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第百八十四話 野戦陣地での戦闘

 アレク達教導大隊の空襲により、カスパニア軍の指揮統制は混乱していた。


 ユニコーン、グリフォン、フェンリルの三つの小隊が陣形を整えると、カスパニア軍の陣営のテントから続々と現れるカスパニア軍の兵士や傭兵達、人狩り達が三つの小隊に向かって迫り来る。


 皮鎧で軽装の人狩り達がカスパニア軍兵士や傭兵達を追い越して、前に出て来る。





 アレクの指示により、ユニコーン小隊の八人は前列と後列に分かれ、陣形を整えていた。


 前列は左から順に、エルザ、トゥルム、アル、アレク。後列は、ナディア、ドミトリー、ナタリー、ルイーゼである。


 アレクは、号令を掛ける。


Präsen(プレツェン)tiert(ティア―ト) das(ダス) Gewehr!(ゲヴェーア!)

(構え!)


 アレクの号令に合わせて、前衛のエルザ、トゥルム、アル、アレクは、並んで盾を構える。 


 グリフォン小隊やフェンリル小隊も、アレクの号令に合わせてユニコーン小隊の動作に追従する。


Rückzug(ルックズク)sschwert(シュウェート)!!」

(抜剣!!)


 三つの小隊は、アレクの号令に合わせて武器を構える。 


 アレクは、再び大声で全員に号令を掛ける。


Reichs(ライヒス)ritter(リッター), vor!!(フォー!!)

帝国(ライヒス)騎士(リッター)、前へ!!)


 三つの小隊が武器と盾を構えたまま、歩調を合わせて前進を始めると、三つの小隊の前衛と人狩り達が衝突するが、前衛が盾越しに人狩り達を押し止める。


 アレクは号令を掛ける。


Attacke(アタック)!!」

(攻撃!!)


 アレクの号令に合わせて三つの小隊の前衛は、一斉に盾で人狩り達を押し返すと、盾の隙間から体勢を崩した人狩り達を武器で斬り伏せる。


「ぐぁああああ!!」


「ヤロウ!!」


 攻撃した後、アレク達三つの小隊は再び盾を構えて陣形を整え、盾越しに襲い掛かってくる人狩り達を押し止める。

 



 エルザとトゥルムが構える縦の隙間から、一人の人狩りの男が身を乗り出してくる。


 男は並べらた盾の影に居るアレク達を見回すと、肌の露出の多いビキニアーマー姿のエルザを見て目を止める。


 男は、荒い息遣いで叫ぶ。


「フーッ! フーッ! ん!? ・・・女だ!? 女だぁあああ!」


 男がそう言うと、人狩り達はアレク達が並べる盾の隙間からエルザに向かって一斉に腕を伸ばしてくる。 


 人狩りの男達に狙われたエルザは、文句を言う。


「ちょっと! 何で私にばっかり、こんなのが迫って来るワケ!?」


 アルはエルザをからかう。


「お前、モテモテだな。あいつらに一人一回ずつ、ヤラせてやったら?」


 エルザは、必死に反論する。


「イヤよ! 触られると思うだけで、鳥肌が立つわ!」


 再び、アレクが号令を掛ける。


Attacke(アタック)!!」

(攻撃!!)


 再びアレク達は、一斉に盾で人狩り達を押し返すと、盾の隙間から体勢を崩した人狩り達を武器で斬り伏せていく。


「ぎゃあああ!!」


「くそっ! テメェら!」





 アレク達が襲い掛かって来た人狩りの集団を斬り伏せると、次に傭兵団の者達がアレク達に迫ってくる。


 傭兵団の装備は、一人一人バラバラで統一性が無く、それぞれ鉄兜や胸当てを着けていて、人狩りより重装備だが、カスパニア軍正規兵より軽装備であった。


 アレク達三つの小隊は、再び盾を構えて陣形を整えると、盾越しに襲い掛かってくる傭兵達を押し止める。


 アレクは号令を掛ける。


Attacke(アタック)!!」

(攻撃!!)


