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第二十二話 小隊の仲間たちの装備

-- 一週間後。


 休日。


 丸一日、士官学校の授業が休みであるため、多くの士官学校の学生達は、平民組も貴族組も帝都へ繰り出した。


 アレクたちも軍用列車に乗り、帝都へと向かう。


 アルがアレクに話し掛ける。


「模擬戦があるみたいだし、みんなで装備一式を見繕いに行こうぜ」


「そうだな」


 軍用列車から帝都の駅のホームを降りたアレクは、感慨深げに駅の構内を見回す。


(母上やミランダは、元気にしているだろうか……)


 帝都に着いたアレクたちは、装備品を扱う店に向かう。


 武器や防具などの装備は一応、士官学校で用意してくれるが、自分用の装備が欲しいのは、どの学生も一緒であった。


 金銭的に余裕がある貴族組などは、魔力が付加された豪華な装備を持っていた。


 店に入ったアレクたちは、それぞれ自分の職業(クラス)にあった武器や防具を手にとって見る。


 騎士であるアレクが目に止めたのは、帝国軍の帝国騎士(ライヒスリッター)の装備であった。


「まずはここからだな。騎士剣に騎士盾、騎士鎧、籠手に兜っと……」


 アレクは、自分の身体に合うサイズのものを探して見繕う。


 アレクがひと通り見繕った頃、アルの声がアレクの耳に聞こえる。


「あった! コレだ!」


 アレクがアルに尋ねる。


「何があったんだ?」


 アルは、笑顔で答える。


「コイツさ!」


 アルは、見つけた武器をアレクに見せる。


 二人の近くにいたトゥルムも、その武器に興味を示して口を開く。


「ずいぶん、変わった形の槍だな」


 アルがトゥルムに答える。


「コイツは『槍』じゃない!『斧槍(ハルバード)』っていうのさ!」


 それは、鋭い槍の穂先の傍らに斧の刃が付いた長い柄の武器であった。


 アレクが呟く。


斧槍(ハルバード)か」


 アルが自慢気に周囲に話す。


「そうさ! 武器はデカけりゃあ良いってモノじゃない! デカくて良いのは、チン●だけさ! これなら、突くも、斬るも良し! 長さもある! オレの父さんも斧槍(ハルバード)を使っていたんだ!」


 アレクが口を開く。


「そうなんだ」


 トゥルムは、アルの話に頷く。


「なるほどな。アル、私も良い武器だと思う。……では、私はこの武器にしよう」


 トゥルムが手にしたのは、三叉槍(トライデント)であった。


 アルは感心したように唸る。


「おおっ!? トゥルム、三叉槍(トライデント)を選ぶとは、やるねぇ!」


 トゥルムが答える。


「うむ。これなら相手の攻撃を受ける事も出来るし、突く事も出来る。防具は(スケール・)(メイル)と盾だ」


 槍術士である蜥蜴人(リザードマン)のトゥルムは、重装甲で中距離武器を装備に選んでいた。


 アルはアレクに話し掛け、店主に注文する。


「アレク、ちょっと待ってて! ……店主、この鎖帷子や胸当てなんかを真っ黒に塗装してくれ!」


 注文を受けた店主が確認するように尋ねる。


艶消し(フラット・)黒色(ブラック・)塗装(コーティング)ですか?」


「そう! それそれ!」


 アルは楽しそうであった。


 トゥルムが口を開く。


「アルは、結構、こだわりがあるんだな」


 アレクがトゥルムに答える。


「アルの父は、革命戦役の英雄で『黒い剣士』と呼ばれていたから」


「なるほど」


 戦士のアルも重装甲で中距離武器を選んでいたが、武器は複数持っていた。


 武器や防具を見繕ったアレク、アル、トゥルムの三人の元にエルザがやってくる。


「どう? コレ? 試着してみたんだけど、似合ってるでしょ?」


 エルザが身に付けていたのは、水着のような形状のビキニアーマーと呼ばれる防具であった。


 アレクが口を開く。


「それ、肌の露出が多いんじゃ……?」


 アルも口を開く。


「水着みたいだな……」


 トゥルムも口を開く。


「動き易いのは判るが……」


 エルザは、猫のような獣耳(けもみみ)を立て尻尾をフリフリさせながら満面の笑みを浮かべて三人に答える。


「でしょ? エルザちゃんの見事なプロポーションに萌え死にしそうでしょ? コレなら、どんな男もイチコロよ!」


 アレクが苦笑いしながら答える。


「何か……装備を選んだ動機が不純だな……」


 アレクの言葉にアルも同意する。


「……オレもそう思う」


 トゥルムがエルザに尋ねる。


「……それでエルザ、武器は何を?」


「コイツよ! それと、集団戦用の盾ね」


 エルザが選んだのは、両手剣であった。


 両手剣は、特徴として高い攻撃力とリーチの長さを兼ね備えた大型の剣であった。


 アレクが呟く。


「なるほどなぁ……」


 エルザの職業(クラス)は剣士であり、獣人(ビーストマン)の素早さと筋力を生かして、軽い防具で素早く動き、両手剣で強力な一撃を加えるスタイルの装備であった。小隊の集団戦の時だけ盾を持つ。


