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第百八十話 反撃の狼煙

--翌日。


 ジカイラとヒナは、各小隊から上げられた報告書の情報を書き込んだ地図を眺める。


 それは、カスパニアが占領している北部の都市ティティスから、東へ約30キロメートルの位置に築かれた野戦陣地と、そこを拠点にして伸びるカスパニア軍の前線を示していた。


 ジカイラは呟く。


「なるほどな。これが現在の前線か・・・」


 ヒナは尋ねる。


「ジカさん、どうするの?」


 地図に記された野戦陣地を指し示しながら、ジカイラは答える。


「・・・この野戦陣地を叩くしかないな。だが、遠距離から魔法をブチ込む前に、野戦陣地に集められた住民や捕虜の救出が先だ」


「そうね」


「ヒナ。ゴズフレズ軍のネルトン将軍と、各小隊の隊長を会議室に集めてくれ」


「了解!」





 程なく会議室にゴズフレズ軍のネルトン将軍と、教導大隊の各小隊長が集められる。


 ヒナが地図を張り出すと、ジカイラは地図を指し示しながら、現在の戦況と反撃作戦を説明する。


 ジカイラは口を開く。


「・・・という訳で、現在のカスパニア軍の前線はこの位置だ。カスパニア軍は、人狩りや傭兵団を雇入れ『露払い』としてカスパニア正規軍の前に展開させている。そこで、我々、教導大隊は、飛空艇でカスパニア軍前線を飛び越えて敵占領地に潜入。カスパニア軍野戦陣地を奇襲攻撃し、捕らわれている人々を救出する。その後、教導大隊は、カスパニア軍前線を背後から攻撃し、ゴズフレズ軍と挟撃する。何か質問はあるか?」


 アレクは手を挙げる。


「捕らわれている人々を救出した後、後送はどのようにしたら?」


 ジカイラは答える。


「後送には、揚陸艇を使うつもりだ。他に質問は?」


 ジカイラからの問い掛けに教導大隊の面々は沈黙で答える。


 ジカイラは続ける。


「ネルトン将軍。ゴズフレズ軍には、野戦陣地の奇襲攻撃までカスパニア軍への陽動をお願いしたい」


 ジカイラの言葉にゴズフレズ軍のネルトン将軍は、大きく頷く。


「承知した」


「作戦開始は一三(ヒトサン)〇〇(マルマル)とする。三時間後だ。以上、解散!」




 


 ジカイラから現在の戦況と反撃作戦について説明を受けたアレク達は、会議室からラウンジで寛いで時間を潰す。


 出撃時刻の十三時が近くなり、飛空艇で出撃するため、戦闘装備を整えたユニコーン小隊全員で格納庫へ向かって歩いていた。


 ナタリーは小隊の仲間達に尋ねる。


「・・・どうして、カスパニアはゴズフレズを侵略して、人狩り達に酷い事をさせているの?」


 ルイーゼは答える。


「カスパニアは『奴隷貿易』と『麻薬貿易』で大きな収益を得て、そのお金で軍備を整えて列強の地位にいるの。カスパニアが列強であり続けるには、奴隷貿易を続けるには、奴隷が必要なのよ」


 ナタリーは悲しい顔で呟く。


「・・・だからって、ゴズフレズを侵略して村の人々を誘拐しているの? 誘拐した村の人々を奴隷にして売るために。・・・酷い」


 トゥルムも口を開く。

 

「人狩りが職業として存在するなど、間違っている。『個人の権利』を保障しているのは国だ。個人の権利あっての国ではなく、国があって個人の権利が保障され成り立っているのだ。・・・国が弱ければ、外国から侵略され、蹂躙され、奪われるだけだ。個人の権利どころではなく、奴隷にされ、商品として売り買いされる。・・・帝国の外の世界とは、ことのほか残酷にできているようだ」


 ナディアは微笑みながら口を開く。


「ふふ。私達は、幸せね。・・・残酷にできているこの世界で、『戦える力』を持っている。私達は、人狩りと戦って、倒す事が出来る」


 エルザも口を開く。


「みんな、人狩りに襲われた村の酒場で見たでしょ? ・・・私は嫌だな。・・・人狩りに捕まって奴隷にされて金で売り買いされて。・・・鎖に繋がれて毎晩、好きでもない男に犯されて、そいつの子供を孕むなんて。・・・あいつら、許さないんだから!」