 アレクの号令に合わせて三つの小隊の前衛は、一斉に盾で傭兵達を押し返すと、盾の隙間から体勢を崩した傭兵達を武器で斬り伏せる。


「うぁああああ!!」


「わぁあああ!!」


 攻撃した後、アレク達三つの小隊は、再び盾を構えて陣形を整え、盾越しに襲い掛かってくる傭兵達を押し止める。


 再びアレクは号令を掛ける。


Attacke(アタック)!!」

(攻撃!!)


 再びアレク達は、一斉に盾で傭兵達を押し返すと、盾の隙間から体勢を崩した傭兵達を武器で斬り伏せる。


「ぎゃあああ!!」


「コイツら、強ぇえ!!」





 カスパニア軍の一人は叫ぶ。


「弓だ! 弓矢を射掛けろ!!」


 カスパニア軍の弓兵がアレク達に向かって矢を射かけて来る。


 ナディアがアレク達に向けて手をかざし、召喚魔法を唱える。


矢弾からの(プロテクション・)防御(・フロム・アロー)!!」


 緑色の淡い光がユニコーン小隊を包む。


 ナディアは続ける。


風の妖精(シルフ)の加護よ。これで矢は当たらないわ!」


 カスパニア弓兵が放った矢は、アレク達から逸れていく。





 アレク達が襲い掛かって来た傭兵達を斬り伏せると、いよいよカスパニア軍正規兵の者達がアレク達に迫ってくる。


 カスパニア軍正規兵は、金属鎧や鉄兜や剣などの装備が全て統一されており、人狩りや傭兵団とは比べ物にならない重装備であった。


 アレク達三つの小隊は、再び盾を構えて陣形を整え、盾越しに襲い掛かってくるカスパニア軍正規兵達を押し止める。


 アレクは号令を掛ける。


Attacke(アタック)!!」

(攻撃!!)


 アレクの号令に合わせて三つの小隊の前衛は、一斉に盾で傭兵達を押し返すと、盾の隙間から体勢を崩した傭兵達を武器で斬りつける。


 しかし、上級職と中堅職からなるユニコーン小隊を除き、左翼のグリフォン小隊、右翼のフェンリル小隊では、基本職が多い前衛達がカスパニア正規兵を攻撃しても、一撃では倒しきれない場合が出始める。


 アルは不満を口にする。


「コイツら、硬いぞ!?」


 トゥルムもアルに追従する。


「うむ。今までの雑魚とは、装備が違うな!」


 後列で全体の戦況を見ていたルイーゼはアレクに告げる。


「アレク。陽動作戦でこの陣地に敵の主力が居なくても、まだまだ敵の方が数が多いわ」


 アレクは呟く。


「何か、敵の戦意を砕く決定打があれば・・・」


 アレクの呟きを聞いたナディアは口を開く。


「アレク! 任せて!!」


 アレクはナディアに告げる。


「判った! ナディア、任せる!」


 ナディアは得意気に口を開く。


「任せなさいって! お姉さんの本気、見せてあげる!!」


  そう言うとナディアは、懐から四枚の呪符を取り出して地面に置き、片膝を付いて両手を地面に当て、召喚魔法の詠唱を始める。


Я(ヤー・)  приказываю(プリカーズ・)  своему(ヴーズ・) слуге(ズィウス・)  по(ヴィー・)  контракту (コントラクト・)  с землей.(ズウィームリー)

(我、大地との契約に基づき、下僕に命じる!)


Появл(プウィヴィ)яются!(レーツァ!) Земляной(ゼミヤノイ・) солдат!!(ソルダート!!)

(出でよ! 土の兵!!)