 エルザが装備を自慢していると、ナディアがやってくる。


「フフフ。エルザ、甘いわね。肌を露出すれば良いってものじゃないのよ!」


 エルフの精霊使い(シャーマン)であるナディアが選んだのは、胸元が大きく開き、腰から両太腿の横に大きなスリットが入っている(クロース)(・アーマー)であった。


 ナディアが続ける。


「『良い男がいたら、チラッと見せて誘う!』、コレが大人の女よ!」


 アルは額に手を当てて呆れる。


「……お前ら」


 アレクは、苦笑いしながらナディアに尋ねる。


「それで。ナディアは、どんな武器にしたんだ?」


「これよ」


 ナディアは、腰に下げているレイピアの柄に手を掛けて、アレクに示す。


「それと、一応、これも……」


 ナディアは、腰の後ろで水平に下げたメイスを指差してアレクに教える。


 エルフ特有の華奢な体格のナディアは、重装甲を避けて、軽いレイピアと重いメイスの、二通りの武器を選んでいた。


 アレクが屈んでナディアが腰の後ろに下げているメイスを覗き込んでいると、ナディアは自分の太腿の横にあるスリットを指で後ろに捲り、アレクに自分の黒色の下着を見せる。


 驚くアレクに、ナディアは片目を瞑って呟く。


「チラッとね。……チョットだけなら、触っても良いのよ?」


「ナディア!」


 ルイーゼの叫び声と共に店の奥からルイーゼとナタリーがアレクたちの元にやってくる。


「ナディア、ダメよ。アレクは……」


 ルイーゼは、ナディアにそこまで言うと口籠る。


 アレクたちは、ルイーゼを見て驚く。 


「ルイーゼ!?」


 暗殺者(アサシン)のルイーゼは、身体の線が浮き出る程、ぴったりと体に密着した黒皮の服を着て、肩当てを付けていた。


 遠目に見ても、ルイーゼの身体の形がハッキリと判る。


 赤面してナディアが呟く。


「ルイーゼ!? ……エロい! エロいわ!」


 エルザも舌打ちして呟く。


「チッ! ……その手があったか!」


 アルは呆れて、エルザとナディアにツッコミを入れる。


「……お前らは、一体、何を競っているんだ?」


 アレクがルイーゼに話し掛ける。


「……ルイーゼ」


 皆の反応に生真面目なルイーゼは、頬を赤らめて上目遣いにアレクに尋ねる。


「アレク。私、音がしなくて良いと思ったんだけど……」


 アレクは、ルイーゼの選んだ装備をフォローする。


「軽くて動いても音がしないから、暗殺者(アサシン)のルイーゼに向いていると思うけど、身体の線が浮き出ているから、戦闘時以外は、何か上に羽織ったほうが良いね」


 アレクに認められて、ルイーゼは嬉しそうに答える。


「うん! そうする!」


「武器は?」


「ショートソードと弓を」


「そうか」


 アレクは、ルイーゼの傍らのナタリーを見る。


 ナタリーは、魔導師用の上品なローブと魔力水晶(マナ・クリスタル)の付いた杖を装備していた。


 アルがナタリーの装備を褒める。


「ナタリー、似合ってるよ」


 ナタリーは、アルに微笑みながら答える。


「ありがとう」


 アレクがハッとして口を開く。


「そういえば、ドミトリーは?」


 アルも追従する。


「あいつ、どこに行ったんだ?」


「拙僧なら、ここにおりますぞ!」


 物陰からドミトリーが出てくる。


 修道僧(モンク)のドミトリーは、東洋風の白い法衣の上に墨染の直綴(じきとつ)を羽織り、首から大きな数珠を下げ、両手には手甲を付けていた。


 アルがドミトリーを茶化す。


「……なんか、一気に坊さんみたくなったな」


 ドミトリーは、ツルツルな自分の頭を撫でながら答える。


「拙僧は、修道僧(モンク)ですから」


 アレクがドミトリーに尋ねる。


「ドミトリー、武器は無いのか?」


 ドミトリーは、握った拳を見せながら小隊の仲間たちに力説する。


修道僧(モンク)は、この鍛え上げた肉体こそが武器! 男の全身、これ、武器なり! ……武器として装備しているのは、この手甲だけです」


「はは……」


 自説を力説するドミトリーに小隊の仲間たちは苦笑いしていた。


  

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