 ドミトリーも口を開く。


「『奴隷貿易』も『麻薬貿易』も、御仏(みほとけ)の道に反する。国ぐるみでの誘拐など、到底、許される事では無い。カスパニアの外道どもめ! 拙僧の鉄拳で成敗してくれようぞ!」


 アルは、おちゃらけた調子で、先頭を歩くアレクに話し掛ける。


「ほぉ~。個性的なキャラが揃っている我らがユニコーン小隊の面々が、珍しく全会一致の意見のようだ。・・・アレク! カスパニアの外道どもに、カマしてやろうぜ!」


 ちょうど格納庫の入り口に差し掛かったアレクは、他の小隊メンバーの方を振り向いて告げる。


「ユニコーン小隊、出撃! 捕らわれた人々を救出し、カスパニアの外道どもに鉄槌を下す!」


「おおっ!」


 アレクの号令で、ユニコーン小隊の面々は、それぞれ自分の飛空艇に乗り込む。





 小隊全員が飛空艇に乗り込んだ事を確認したアレクは、整備員に告げる。


「ユニコーン小隊、出撃します!」


「了解!」


 整備員は、同僚と共にアレク達が乗る四機の飛空艇をエレベーターに押して乗せると、同僚の整備員に向かって叫ぶ。


「ユニコーンが出る! エレベーターを上げろ!」


 整備員が動力を切り替えると、飛行甲板に向けてアレク達が搭乗する四機の飛空艇は、エレベーターで上昇していく。


 程なく、アレク達が搭乗する四機の飛空艇は、飛行甲板に出る。 


 



 上空の冷たい風がアレクの顔を撫でる。


 ヒンヤリとした空気の感触にアレクの表情が引き締まる。


 アレクは、伝声管でルイーゼに告げる。


「行くよ。ルイーゼ」


「うん」


発動機始動(モータリングスタート)!」


 アレクは、掛け声と共に魔導発動機(エンジン)の起動ボタンを押す。


 魔導発動機(エンジン)の音が響く。


 ルイーゼが続く。


飛行前点検(プリフライトチェック)開始(スタート)!」


 ルイーゼは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。


発動機(エンジン)航法計器(エアーデータ)浮遊水晶(クリスタル)降着装置(ギア)昇降舵(フラップ)全て異常無し(オールグリーン)!」


 ルイーゼからの報告を受け、アレクは浮遊(フローティング)水晶(クリスタル)に魔力を加えるバルブを開く。


「ユニコーン・リーダー、離陸(テイクオフ)!」


 アレクの声の後、大きな団扇(うちわ)を扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。


発進(ゴー)!」


 アレクは、クラッチをゆっくりと繋ぎ、スロットルを開ける。


 プロペラの回転数が上がり、風切り音が大きくなると、アレクとルイーゼの乗る機体ユニコーン・リーダーは、加速しながら飛行甲板の上を進む。


 やがて飛行甲板の終わりまでくると、二人の乗るユニコーン・リーダーは大空へと舞い上がった。





 二人の乗るユニコーン・リーダーは飛行空母ユニコーン・ゼロの上を旋回して、小隊の仲間が離陸してくるのを待つ。


 直ぐにアルとナタリーが乗るユニコーン二号機が飛行空母を発進し、上昇してくる。


 続いて、ドミトリーとナディアが乗るユニコーン三号機とエルザとトゥルムが乗るユニコーン四号機が飛行空母から発進して上昇してくる。


 四機全てが揃ったユニコーン小隊は編隊を組む。


 ユニコーン小隊に続いて、グリフォン小隊やフェンリル小隊の飛空艇が離陸して編隊を組み始める。


 上空で教導大隊の各小隊の編隊が全て揃った事を確認すると、ユニコーン小隊は攻撃目標であるカスパニア軍野戦陣地を目指して大空を飛んで行った。


 

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