 ナディアの足元と呪符が置かれた地面に大きな魔法陣が現れ、ナディアの頭上にも一定間隔で三つの魔法陣が現れる。


 ナディアは立ち上がって両手を天井に向けて上げ、天を仰いで詠唱を続ける。


Суббота(ソヴォータ),  Приди(プリズィー・)  из(イズ・)  мира(ミラ・)  призраков(プリズル・カ・)  и(フィ・) прими (プルミ・)  форму.(フォロモ) По (ポ・)  моей (マイ・ヴィー・)  воле.(ヴォーリャ)

(土よ。幽世より来たりて、形を成せ。我が意のままに)


 空中に浮き上がった呪符に地面から浮き出た土が集まり、大きな人形を形作っていく。

 

 やがて集まった土は、四体のアースゴーレムになる。


 出来上がった四体のアースゴーレムは、それぞれ四メートルほどの大きさで、魔法陣の中で片膝を付き、主であるナディアを注視していた。


 魔法陣の中でナディアは、カスパニア軍を指差した。

 

 アースゴーレム達は、ナディアが指差す方向、カスパニア軍の方を向く。


 ナディアはアースゴーレムに命令を下す。


Сокрушить(ソー・クラシーット・)  моих(モイ・)   врагов!(ヴィラゴフ!)  Сдирать,(ズィディライト・)  Stepping (スティッピング・)  давка!!(ダフカ!!) Prodvigat!(プロヴィディガイト!) Земляные(ゼミヤノイ・) солдаты! !(ソルダート!!)

(我が敵を粉砕せよ! 薙ぎ払い、踏みしだけ!! 突き進め! 土の兵よ!!)


 ナディアが魔法の詠唱を終えると、魔法陣は光の粉となって空中に消える。


 四体のアースゴーレムは、『承知した』と言わんばかりに両目を一度、大きく赤く輝かせると、カスパニア軍に向かって走り出した。





「ゴーレムだぁあああ!!」


 カスパニア軍の兵士達は口々に叫ぶと、一斉に逃げ出し始める。


 四体のアースゴーレムは、両手を広げた「うっちゃり」の体勢のまま、カスパニア軍に向かって走り続ける。


 アースゴーレムは、広げた両手でアレク達に向かってきたカスパニア軍兵士達を押し戻す。


 カスパニア軍兵士達は、剣や槍でアースゴーレムを突き刺したりして抵抗する者も居るが、アースゴーレムはお構い無しに走り続け、逃げ出し始めたカスパニア軍を蹴散らして進んでいく。


 野戦陣地を捨てて敗走するカスパニア軍を見て、アレク達は戦闘態勢を解く。







 アルは構えていた斧槍(ハルバード)を肩に担いで口を開く。


「・・・勝ったな」

 

 アレクも構えていた長剣と盾を降ろして頷く。


「・・・ああ」


 魔力を使い切ったナディアは、荒い息遣いでその場に片膝を付く。


「はぁ・・・はぁ・・・、魔力を使い切ったようね」


 ドミトリーがナディアの傍にやって来て、ナディアに両手をかざすと神聖魔法を唱える。


魔力(マナ・)転移(トランスファー)!!」


 ドミトリーから魔力を分けて貰い、ナディアは呼吸を整えて再び立ち上がる。


「ありがとう。助かるわ」


「うむ!」


 ドミトリーは得意気に大きく頷く。


 エルザはナディアに話し掛ける。


「ナディア、戦闘で魔力を使い切って動けなくなるなんて、ヤバいわよ? もし、カスパニア軍に捕まったら・・・」


 ナディアは真顔でエルザに答える。


「カスパニア軍に捕まったら、間違いなく鎖に繋がれて、毎晩、あいつらに犯されるわね。・・・気を付けるわ」


 アレク達、ユニコーン小隊に続いて、ルドルフ達グリフォン小隊や、フレデリク達フェンリル小隊も戦闘態勢を解き、アレク達の元に集まって来る。


 ルドルフは呟く。


「カスパニア軍が敗走していく・・・」


 フレデリクは口を開く。


「オレ達の勝ちだな」


 

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