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第百七十七話 ニーベルンゲンの王都到着

-- 早朝。


 ソフィアは、ジークの腕の中で目覚める。


 未だ眠っているジークの胸にそっと手で触れると、上級騎士(パラディン)として鍛え抜いた男の筋肉の感触が伝わる。


 ソフィアは、そのままジークの身体を撫でていき、昨夜、愛し合った余韻に浸る。


 やがて、ソフィアは眠っているジークに覆い被さるように身体の位置を変えると、ジークの唇に自分の唇を重ね、ジークを起こす。


「ん・・・? ソフィア、もう朝か?」


「はい」


 ジークは周囲を見回すと、早朝のまだ早い時間であることに気付く。


「まだ、ゴズフレズには着いていないな?」 


「あと一時間位だと思います」


 ジークは、自分の顔を覗き込むソフィアの腰に腕を回すと、ソフィアに覆い被さるようにソフィアと自分の体勢を入れ替る。


「ふふ。自分だけ、早く目が覚めたので構って欲しいのだろう?」 


 想い人であり夫であるジークのエメラルドの瞳に近くから見詰められ、ソフィアは照れたように答える。


「はい」




 ソフィアは、閨事の研究に熱心であった。


 ジークを満足させ、寵愛を自分に繋ぎ止めて置かないと『正妃』の座を他の妃に奪われるかもしれないという怖れを持っていたためであった。


 ソフィアは、帝国の筆頭伯爵家であるゲキックス家の生まれであり、『筆頭伯爵家の令嬢』という出自に誇りを持っていたが、トラキアの王族であるフェリシアが第三妃になったことにより、コンプレックスにもなっていた。


 第二妃である妹分のアストリッドはともかく、第三妃であるトラキア人のフェリシアに負けることは、ソフィア自身のプライドが許さなかった。




 ジークは、恍惚とした表情で自分を見詰めるソフィアにキスする。


「常夜灯の暗がりで眺めるお前の艶姿も良いが、朝日の元でお前が快感に身をよじる姿も良いな」


 ジークの言葉にソフィアは頬を赤らめ恥じらいながら答える。


「言わないで下さい。・・・恥ずかしい」


 二人で愛し合った余韻に浸っていると、部屋のドアがノックされる。


 侍従の声がする。


「殿下。まもなく到着です。ゴズフレズ王国側が殿下を歓迎するため地上で待っておりますので、準備をお願い致します」


 ジークは侍従に答える。


「ゴズフレズなど、正妃の支度ができるまで待たせておけ」


「畏まりました」


 ジークの言葉にソフィアが驚く。


「・・・ジーク様、よろしいのですか?」


「構わん。・・・ソフィア。支度は、少し休んで動けるようになってからで良い。急ぐ事は無い」 


「ありがとうございます」


 ソフィアは汗ばんで張り付いた髪を両手でたくし上げて微笑むと、再びジークの胸にその身を委ねる。






 その日、ゴズフレズ王国の王都ハフニアは、蜂の巣を突っ突いたような騒ぎになっていた。


 王都上空に純白の巨大な飛行戦艦が現れたためであった。


 バレンシュテット帝国軍総旗艦ニーベルンゲン。


 『白い死神』と呼ばれているバレンシュテット帝国の皇帝座乗艦は帝国旗を掲げ、巨大な純白の艦体を王都上空に留めていた。


 王都ハフニアに駐在するスベリエ王国大使ヒッター子爵は、自宅の窓から、その威容を目の当たりにして、顔から一気に血の気が引いて青ざめていく。


 ヒッター子爵は呟く。


「あれは飛行戦艦!? 皇帝座乗艦ニーベルンゲン! 『白い死神』をゴズフレズに差し向けて来るとは! 帝国は、一体、どういうつもりだ!?」 


 ヒッター子爵は、急いで身支度を整えると、王城へと向かう。




 


 ハロルド王が儀仗兵を整列させて王城の入り口から見守る中、ニーベルンゲンから発進した一隻の揚陸艇が、王城の入り口付近へ降下する。


 着陸した揚陸艇が跳ね橋(コーヴァス)を降ろすと、礼装に身を包んだ帝国軍の兵士達が降りてきて、跳ね橋(コーヴァス)の中央に赤い絨毯を敷き、両脇に分かれて整列する。


 揚陸艇の中からジークは、カリンの手を取ってエスコートしながら赤い絨毯の上を歩いて降りる。


 ジークの後にはソフィア達、三人の妃が続く。


 ハロルド王は、揚陸艇から降りてきたジークとカリンに駆け寄る。


「おおっ! カリン!」


「父上! 御無事で!」


 再会を喜ぶ父娘にジークは会釈して挨拶する。


「国王陛下。お初にお目に掛かります。バレンシュテット帝国皇太子ジークフリード・ヘーゲル・フォン・バレンシュテットと申します。お見知り置き願います」


 ハロルド王は、ジークの両手を取って感謝の言葉を述べる。


「よくぞお越し下された、皇太子殿下。娘を無事に送り届けてくれたこと、帝国から支援を頂いたことには、このハロルド、深く感謝しております。・・・皇宮に比べ、むさ苦しいところですが、ささ、どうぞ。こちらへ」


 ハロルド王は、ジーク達を王城へと招き入れる。


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