザ、トゥルム、アル、アレクは、並んで盾を構える。
「Rückzugsschwert!!」
(抜剣!!)
前衛の四人は、武器を構える。
人数が多い自分達にビビるどころか、チンピラや学生の喧嘩ではなく、本気で帝国軍の戦闘態勢を取るアレク達に、『腹筋同盟』のガラの悪い先輩学生達のほうがビビリ始める。
「・・・おい!? ちょっと待て、お前ら!? 何をするつもりだ??」
怯む先輩学生達を他所に、アレクは再び大声で小隊の全員に指示を出す。
「Reichsritter, vor!!」
(帝国騎士、前へ!!)
アレク達八人は、武器と盾を構えたまま、歩調を合わせて前進する。
「うわぁあああ!!」
アレク達八人は前進し続け、前衛の四人と先輩学生達が狭い路地裏で衝突する。
前衛の四人は、盾越しに先輩学生達を押し止める。
アレクが他の前衛三人に伝える。
「良いか? みんな、殺すなよ??」
アルが笑顔で答える。
「判ってるって!」
アレクが号令を掛ける。
「Attacke!!」
(攻撃!!)
アレクの号令に合わせて前衛の四人は、一斉に盾で先輩学生達を押し返すと、盾の隙間から体勢を崩した先輩学生達の足を武器で斬りつける。
「ぐぁああああ!!」
「やろう!!」
攻撃した後、アレク達は再び盾を構えて陣形を整え、盾越しに襲い掛かってくる先輩学生達を押し止める。
再びアレクが号令を掛ける。
「Attacke!!」
(攻撃!!)
再びアレク達は、一斉に盾で先輩学生達を押し返すと、盾の隙間から体勢を崩した先輩学生達の足を武器で斬りつける。
「ぎゃあああ!!」
「待て! 待て! お前ら!!」
先輩学生達の言葉を無視して、アレクはタイミングを見計らう。
(敵は全部で十二人! 八人倒した! 残りは四人! 今だ!!)
頃合いを見計らって、アレクが号令を掛ける。
「Angriff!!」
(突撃!!)
アレクの掛け声で小隊の八人は、一斉に隊列を崩して残りの四人の先輩学生達に突撃する。
「うわわわわ!!」
一斉に襲い掛かってくるアレク達に先輩学生達は狼狽える。
アルは、逃げ出した先輩学生の足を斬りつけて倒す。
アレクは、逃げ出した先輩学生の頭を後ろから剣の峰で殴り付ける。
すかさず、ルイーゼが路地裏の壁に向けて飛び跳ねると、アレクが殴り付けた先輩学生の頭を三角蹴りで蹴り、先輩学生は白目を剥いて倒れる。
トゥルムは、正面の先輩学生を鷲掴みにして持ち上げると、自分の膝の上に先輩学生の背中を打ち付ける。
エルザは、逃げ出した先輩学生の脇腹を後ろから剣の峰で殴り付け、呟く。
「下品な男はお断りね!」
嗚咽を漏らしながら蹲る先輩学生をナディアがメイスで殴り倒すと、エルザに同意する。
「同感!!」
先輩学生の一人ウサギ・アマギが、アルに斬られた足を押さえ、地面を這いずって逃げながら、捨て台詞を履く。
「お前ら・・・、こんな事をして、どうなるか判ってんのか・・・? オレ達、『腹筋同盟』がやられたら、あの『フナムシ一家』が出てくるんだぞ!!」
アレクが、ウサギ・アマギの前にしゃがんで告げる。
「その時は、オレ達、ユニコーン小隊が相手になる!」
アレクは、立ち上がると小隊のメンバーに告げる。
「オレ達の勝ちだ! 行こう!!」
アルは、アレクと肩を組むと軽口を叩く。
「さぁ、みんなでパァ~ッと打ち上げやろうぜ!!」
エルザも軽口を言う。
「パーラーでスィーツが食べたいなぁ~」
ナディアも軽口を言う。
「良いわね! パーラーで打ち上げ!! アイスクリーム! フルーツパフェ!! どっちも良いわぁ~」
こうしてアレク達ユニコーン小隊は、半グレ・チンピラ集団『腹筋同盟』を返り討ちにして圧勝を収めた。