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第百九十一話 ティティス探索(一)

 アルとナタリーの入った店は、ピンク色の看板を掲げた妖しげな雰囲気の店であった。


 二人が店の中に入ると、店の奥から妙にクネクネとした身動きの中年男の店員がやって来る。


 店員は、オカマ口調で二人に告げる。


「いらっしゃい。・・・アラッ! お兄さん、良い男ね! 連れの彼女も、純情そうな可愛い()!」


 アルは、戸惑いながら店員に尋ねる。


「すみません、この店は・・・?」


 店員は、オカマ口調でアルに答える。


「ウフフ。・・・このお店は、()()()()()()()()()()ためのお店よ! 女の子同伴でも、娼婦のお姉さんを呼んで、三人や四人で楽しんでも良いわよ?」


 ナタリーは店員に告げる。


「彼と私の二人で!」


 店員は答えると、二人を席に案内する。


「判ったわ。こっちへ、どうぞ」


 アルは、ランプの赤色の擦りガラスがピンクに照らす店の中を見回しながら、以前に入ったキャスパーシティでの風俗店の事を思い出す。


(げげっ! この店って、あの類の店か!?)


 店の中は、以前に入った風俗店と似たような造りであった。


 個室には、長いソファーと小さなテーブルがあり、通路と個室はカーテンで仕切るようになっていた。


 アルとナタリーは、店員に個室に案内される。


「こちらへどうぞ。・・・御注文は?」

 

 ナタリーは口を開く。


「エール酒とカクテルで」


「わかったわ」


 オカマ口調の店員は、店の奥に向かって行く。


 隣の部屋から、女性の声が聞こえてくる。




 二人は、ピンク色に包まれた二人きりの部屋にソファーに並んで座ると、アルは落ち着かない様子であったが、ナタリーは落ち着いていた。


 程なく店員が注文した酒を二人の席に持ってくる。


「ごゆっくり、どうぞ」

 

 そう告げると店員は足早に去って行った。





 店員が去って行った後、ナタリーはカーテン越しに通路の様子に聞き耳を立てる。


 アルは、ナタリーの行動を不審に思った尋ねる。


「どうしたんだ?」


 ナタリーは突然、服を脱ぐ。


 ナタリーは、驚くアルの首に腕を回すとソファーの上に寝るように倒れ、自分の上にアルを引き倒す。


「なっ!?」


 ナタリーは、アルの耳元で囁く。


「シッ! 静かに!」


 そう告げると、ナタリーはアルにキスする。




 程なく二人の部屋のカーテンを指先で少し開けてカスパニア軍士官が覗き込んでくる。


 行為中を装う二人を見たカスパニア軍士官は呟く。


「へへへ。明るいうちから、盛ってやがる。・・・好きだねぇ~」


 背後で呟く男の声に、アルはカスパニア軍士官が店の中まで見回りに来たことに気付く。


(カスパニア軍の警ら隊か!)


 カスパニア軍士官は、行為中を装う二人の様子を覗いて呟くと、去って行った。




 カスパニア軍士官が去り、ひと呼吸置いて、アルは呟く。


「ふぅ。・・・行ったか」


 自分の上に乗ったままで安堵するアルに、頬を赤らめてモジモジしながらナタリーが告げる。


「・・・アル」


「ゴメン」


 アルは、慌ててナタリーの上から身体を避け、ソファーの隣に座る。


 ナタリーは、笑顔で微笑む。


「良いの」


「ナタリーは、あいつらが来ていた事に気付いたんだ?」


「ええ」


 アルは、赤くなって告げる。


「・・・突然、裸になって抱き付いてきたから、どうしたのかと思ったよ」


「私こそ、いきなり抱き付いたりして、ごめんなさい。・・・このままじゃ、任務に集中できないよね?」


 そう告げるとナタリーは、口淫し始める。


「大丈夫。まだまだ時間はあるわ」








 アルは、カーテンを少し開けると、店の通路の様子を伺う。


「大丈夫そうだな」


 アルは、服を着たナタリーを連れて店の会計を済ませる。


 中年男の店員は、オカマ口調で答える。


「イケメンのお兄さん、スッキリしたみたいね。まいど。また、遊びに来てね」


「お、おう」


 アルとナタリーは、ローブを羽織ってフードを被ると、塔と城壁に向かって早足で歩いていく。


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